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ほぼって言った?

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日常の中から、エンタメを整理収納目線、暮らしをエンタメ目線でつづります。栗原のエッセイ、つまりクリッセイ。

仕事でたくさんの素敵なお宅を取材してきた。
新築、リノベーション、戸建て、マンション、オフィス、あ、一人暮らしのアパートもたくさん訪れたっけ。
とにかく素敵な物件、その人らしいお宅をたくさん見て、なぜそれを選んだのか、どうしてこれに決めたのかを聞けるのはとても楽しいものだ。

けれど私は同じところにもう10年以上住んでいる。
なんとなく飽きてもいるが、そもそもそういう環境で育たなかったので、人生において「引越し」を検討する機会が滅多にないままきたのだ。
私の周りには引越し経験が豊富な人が大勢いるので、むしろ私のほうが珍しいと思われるかもしれない。
賃貸で暮らしているのなら、どんどんもっといい条件を探せばいいじゃんとアドバイスしてくれる人もいたような。
ただただ面倒くさがりというだけかもしれない。

ところで、私の狭い仕事部屋には、いけてない中折れ戸の収納がある。
「クローゼット整理」というワードや「WIC」「ファミリークローゼット」とか見る度、書く度に、自分の部屋のそれとの違いにうなだれるのだが、まあ、それは設備なので仕方なし。
デスクに座ると、このいけてない中折れ戸が当然ながら目に入る。
そしてふと気づいた。
「これ、ずっと貼ったままだなぁ」

そう、暮らし始めて間もなく、この戸がいけてなくて寂しくてせつなくて、
ウォールステッカーを貼った。
オープン棚に北欧風の雑貨や本をディスプレイしている柄だった。
チープかもしれないけれど、結構気に入っていた。

それからあっという間に年月が経過し、それが剥がれないことをいいことに、
ずっとそのままだった。
改めて見たら、なんとなく色あせている感じに見えた。
そして、「そうだ、ウォールステッカー貼りかえよう」となった。

ドレッシーか子どもっぽいものが多いなか、ちょっとにぎやかで、
ちょっとほっこりするデザインを見つけて注文し、届いたその日にすぐに貼り直した。

完成図のサンプルがステッカーの台紙に描かれている。
これを見ながら一つずつ貼ればいい。たぶん間違いがない。
自分の感性でしようとすると、なんかちょっと狙いすぎて大抵失敗する。
子どもの頃に、「アイデアはあるけど、技術が伴わない」と誰かに言われたことがあって、
自分でもよくよく自覚しているのだ。

大人になった私は、完成図のサンプルを見ながら、ほぼそれどおりに貼った。
あれ!? ほぼって言った!?

まあ仕方ない。目に入りやすい位置に黒のデザインを入れたくなかったとか、
それなりに理由はあるのだ。

そうして、今回は3つのオープン棚と一つの引っ掛け収納を壁に付けた。
あ、違う、貼った。

ちなみに写真には一番下の棚は写っていない。
黒のアートフレームや鉢を並べた棚なのだが、
これが笑ってしまうほど棚が並行に貼れていない。
デスクからは目に入りにくいからいいや、右肩上がりだし。
私が家を建てるのはおろか、引越しも検討しない理由は、たぶんこういうところだ。