日常の中から、エンタメを整理収納目線、暮らしをエンタメ目線でつづります。栗原のエッセイ、つまりクリッセイ。
学生時代といえば、アルバイトと部活しかしていなかった。
もっと勉強しておけばよかった? もっと遊んでおけばよかった?
もう昔過ぎてわからない。
でもアルバイト先での出逢いは、時を経て「宝」だなぁと思う。
その時代の仲間と久しぶりに集った。
3人ともフリーランスなので、明るい時間から飲めるという、あまり大きな声では言えない集合時間に集まり、久々の再会を祝して乾杯した。
私は2杯目からはホッピー。
理由はもちろん、この連載「ホッピー★うめのヒューマン酒場日記」の影響だ。
アルバイト先は、ここでも何度か書いたかもしれないが、ちゃんこ鍋屋だった。
考えてみたら、これはレアだろう。まだ「私もちゃんこ鍋屋でバイトしてたよ!」という
同志に出会ったことはない。
とにかく近所だったという理由だけであまり深く考えずにオープニングスタッフとして採用してもらったこのちゃんこ鍋屋には、学生バイトが数名いた。
そのうちの一人は、このWebマガジンにも度々登場するイラストレーターのYukiさん。
「千誌万態!くろねこジルシ」の連載でもおなじみだ。
同級生の彼女は、私たちより2年早く卒業して社会人になった。
もう一人は我々の1学年上。
物腰やわらかく、ソフトな対応力。パートさんも含め女性が多い職場でも、バランスよく働ける男性だった。
ロングシフトはほとんど私たちで回していたような記憶がある。
3人はそれぞれ目指す道があった。いや、正確に言えばしっかり目指す道があったのは私以外の2人か。
彼女はグラフィックデザインやイラストレーターとしての道へ。
そして彼はカメラマンとしての道へ。
すでに2人とも専門のスキルを身に着けたり学んだりしていた。
当時の私はといえば、「書くことは好き」程度だったろうか。
文系女子の憧れは、どうせ憧れ止まりだと、専門的な学びをしていたわけではなかった。
でも、子どもの頃からうっすら抱いていた「書くことを仕事に出来たらいいなぁ……」は、
口にしていたのだろう。
どんなシチュエーションでそれを話したかは定かではないが、
「いつか3人で一緒に仕事が出来たらいいね!」そんな少女漫画ちっく!? なことを口にしていたはずだ。
それから互いにいろいろな月日を過ごし、私が3社目の会社で編集の仕事をしているタイミングで、編集者とカメラマンとしてお仕事を依頼することが出来た。
さらに年月を経て、カメラマン、グラフィックデザイナー、編集&ライターとして3人一緒に仕事をすることが叶った。
ドリームズカムトゥルー。
その成果物が、これ。
「わけるとわかるわけるくん」の取り扱い説明書(「すぐに使える!わけるくん入門講座」のテキスト)なのである。
それぞれたくさんの経験とスキルを持って、なんとも言えない阿吽の呼吸で撮影や編集作業を進めることができた。
こうやって改めて書き出してみると、なかなか感慨深いものがある。
明るいうちから飲み始めたその集まりでは(実は会の名前もついているがそれは省略)、
仕事のハナシ、プライベートのハナシ、思い出バナシをミックスしながらゆるやかに時間が過ぎていった。
一つだけアレ? となったのは、
「そういえばあの店には不倫カップルの常連さんが月イチくらいで食べに来ていたよね」
と話した私に二人はまったく反応しなかったことだ。
私はその常連が毎回どのメニューを注文したかまで覚えているというのに……。
あれは、二人がちゃんこ屋バイトを卒業した後の1年間で通い詰めていた常連だったのだろうか。
今となっては確かめる術はない。