日常の中から、エンタメを整理収納目線、暮らしをエンタメ目線でつづります。栗原のエッセイ、つまりクリッセイ。
趣味も合わず、ドラマや映画に出てくるような仲良し夫婦でもなく、
どちらも相手のことをブチブチ言っている二人だ。それでもここ2~3年は、互いにずいぶん丸くなったよう。
歳をとったということだろう。
2月の半ば、母からの電話。
「お父さんがビーフシチューが食べたいって言ってるんだけど、今月結婚記念日があるから、
どこか食べられるところないかしら。
お父さんは肉、肉っていうのよ。私はちっとも食べたくないけど」
願いを叶えてあげたいのか、ブチブチ言いたいのか、まあそのどちらもなわけだ。
外食したい母としたがらない父。
娘は、どちらの味方にもなりながら、どちらにも偏らないよう心がける。
結果、提案したのは、徒歩圏内にあるチェーンのレストランだった。
あそこなら、ハンバーグのシチュー煮込みとか、ビーフシチューもあったんじゃないかな。
特別感は全くないけれど、それでも母にとってはちょっと楽しみな外食。
さあ、父を連れ出せるのか。
当日、親族のグループLINEに、おめでとうのメッセージを書き込んだ。
二人の兄がそれに続き、姪もおめでとうのスタンプを送ってくれた。
夜になり、母からの返信には、
父親の重い腰を「ビールも飲めるから」と言って動かし、
提案した店で食事をしたそうだ。
お目当てのビーフシチューはなかったけれど、それに近いものは食せたようで、
「よい天気だったので散歩もしました。会話はそこそこでしたけどね。
よい思い出にします。ありがとう」とあった。
もう本当にこういうことでいいよと思う。
小さいことを、普通に喜び、それを少しでいいから文字にしたり、声にしたりすればいいよと思う。
結婚58周年。60周年の時は何かお祝いしてよと長兄にリクエストしたらしい。
先の予定はあまり立てないタイプだけれど、その2年後の予定は、埋めておきたいなと思い、願う。