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二人の選んだ暮らしから感じることがいっぱい 『Home, I’m Darling~愛しのマイホーム~』

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誰かと一緒に観劇すると、共感が何倍にも膨らんだり、違った目線がプラスされます。
作品をフィーチャーしながら、ゲストと共にさまざまな目線でエンタメを楽しくご紹介します。

今回ご紹介する作品は『Home, I’m Darling~愛しのマイホーム~』。
ご一緒したのは、整理収納コンサルタントで、一般社団法人 親・子の片づけ教育研究所(ファミ片) 代表理事の澁川真希さん。

『Home, I’m Darling~愛しのマイホーム』は、イギリスの劇作家・演出家のローラ・ウェイドさんが書いた戯曲を、白井晃さんが演出した現代劇で、登場人物はたったの6人。

※以下、作品のネタバレを大いに含みます。

専業主婦のジュディ(鈴木京香)と夫のジョニー(高橋克実)は、1950年代でコーディネートした家に暮らしています。あの時代のインテリアやファッションを好み、同じ趣味を持つフラン(青木さやか)とマーカス(袴田吉彦)夫妻とは仲良し。
自由を満喫しているように見える二人だけれど、ジュディの母シルヴィア(銀粉蝶)とはどうも噛み合わないし、夫の上司として赴任したアレックス(江口のりこ)をもてなしてもうまくいかない。
そんな時、あることをきっかけに、夫婦が互いに隠していたことが露呈して……。

澁川 観劇前にランチをしながら、偶然にも「こだわりが強すぎると、そうじゃないものに対して不寛容になるよね」っていう話をしていたけど、この作品にとても通じていたから驚いちゃいました。
栗原 相手との違いを認識して、違うからといってただ距離を取ってしまうと、認め合うことも出来なければ、発展もしない。
澁川 つい自分が正しい! となりがちだけど、あ、そうか、そういう考え方もあるねって、違いを認めること。その上で、この目的を達成するためには、何がベストかという視点を持って、「今回はこの方向でやってみよう」になれたらもっと考え方が広がるのにって話をしてたんだよね。
栗原 舞台のこととはまるで関係ない話をしていたのに、なんだか繋がってました。この作品は鈴木京香さん演じるジュディと高橋克実さん演じる夫のジョニーの夫婦としての生き方、暮らし方を通していろいろ感じさせてもらえる物語でした。

ブッダボウルランチ<チャヤ ナチュラル & ワイルド テーブル(日比谷シャンテ店)>

効率的な家事の進め方は
専業主婦以外にも通じるけれど

栗原 お芝居開始何分かで、ジュディのセリフが「これクリンネストの講座で言ってることだよ」と思って、横にいる真希さんをツンツンしそうになりました。(真希さんは、プロ視点のお掃除法を伝える講座、クリンネスト講座の講師も務められています)
澁川 そうそう、専業主婦の家事の進め方としてね、毎日すること、週一ですることを決めて進めるのがコツだって、ジュディが言うんだけど、それって専業主婦じゃなくてもいいからね、と思いながら聞いてました(笑)。
栗原 たしかに……。そしてそれを完璧にこなさなければ正しくないみたいに思いこんでいる人が多いっていうのを反映したセリフとして、フリーランスで働く友人のフランが、「え、それあなたが全部やってるの? 私には無理」みたいに言ってて。これって、双方思い込みがありますよね。ジュディはそれこそが専業主婦のあるべき姿で、私、それを楽しくやれてるのって3年もの間、自己肯定してたわけだけど。
澁川 3年って結構な月日だよね。自分の思い描く夢の家に似つかわしくないものは排除する姿勢はかなり頑なで、自由人の母親に対する反抗心みたいにも見えたけれど、どうしてそこまで母親の逆を行くような暮らしを望んだんだろう。そもそもジュディだってバリバリ働いていた女性だったわけで。
栗原 私は、ジュディが人見知りであまり社交的になれなくなったのは、自分の幼い頃の暮らしのせいだという部分があったのかなって思いました。甘えたい時に母親からは自立せよ!と突き放されて、あなたはあなたの道を行けと言われてしまって、何か求めていた愛情をもらえなかった…みたいな気持ちがあるんじゃないかな、なんて。
澁川 50年代にのめり込んだのは、幼い時に観た映画のシーンがジュディにとってはないものねだりからくる憧れだったのかもしれないね。

栗原 友人のフランとマーカス夫妻はどう見えました?
澁川 会社経営している夫とフリーランスのスタイリストとして働く妻、友達カップルみたいに見えたけど、二人はちゃんと話し合えているのかな? というのは気になったよね。二人を結び付けるものがまだ薄いような感じにも見えたかな。
栗原 この先暮らしていくなかで、子どもが出来たり、少し暮らしのステージが変わっていくとその関係性も変わっていく、そんな二人なのかもしれませんね。

栗原 お芝居の中にはカクテルがいっぱい出てきました。
澁川 ほんとに。彼女たちが好きな50年代の映画にはカクテルがたくさん出てきたりしたのかな? キッチンには、そのカクテルを作るためのお酒の瓶がたくさん収納されているワゴンがあったよね。
栗原 やっぱりそこには目がいきました。ちょうど舞台の中央ってこともあったけど、整理収納アイテムは気になるし、ちゃんとグループ収納されていたなって(笑)。

ジョニーのセリフはそっくりそのまま
「整理収納アドバイザー」のテキストになる!?

澁川 インテリアや食べ物、洋服など、ジュディは50年代にハマることで外の世界をある意味遮断して暮らしていたよね。
栗原 楽しみにしていたイベントもお友達夫婦が行かないなら、行くのやめるなんて言ってましたしね。実はジュディもバリバリ仕事をしていた人だったけど、会社をクビになって専業主婦になりますって宣言してからは、ある種自分を封じ込めていたような。
澁川 そういう風に自分をマインドコントロールしていた感じ。
栗原 夫はそれを、君がそれでいいならいいよ……としていたけれど、それってホントの君じゃないよねっていう違和感は少なからず持っていたようでした。
澁川 専業主婦でやってみたいならとりあえず6カ月やってみたら? で始まったけど。まあね、目の前にやることがある時は、暮らしの中の違和感には気づきづらいというのはあるよね。
栗原 私も結婚して家電や家具を一つずつ揃えていく時は、整理収納のスキルも前面に出しまくって、きめ細かく張り切ってやってたもんなぁ。
澁川 でも、そういう毎日に一段落ついてしまうと「で、今日1日何してたの?」って夫の中にもなにか違和感が芽生える感じ。
栗原 実はそれは自分が好きになった妻の姿とは少し違っているんじゃないかという違和感。
澁川 すごく今っぽかったのは、「相手(妻)がそう思うんだったらそうしようよ」って言ってくれるところ。今、やさしい旦那さんがすごく多かったりするから。でもそれが少し行き過ぎていると、やがてひずみが出てくる。ジョニーが二人の暮らしを「幸せすぎて虫唾が走る」みたいに言うセリフがあったけど、それもちょっと違和感を表していたのかなって。
結果的にジョニーは妻に素直な気持ちを伝えたよね。相手もちゃんとそれを受け入れてくれるだろうと信じて言ってる。それが救いだった。
栗原 今更そんなこと言わないで、だったら早く言ってよ!って、文句とか言い合いになってもおかしくないけど、そうではなく「それを受け入れてくれる君にだから言うんだよ……」という信頼感、あきらめているわけじゃないから伝えるんだよっていうのがあった。確かにすごく今っぽい気がします。
澁川 で、何より大事だったのは、そうやって相手が言ってきてくれたことに、乗るってこと。ジョニーに言われた時に、ジュディが手を出したじゃない。あそこだよね。あそこで手を出せるかどうか。
栗原 妻から手を差し出して重ねる、しかも力強く重ねあう感じ。いいお席だったからよく見えました。
澁川 控え目に手を取り合うじゃなくて、しっかりがっしり手を重ねてた。
栗原 しかも、これからはこの方針で行こうじゃなく、今日からはこうだけど、ここから先、何度でも見直そうっていう提案が出来たこと、あれはたまらないですよね。
澁川 ラストの畳みかけ、ジョニーのセリフがすばらしかった。
栗原 あれはそっくりそのまま「整理収納アドバイザー」のテキストになるんじゃないかと思うほどでしたね。脚本が読みたい。

澁川 さらに最後の最後のシーンで、ジュディとジョニー以外の出演者たちが代わる代わる出てきて何かを探していたりするように見えたんだけど、あれは何を意図していたのかなぁ?
栗原 個は個だけど、互いを気にしてる、作用しているみたいな感じに見えました。
澁川 私の解釈はね、二人の夫婦の姿はないけど、家に来た時に、あれ? 何か前と違う!? みたいな、そんな風に見えたんだよね。結果的に50年代風のファッションや家のインテリアは変わってないけれど、二人の考え方とか暮らしの変化みたいなものに、ふと周りの友人や母親が気づいたみたいな。
栗原 すごい、なるほど! うわぁー、こういう風に感じ方がいろいろ想像できるのがまさに演劇の面白さ。

トライアンドエラーを繰り返して
自分の家にちょうどいいルールを見つけることが大切

澁川 家を片づけると、その家自体が変わるわけではないけど、そこに暮らす人たちの関係性が変わると家の中って変わるっていうことをリアルに経験しているじゃない。逆にいくら整った家でも、疲れて冷たい感じがする空間というのもあるし。
栗原 たしかに……。キレイ!って言えるお家があっても、ここに住みたい!って感じるかというとそうでもないみたいなお家もありますもんね。
澁川 場の空気ってやつだよね。

澁川
 江口のりこさん演じるアレックスは、どうして、どういう役割で登場したのかな?
栗原 年上の男性の部下がいるキャリアのある女性ってことで、現代の象徴の一つ、ジュディたちが好む50年代との対称的な存在ってことなのかなぁ。
澁川 もう一度見たら全然違って見えそうだよね。
栗原 ジュディとジョニー以外の表情とかにも注目して観てみたいですよね。改めて、この作品を観て感じたこと、教えてください。
澁川 自分の家にちょうどいいルールを見つけることが大切だし、そこに暮らしている人同士が心地よくいられるルールを見つけるためにトライアンドエラーを繰り返していくことが必要ですよね。その作業のためには、素直になること、相手に話してもらえるような環境を作ることって大事です。「言ってもどうせ無理だから」と口にする人も結構多いけれど、理解しようとか、見つけていくということをあきらめちゃいけないんだってことを改めて感じました。それはファミ片で伝えていることのメッセージと重なる部分が多かったなぁ。
栗原 不満があったら言って! では言えないことも多いのかもしれませんね。だとしたら、今の暮らしの中で気に入っていることは何!? って互いに出し合うのとかもいいのかも。ジョニーのセリフの中で、「いいタイミングだったのかもしれない」みたいのがあったけど。
澁川 構えないようにそれを言うタイミングを見つけるのって難しい。でもやっぱりあきらめちゃいけないよね。だからこそ最後に手を握るシーンは良かったなぁ。ほんと、あそこに乗っかれるかどうかなんだよね。
栗原 実は根っこは男前なジュディがいて、それが京香さんにハマってましたね。

今回エンタラクティブしてくださったのは……
澁川真希 (Maki Shibukawa)さん 
整理収納コンサルタント

一般社団法人 親・子の片づけ教育研究所 代表理事

整理収納コンサルタントとして2006年から活動開始。無理なく片づけられ、家事や仕事の効率がアップする、家具・物の配置プランやゾーニングが得意。2014年(一社)親・子の片づけ教育研究所を設立。片づけを通じて家庭からジェンダーギャップをなくし、社会を変えるべく活動中。モノとコトを「整える」ことで、暮らしを楽に快適にし、人生をしなやかに生きる女性が増えることを願っている。
https://www.comfort-s.jp/
https://oyako-katazuke-edu.jp/