理由あって週イチ義母宅に通っている。
これは、主にその週イチに起こる、今や時空を自由に行き来する義母とその家族の、
ちょっとしたホントの話だ。
ある9月の暑い日。
義母宅に向かういつもの電車に1本乗り遅れた私は、待ち時間に駅でおやつを調達。
この日はちょっと奮発？して、船橋屋のあんみつを購入した。
不安定な天候でゲリラ豪雨予報が出ていたこの日、お昼を食べ、1品作りおきおかずを作ったところで晴天のすきに買い物に出た。
空っぽの冷蔵庫に、船橋屋の紙箱が大人しくおさまった状態で。
「買い物に行ってくるね。帰ってきたらおやつを一緒に食べようね。今日はちょっといいおやつだから楽しみにしててね」
ケアマネさん訪問で、お昼寝がちとおあずけ状態だったためか、私が出かける時にはもう半分寝ていたのかもしれない。
いつも買い出しするスーパーまでは徒歩3分。
買い物は30分足らずで済ませ、戻った。
玄関のドアを開けた瞬間、「あきちゃん！？」とハッとした声が聞こえた。
これはまさか！ 障子を開けると、あんみつをカップのまま割りばしで不味そうに食べる義母がいた。
不味そうと気まずそうが混在していた顔だったろうか？
私はカーッとなって、
「ヒドイヨ、帰ってきたら一緒に食べようねって行ったじゃない！」
「もう一人になっちゃったと思って、寂しくて」
「寂しくても食べものがあればいいわけね、じゃあ私がいなくてもいいじゃない、ならもう帰るよ」
こうして文字に起こすと圧倒的に私のキャパ不足でしかないのだが、
たぶん私もおしゃべりしながらおやつを食べる時間をモチベーションにしていたということなのだろう。
しっかり包装された紙箱を開けて、あんみつをあんみつとわからず食らう義母の姿にドロッとした感情が芽生えた。
とても珍しいことに、義母は
「ごめんなさい。」と言った。
その他に私がどんな言葉を吐いたかは、書かないことにする。
嫌われたくないから。自分を。自分が。
もちろん、人権を侵害するような言葉は使ってないので、念のため。
それから私はしばらく、プリプリしながら黙っておかずを作り続け、
プリプリしながらの割にはちゃんと義母の好きな味に仕上げた。
プリプリしながらの割にはちゃんと義母の好きな味に仕上げた。
義母は続けて寝た。
起きた時にはケロッとしているのだろう。
16時近くなり、私にもしばしの休憩が必要となり、写真のようにおやつを出す。
左のみつ豆が義母。
右の珈琲あんみつが私。
偶然だが、私が食べたかったほうが残っていた。
義母はあんみつの食べ方がわからず、二層になっている上段の餡とたぶんフルーツかなにかを箸で食べ、下段の味のない寒天と豆に困惑し、食べ残したところで私が帰宅したというわけだ。
後がけの黒みつをかけていないのだから、美味しいわけがない。
たっぷりと嫌みを言いながら、
「たっぷり黒蜜をかけていいよ」と舟型のチューブに入った黒蜜を渡した。
「いい甘さだね～」
「だから私と一緒に食べれば美味しく食べられるようにするのに……」
カラッと嫌みを言いながら、この日のおやつタイムを終えた。
仕方がないことはわかっている、腹を立てても仕方がない、これが現実なのだということも。
その日の朝、電話でアベコベなことを言う義母に、声を荒らげた夫を「現実なのだから……」とたしなめたことを、あんみつ事件の報告とともにこっそりLINEで謝った。
「それは怒って当然」
と返信してくれたことで、リセットされた。
地元の駅で軽くビールを飲んだこともリセットの一つ。
そして帰宅後は、実家の母に令和あんみつ事件を報告。
母は自分が義母との関わりをほぼ経験していないので、無条件によくやれてるわとつぶやいてくれる。
母は自分が義母との関わりをほぼ経験していないので、無条件によくやれてるわとつぶやいてくれる。
そして……、
「船橋屋のお土産用あんみつ、へぇ～そんなのがあるの！ 私食べたことないわ」
「そお？ じゃあ今度お土産に買っていくよ」
「そお？ じゃあ今度お土産に買っていくよ」
３つ目のリセットで長い長いある日の義母宅デイは終わった。
