理由あって週イチ義母宅に通っている。
これは、主にその週イチに起こる、今や時空を自由に行き来する義母とその家族の、
ちょっとしたホントの話だ。
いくつになってもミッションは人に刺激をくれるようだ。
日頃から食器洗いなど、出来ることはやってもらうようにしていて、
今日は何を頼もうかとあれこれ考えるのが週イチの私のミッションである。
デイサービスに行っている日に比べて、私が訪ねる週イチは、義母はあまりすることがない。
イレギュラーで床屋さんに行ったりしたけれど、
それでもちょっと暇そうだ。
バナナの袋詰めもしちゃったし、さあ、どうしよう?
私は時々、義母に「先生」と呼ばれる。
元教師だった義母に「先生」と呼ばれる。
呼ばれる覚えは……まあ、ある。
私が義母にミッションを課すことが多いからだ。
ふと、ストックのレジ袋が所定のBOXからはみ出しているのが目に入った。
レジ袋は義母宅では結構必須なので、そこそこストックはある。
自分の休憩がてら、レジ袋をたたもうとテーブルへ移動した。
義母が興味津々で私を見る。
「お義母さん、たたむの手伝ってくれるかしら?」
「いいよ、でも、出来るかねー」
「一緒にやりましょ」
ここからしばらくの間、私は義母にレジ袋のたたみ方を教え、
義母にはていねいにレジ袋をたたむというミッションができた。
半分に折って、ギュッと線をつけて、開いて、真ん中の線に合わせて折って、
反対側も折って、ひらひらしたヒモの部分を折り込んで、
適当な幅で一つ折って、もう一つ折って、折って、折って最後に余った端っこを
この間にはさんで出来上がり!
義母はとても几帳面に折り目をつける。
1枚終わって、もう1枚。
また折り方は1から説明しつつ、一緒に折る。
何回かやれば今度は一人でも……とはならない。
あくまでも隣で一緒に進めていく。伴走が必要だ。
それでもなんでも、ミッションを得た義母は、結構な枚数分の作業が続いたにもかかわらず
真面目に、音をあげることなくこのレジ袋たたみというミッションを遂行してくれた。
全部折り終わったら、台所のストックボックス内に入れてと頼んだ。
几帳面な義母は、整頓して入れようとゆっくり時間をかけて入れていた。
7月に地元で親子向けの片づけ体験教室を開催した。
その際、お子さんたちにたたむ練習をしてもらった。
各々の家庭のルールがあるのだろう、さまざまな方法で、でも「私だってそんなのできるよ!」のテンションで嬉々としてタオルやシャツをたたんでくれたのが印象的だった。
レジ袋のたたみ方も場合によってはトライしてもらうおうと思って準備していたが、
その日は出番がなかった。
覚えて、(いい意味で)その気になって、お手伝いをする。
ねらいはソレだった。
義母の場合はどうだろう。
覚えて、というのは無理そうだ。
その場ではその気になれるけれど、少しするとレジ袋をたたんだことは忘れてしまう。
でも利点もある。
次もまた新鮮な気持ちで折ってくれる。
義母へのミッションは浮遊するというのが最大の特徴なのだ。