理由あって週イチ義母宅 PR

エプロンと夢のコースにバイバイ

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理由あって週イチ義母宅に通っていた。
これは、今や時空を自由に行き来する義母とその家族の、ちょっとしたホントの話だ。

義母のかかりつけの市民病院での検診は、週イチ義母宅が始まった年から2カ月に1度、ここ1~2年は3カ月に1度のペースで設定されていた。
ショートステイでの施設への入所後も、このペースは守られていた。
前回は初めて車椅子での移動となり、夫と二人、慣れない介助にヘロヘロになった。

ここ数年の検診は平日だったので、同行するのは主に私だった。
病院で「娘さんに付き添ってもらえていいですねー」と声を掛けられる度に、
相手がもう言い終わらないくらいのタイミングで
「娘じゃなくて、嫁、なんですけどね」とツッコミを入れるのが定番だった。
会話の感じがかなり馴れ馴れしいので、嫁姑の関係には見えないのであろうことは自覚があった。

担当医の先生も担当の看護師さんもすっかり顔見知り。とくに看護師さんが明るく雰囲気のいい方で、いつも阿吽の呼吸で流れるような検診が行われていたのがとてもありがたかった。
昼前に検診が終わると看護師さんが
「今日もこの後、お昼食べに行くんでしょ?」が、
「今日も夢庵でお昼食べるんだよね?」になり、
「じゃあこの後、夢庵で天丼食べるんだよね、いってらっしゃーい」
となっていた。

まあ、どこに行くとか何を食べるとかは私がポロポロ話していたせいなのだけど
事実、義母と私は診察を終えると、薬局に処方箋を出して梱包してもらう間に、夢庵に行き、義母は大好きな海老の乗っている天丼を食べた。

この数年間で何尾の海老を食べたかって!?
さすがにそれは数えていない。

3カ月前、義母と夫と私の3人でそのコースをたどった。
しっかり天丼は平らげた義母だったが、夏にコロナに罹患してからは、筋力が衰え
丼が重そうだった。
そして、車椅子とテーブルの高さが微妙に合わないことも理由に加わり、
ご飯を食べこぼす量が増えた。

そしてこの病院での内科検診は、恐らく最後になるその日、
やっぱり同じルートでお昼を食べることにした。
60歳以上が一人いれば5%OFFになるプラチナチケットなるものを最大限に活用してきたしね。

準備は万端だった。
私は自宅からだいぶくたびれたエプロンとそれを入れて持ち帰れるレジ袋を持参していた。
天丼ではなく、天ぷらがメインのちょうどいいランチがあったので、メニューはそれを選んだ。
義母は絶好調に箸をすすめ、絶好調でご飯をたべこぼした。
使い慣れない食器に手元と口元の距離感が合わないのは仕方がない。
これは想定内だったから、存分においしく食べてもらえればそれでOK。
おかずは私たちが1~2品手伝ったものの、ご飯もおかずもほぼ食べきり、ミニスイーツも目を細めて食べてくれた。

ご飯だらけのエプロンを首からはずしてくるむようにたたんで、レジ袋にイン。
「これでこのエプロンはすっきり捨てることが出来る!」
気に入って使っていたのはいつ頃のことだろう。
イベントなんかでつけたりもしたなぁ。
でも家でエプロンなどまったくつけていないのだから、もうすっかりなくてもいいものになっていた。
よくよく見れば色もあせ、だいぶくたびれた感じもある。
最高の形で役目をはたして、エプロンにバイバイできる。

施設に義母を送り届け、病院での様子など諸々申し送りをすると
スタッフの方が「お昼は召し上がれましたか?」と心配そうに聞いてくれた。

「はい!海老の天ぷらをはじめご飯も味噌汁も、夢庵でランチをしっかり食べました」
と報告すると
「夢の夢庵、行けたのですね!!」と結構なテンションで喜んでくださった。

待て待て、私はここでも検診の後は夢庵でランチが定番だったことを、
スタッフさんに話していたっけ。どんだけ義母ネタ報告したがりなのか(汗)。

これからは施設での定期健診が主になるため、このスペシャルな夢の夢庵コースは
恐らく今回が最後になる。

いろいろなことがいろいろ変わったけれど、
食べ終わって盆を下げてもらった後のテーブルを
当たり前のようにおしぼりで拭いている義母の姿は変わらないねと笑った。

食べた海老天の数を数えていなかったのが、やっぱりちょっと心残りではあるような……。