理由あって週イチ義母宅 PR

フィクションが過ぎる

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理由あって週イチ義母宅に通っている。
これは、主にその週イチに起こる、今や時空を自由に行き来する義母とその家族の、
ちょっとしたホントの話だ。

義母宅で1枚の紙が出て来た。
それはまだ、週イチ義母宅が始まる前のこと。
義母は、公民館で詩吟を習っていた。長くやっていたわけではなく、ある日突然始めた。
真面目に取り組み、市の文化祭のような催しでは詩吟クラブの一員として発表会にも出演していた。

当然、夫と私はその晴れの舞台を観に行った。
発表を見た帰り、3人で近くのファミリーレストランに食事に出かけると、その場で感想を書くように迫られた。
それを詩吟教室の先生にお礼の手紙と共に渡すのだという。
1枚の紙はその時の手紙をコピーしたものだった。

夫と私が小さなメモ用紙に書いた紙が貼りつけてあり、前後に義母の直筆がある。
感想を書いたことははっきり憶えていたが、なんと書いたかは憶えていなかった。
読み返すと、夫婦二人ともとにかく真面目に書いていた。

私の感想だけ書き出してみよう。
・尺八の音色が素晴らしい
・「上杉節」、漢詩の部分の声がよく響いて聞き応えがあった。
・1番、2番の節をつけて歌う部分は、もう少し元気よく、景気よく聞こえるともっと良かった。
・皆さんの吟ずる時の姿勢が良かった。
・「吉田松陰」では、「親思ふ~」の部分、声に迫力があり説得力があった。

渾身のレビューだ。
良いところだけじゃなく、もう少し……みたいな部分もあえて入れるという気遣いを見せた。
自分で言ってしまったが。

夫も同様に、真面目に書いていて、「歌詞カードなどあれば意味がわかってより良かったと思います」など、提案も入れたりする気の遣いよう。

当時、さすが義母は元教師だ! と思ったものだ。

さて、その後、それがどうやって詩吟の先生にシェアされていたのかは、義母から「とても喜んでいた」としか聞かされていなかったのだが、
「まあ、これも親孝行というものだね」なんて感じである年のある秋の行事として過ぎ去っていったのだった。

それから数年が経ち、クシャクシャの状態で見つかったその手紙のコピー。
夫と私が小さなメモ用紙に書いた紙が貼りつけてあり、前後に義母の直筆がある。

その時のメモをご紹介いたします。
男性(テノール)50才。女性(作詞)44才。
この二人は、以前の教え子で文学好きの中学生でした。
いつも私のことを心配してくれています。

と書かれていた。

夫と私は教え子にされていた。
夫は学生時代トロンボーンを吹いていて、私はライター。
なんとなくうすーくかすっていなくもない。
それにしてもお義母さん、フィクションがすぎるよ!!

どういうねらいでそういうことにしたのか、もう今になってはわからない。
ただ、遅れてその教室に参加した義母は、破竹の勢いで詩吟を吸収し、
教員生活で鍛えた滑舌の良さ、声の張りと、詩の読解力でメキメキとバキバキと
ポジションをかっさらっていたようだったのは間違いない。

大きな声を出しても近所迷惑にならないよう、歩道橋の上で練習したとも言っていた。
それはたぶんノンフィクションだったのだろう。

ちなみに、私が書くこの「理由あって週イチ義母宅」はすべてノンフィクションだ。
本当に、本当に……。

※写真はある日のランチでいただいたサラダ。義母とは無関係だ。ちなみに義母は大の海老好きで、
生野菜は好まない。