自分らしさ、暮らしやすさを提案するらしく・おうちと整理研究所 主宰の柳澤とも子が、夫婦で手塩にかけて作る庭と植物についてつづるガーデンフォトエッセイ。
4月中旬を過ぎるころから、庭の景色が一気に変わってきました。
それまで「春が来たな」と感じる程度だったものが、ある日を境に勢いよく色づき始め、庭中が花と緑で埋まっていきます。毎年この時期になると、「やっぱり一年でいちばん華やかな季節だな」と感じます。
デッキで過ごす時間も自然と増えました。
朝はまだ少しひんやりした空気の中で珈琲を飲み、夕方には夫と軽くお酒を楽しむ。風が気持ちよく、庭の花々を眺めながらぼんやりしているだけで、なんだか贅沢な時間に感じます。
そして先月も言及していましたが、今年、ついに長年待ち望んでいた藤棚らしい景色ができました。
数年前に植えた藤は、最初のころはなかなか花がつかず、「本当に藤棚になるのかな」と思ったこともありました。それが今年は、パーゴラからやわらかな紫の花房がしっかり垂れ下がり、ようやく“藤棚”と呼べる姿になったのです。
何年もかけて少しずつ枝を伸ばしてきたことを思うと、感慨深いものがあります。
植物は、劇的に変わるのではなく、見えないところで少しずつ力を蓄えていたのだなと改めて感じました。
しかも、藤の花が終わり始めるころには、今度はパーゴラの反対側を覆っている薔薇が満開になってきます。まるで交代するように主役が移っていくので、この場所を長く楽しめるのも嬉しいところです。
庭の足元に目を向ければ、そこかしこで春の花たちが咲き競っています。
ラベンダーの周りはミツバチがどこからともなくやって来てずっと蜜を探していて、いつもブンブンと賑やかです。
今年はパンジーを少し切って、小さな花瓶に飾ってみました。庭ではにぎやかな存在なのに、室内に持ってくると、一輪一輪の色や表情がよく見えてきます。洗面所やダイニングに小さな花があるだけで、不思議と部屋全体が明るくなるものですね。
そんな様子を見ながら、庭と整理収納は似ているなと思いました。
例えば、リビングの棚も、全部を整えようとすると疲れてしまうけれど、ダイニングの一角に、冬のあいだ飾っていた重厚感のある雑貨の代わりに、ガラスの花器や明るい色の洋書を重ねてみる。あるいは、お気に入りのアンティークの器にパンジーを一輪、洗面所に置いてみる。そんな小さな変化だけでも、部屋の景色が季節に合わせて呼吸し始めます。
藤が終わるころに薔薇が咲くように、暮らしの中でも「今、何を主役にするか」を少し意識するだけで、家の空気は変わっていく。
全部を完璧に整えなくても、季節ごとに小さく手を入れながら楽しむことが、心地よい暮らしにつながっていくのかもしれません。
これから毎年この季節は、この藤棚と薔薇の移り変わりを眺めながら、デッキで過ごす時間が増えそうです。
※当サイトの内容、テキスト、画像等の無断転載・無断使用を固く禁じます。

