紅茶コーディネーターのイノチカが、さまざまな角度から紅茶と共に過ごす時間をご提案するオリジナルエッセイ。
好きなのは紅茶を愉しむしあわせな時間と空間。
一人の時もあれば、大切な誰かと一緒の時も。自宅をはじめ居心地の良い場所でのTeatime。
私の人生の中で、紅茶と紐づく記憶は、いつもしあわせと結びついています。
暮らしに紅茶を取り入れて、日常にもっともっとしあわせな時間を増やしていくことができたなら……。
紅茶にまつわるあれこれを綴ります。どうぞ紅茶を片手にお付き合いください。
《Tea and・・・カップの中の夕日のきらめき》
横浜に住んで25年。 都会の便利さと、海や山へすぐに行ける自然の近さが、とても気に入っています。
週末に、急に夕日が見たいと言い出した娘の提案に、「お!いいね〜」と乗った夫。 私も、PC作業で家にこもっている日が続いていたこともあり、一緒に行くことにしました。
わが家では「夕日と言えばここだよね」と何度か訪れたことのある、葉山の海沿いにある立石公園へ向かいました。
家からは車で30分ほどの場所ですが、自然豊かな風景が広がっていて、天気が良いと江の島とその先に富士山が見える絶景のスポットです。 特に夕日が沈むマジックアワーの時間帯は、何とも言えない美しさに包まれます。
海に沈む夕日と、オレンジ色が刻々と変わる空をしばらく3人でぼーっと眺めていました。 ぼーっとすることはリラックスになるだけでなく、記憶の整理整頓や新しい情報のつなぎ合わせを進めてくれる効果もあるそうです。 アイデアが浮かばず、仕事で少し行き詰まっていた私には、とても貴重な時間になりました。
夕日を見たあと、お腹がすいたので、海岸の目の前にあるマーロウ秋谷本店へ。
マーロウはビーカーに入ったプリンがとても有名なカフェですが、もともとレストランだったこともあり、今でも地元野菜や近くの漁港で水揚げされた魚介で作るオリジナルの美味しいイタリア料理をいただくことができます。
もちろんデザートにはプリン。こだわりの「本店限定 王様プリン」を注文しました。 コクがあり、少し硬めのプリンはどこか懐かしい感じがして、とても美味しかったです。
そしてドリンクはやっぱり紅茶。今回選んだのは静岡紅茶「あかり」セカンドフラッシュ。 国産紅茶らしいやさしい甘みの奥に、ほうじ茶を思わせる香ばしさがふっと立ち上がります。
カップの中の水色は、柔らかなオレンジ。 窓の外はもう真っ暗ですが、そのオレンジ色を眺めていると、さっき見た夕焼けの景色がよみがえってきます。
娘の思いつきの一言で、心もお腹も満たされて、とても豊かな一日になりました。
帰宅して気になったので調べてみたのですが、おそらくこの静岡産「あかり」という紅茶は、和紅茶で有名な川根本町・益井園のものではないかと思われます。 和紅茶の復興を支えてきた園主が、一人で栽培から製茶まで手がける茶園。 以前から気になっていた名前に、こんな場所で出会えるとは思いませんでした。
次にマーロウ本店を訪れるときは、夕日だけでなく、この紅茶のことも確かめてみたい。 そんな小さな楽しみがひとつ増えた、心に残る一杯でした。

