とりなし隊長のメモパッド PR

何十年ぶりに腕を組んだら

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言い方ひとつで、考え方ひとつで物事は結構うまくいく。これはとりなし隊長がちゃちゃっとメモしたような気楽な記録と提案です。

今回のとりなし対象も……
<ともに昭和10年代生まれの私の両親>
※おそらくこのパターンが一番多くなることでしょう。

父は昭和10年生まれで身長は178㎝。
母は昭和14年生まれで身長は155㎝。
最近は歳を取って縮んでいるかもしれないが、父は大柄である。
二人の身長差、足の長さの違いは一目瞭然だ。

そんなわけで二人が並んで歩くという光景を子どもの頃から見ることがなかった。
父はおかまいなしにどんどん、ぐんぐん歩いていくタイプ。
正直、紳士ではない。

私が結婚したばかりの頃、家族で出かけた時に、駅から目的地までの道を毎度のことながら
ずんずん歩いていく父の後ろ姿を見ながら、母が私の夫につぶやいたそうだ。
「あの人は周りのことはおかまいなしに、いつもああやって勝手にどんどん行っちゃうのよ」
その言い方がなんとも憎たらしい、悔しい口調だったそうで、印象に残ったのだと聞いた。
娘である私にとっては当たり前の光景だったけれど。

それから何年もの月日が経過し、両親ともに歳を取った。
ある年、私の薦めで両親がバラ園に出かけ、翌日、母が電話で報告をくれた。
駅からバラ園までは結構な距離だったのだが、往復歩いたという。
「え、あの距離を歩いたの!? ずいぶん頑張ったね」というと、
「お父さんと何十年かぶりに腕を組んで歩いたのよ」という。
一瞬母が何を言ったのかわからなかった。
よく聞くと、いつもの通り歩幅が合わない二人は、駅でバラ園までの道を通りすがりの人に確認しながら歩き出したという。
「え、歩くんですか?かなりありますよ」と驚かれたりもしたそうだが、
シャトルバスには乗らずに覚悟して歩き始めたのだという。
その道中、母は父に「ちょっと腕を貸してくれない」というように頼んだらしい。

合いの手を入れるのが得意な私もその報告には「へぇ~~」くらいしか言えなかった。
「そうしたらびっくりするくらい楽で、ぐんぐん歩けたの。往復で14000歩だったわ」と続ける母の声は嬉しそうだった。

ガタイのいい父は、掴まりながら歩くには最高の安定感だったようだ。
「それは良かったね。これからも気軽に腕借りちゃえばいいじゃない。つまずいて転ぶよりよっぽどいいよ。腕を借りて歩いたから楽だったとお父さんにも伝えなよ」
そう言うと、「そうね」といつもよりは素直な母。

その報告を受けてからしばらくした後、父と会話する機会があった。
「バラ園に行った時、お父さんに腕を借りたらとっても楽で歩きやすかったって喜んでたよ」
そう伝えると
「もう腰が曲がってお婆さんみたいな歩き方だからな」
と恥ずかしいのか憎まれ口を叩く父。
「そもそも足の長さが違うから歩きやすくはなかったかもしれないけど、転んで骨を折ったりしたらよっぽど大変なんだからね。気遣ってあげてくださいよ」
ととりなした。

こういうのは直接お礼を言うのも大切だけど、人から聞くのもいいに違いない。
なんといっても嘘ではなく、事実そう言っていたのだから。

ほんの2年前のことではあるが、この時のことは好事例となったようだ。
私がとりなしたことが影響しているかどうかはわからないけれど……。

(ほのかにつづく)

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