歌舞伎をほぼ毎月楽しんでいる50代男性。毎月観るために、座席はいつも三階席。
初心者ならではの目線で、印象に残った場面や役者さんについて書いてみます。
十二月大歌舞伎は先月に引き続き、市川海老蔵改め十三代目市川團十郎白猿襲名披露 八代目 市川新之助初舞台の記念すべき公演となります。
いつもは月末近くに観劇する機会が多いのですが、今月は上旬の観劇となりました。
では、夜の部の一、口上からご紹介しましょう。
先月の口上は、尾上菊五郎さんや坂東玉三郎さんら、いわゆる大幹部だけが並ぶ口上でしたが、今回は一門、弟子、親戚などが勢ぞろいで大人数でした。
https://entameseiri.com/3f_kabuki-2022nov-3/
口上で幕が開くと、三列に並んだ歌舞伎役者たちが、皆、柿色の裃を着て座っていました。
演目にも、柿色裃勢揃いにて相勤め申し候とあります。
ちなみに柿色は市川一門の色で、十二月は歌舞伎座が夜になるとこの柿色にライトアップされています(写真参照)
前列が11人。二列目が12人、三列目が14人でした。
前列は向かって左(下手)から、猿之助、門之助、男女蔵、齊入、新之助、團十郎白猿、左團次、権十郎、右團次、高麗蔵、幸四郎(敬称略)
休演中の松本白鷗さんに代わり、市川左團次さんが紹介していきます。
猿之助さんは「今ここで全部言っちゃうと、夜「助六由縁江戸桜」の通人(つうじん※粋で通な遊び人)の時に喋ることがなくなってしまいますので、以下同文でお願い申し上げ奉りまする……」とやって、盛大に沸かせていました。
ラストは十二代目(新團十郎の父君)のお付きだった市川齊入さんの挨拶が締めとなりました。
大人数が会した舞台上には、市川中車さん、市川染五郎さん、松本錦吾さんなどもずらり。
三階席からオペラグラスでじっくり見ながら、口上を楽しみました。
最後の最後、総勢37名が挨拶に合わせて頭を下げる様子は壮観でした。
大幹部による十一月の口上、身内による十二月の口上、このパターンの異なる口上を二カ月連続で観れたことによって、團十郎さんの襲名を見届けることが出来た気がして、満足感を得ました。
では、少し戻って昼の部の
二、京鹿子娘二人道成寺(きょうかのこむすめににんどうじょうじ)
鐘供養より『歌舞伎十八番の内 押戻し』まで
娘道成寺はこれまでも何度も観ている作品ですが、今回は白拍子が二人のバージョン。
中村勘九郎さんと尾上菊之助さんが白拍子 花子を演じました。
白拍子とは歌舞を演じる遊女のことです。
白拍子は鐘の中に入ると大蛇の化け物、鬼の姿となって現れます。それは、かつて怨みの念を抱いて亡くなった清姫の魂だった……というところで終わる演目が多く、私がこれまで観てきた娘道成寺もそれだったのですが、今回の演目では、鬼になって出てきた白拍子が、花道まで出てきたところを、團十郎演じる大館佐馬五郎照剛が遮り、押し戻すという場面が加わっている形でした。
佐馬五郎は大きな青竹を持って勇ましく出てくるのが見せ所。
私は道成寺の二人の連れ舞がとても好きです。手踊り、笠をかぶったり、太鼓を持って踊ったりと次々に踊りを変えていく舞が華やかでいいんですよね。
勘九郎さんと菊之助さんは背格好も似ているので、そのバランスも美しかったです。
踊りながら鐘に執着するような目線や動きも見え隠れしたりして、小道具も変えていくので飽きることがありません。
また、所化(しょけ)の不動坊を演じる坂東彦三郎さんは、イケボで有名な役者さん。本当に声がいいんですよ。それを聞けるだけで気分がよくなりますし、
この演目には私の大好きなヒーロー、鼓の田中傳左衛門さんも出ていましたから、それはそれは鼓の音が最高でした。
いつもの場所で終わってもいいなと思ってしまいましたが、いやいや、今回は團十郎さんの登場がある押戻しが見せ場ですから、それは大きな声では言えませんね。
とにもかくにも華やかな演目は襲名披露公演にピッタリでした。
舞台写真付きの詳しい歌舞伎レポートは、エンタメターミナルの記事「歌舞伎座「十二月大歌舞伎」が開幕!公演レポート、舞台写真掲載」をご覧ください。