日常の中から、エンタメを整理収納目線、暮らしをエンタメ目線でつづります。栗原のエッセイ、つまりクリッセイ。
私が暮らす地域では、2022年4月期にテレビ東京で放映していたドラマがある。
「先生のおとりよせ」
ドSな官能小説家・榎村遥華役を向井理さん、フェミニンでどMな漫画家・中田みるくを北村有起哉さんが演じた、実にテレ東らしい作品だった。
ここでいうテレ東らしいとは、テレビ東京の深夜枠で、ちょっとエロ、グルメ系、情報あり、が詰め込まれているという意味。
お隣同士だが、まったくそりの合わない小説家と漫画家。
でも互いの力は認め合っている二人。
何より二人に共通しているのは、愛すべき「おとりよせ」マニアであるということ。
原作は2013年から18年までpixivコミックで連載された中村明日美子(漫画家)と榎田ユウリ(小説家)の同名作品だ。
このドラマでは、毎話、実際に「おとりよせ」出来る食べ物が紹介され、
それを二人が何かとシェアするシーンが見どころだった。
しかも、高級ほにゃららみたいなものばかりでなく、どちらかという素朴だったり
視聴者も手が出せそうなものが取り上げられていたから、
深夜に見たらお腹がすくってなものだ。
私は大抵、録画したものをポケーッと昼間に見ることが多かったから、
思わずポチるなんてことはなかった。
でも、全12話のなかでやけに気になる商品がひとつだけあった。
それは、第7話に登場した雲仙きのこ本舗の「養々麺」。
そもそも麺好きなうえにきのこ好き。
物語は過労で倒れた榎村が病み上がりにぴったりだとして食するという形で紹介された。
お品のよいその麺は、20年のロングセラーでつまり即席のにゅうめんらしい。
お湯を注ぐだけのインスタントラーメン、というかカップラーメンか?
のように作れるらしく、だから病み上がりにも夜食にも、病み上がりの夜食にもぴったりということだった。
病んでも上がってもいないが、やけに気になったのだ。
幸い、私には全国のおいしいものに詳しいグルメな友人がいる。
学生時代からの友人で食の好みが間違いなく合う人なので、さっそく聞いてみた。
「養々麺って知ってる?」
「うん、知ってるー。おいしいよ」
さすが友人だ。彼女がすごいのだが、彼女に聞いてみようと思った私もすごい。
ドラマで情報を知ったことを伝え、お取り寄せの価値ありかを続けてたずねたところ、
「常備ではないけど、ちょいちょい地元のスーパーでも売られていることあるよ」
と、私の最寄り駅に入っている店でも買えるという情報を教えてくれた。
さすが友人だ。彼女がすごいのだが、彼女に聞いてみようと思った私もすごい。しつこい。
それからあっという間に数ヶ月が過ぎた。
お中元やお歳暮のカタログ内で見かけたことがあったような気もする。
でも、購入には至っていないまま時は過ぎていた。
と、先日、売り場でバーンっと目に入ってきた「養々麺」のパッケージが。
もちろん、何の迷いもなく買い物かごへと2つ入れ、先日、ようやくその味にたどり着いた。
どんぶりに空けてお湯を注ぐだけで3分待てば食べられるらしいが、
鍋で1分煮込めばさらにおいしく召し上がれますという一文を見たので、
素直に小鍋で煮込んで完成させた。
麺がツルツルシコシコして美味しかった。
出汁もやさしい味でちょうどよい。
具はきのこのほかに、ネギとワカメがついていた。
きのこ好きとしては、もっときのこが食べたくなるが、いろいろこれが絶妙な量なのに違いない。
京都の老舗「一休堂」の七味唐辛子もついていた。
せっかくだから、これもオンした。
……と、これがまさかの、ちゃんと辛い、かなり辛い七味唐辛子だった。
わが家では七味を使う頻度が少ないので、減りが遅く、なんとなく辛味がとんだ七味を使っているんだなという事実に気づかされた。
そんなわけで、半年近く経過してから実食した「養々麺」は、
「私のお気に入り」にも加わった。お店で売っているのを見かけたら、また気まぐれに購入することにしよう。
そういえば、流行りものにはすぐには飛びつかない性格だった。
こんなところでまたそれが実証されたのだった。