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奈良に行ったなら⑥_行法はぎょうぼうと読む

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日常の中から、エンタメを整理収納目線、暮らしをエンタメ目線でつづります。栗原のエッセイ、つまりクリッセイ。

人生初の「奈良」をエンタラクティブにお届けする短期集中連載。東大寺をマイペースで散策し、二月堂では遠足小学生にほのぼのしたのが前回。

奈良に行ったなら⑤_二月堂でゆるりと愉快と日常の中から、エンタメを整理収納目線、暮らしをエンタメ目線でつづります。栗原のエッセイ、つまりクリッセイ。 短期集中連載_奈良に行ったなら⑤は、二月堂まで散策。見晴らしのいい廻廊で、ほのぼのとしたひとときを過ごした話。...

そのまま階段を下りるかと思いきや、私たちは今来た廻廊を茶店と社務所のある入口まで戻った。
「行法味噌」と書かれた貼り紙を見て、「さっき東大寺ミュージアムの売店にもあった味噌が気になる」と言われ、入口の茶店に置いてあると書かれていたから、じゃあ戻ろうということになったのだ。

お水取りの井戸がある入口そばに「二月堂南茶所 龍美堂」はある。
店先出ていた縁台に座り、自家製あんこのおはぎとお抹茶など、甘味を待っている先客が
2~4名ほど。
私たちは店の中に入り、味噌についてたずねた。

それは、二月堂のここでしか作られていない味噌だという。
直感でこれは買うぞと思って、ケースの中のサンプルをのぞき込むと、
「試食されますか?」とお店の方に声をかけていただいた。
「え、いいんですか?」
こういうの、コロナ禍になってからめっきり減ったから、ちょっと嬉しい。

そして、試食=きっと買う だけど、すでにこの段階で、店に戻る=ほぼ買う
だった私たちはその試食をありがたくいただいた。

爪楊枝でペロリといただいたそれは、甘じょっばくて「間違いない」味だった。
あたたかいご飯に乗せて食べたり、きゅうりなんかのお野菜につけてもいいという。
それぞれいくつ買おうかな? 近々会う人って誰だっけ?と指を折りながら、
一番小さいサイズの「行法味噌」いくつかずつ注文した。

広目天のクリアファイルにつづいて、またまた渋いお土産を手にしてほっくほくだ。
店を出る時に、念のために聞いた。
「これは行法味噌(ぎょうほうみそ)と読むんですか?」
「行法(ぎょうぼう)といいます」
「ぎょうぼうみそ……聞いてみて良かった」

「行力がつくと言われてますので」
「ぎょうりき?」
修行して得る力のことを行力(ぎょうりき)というのだそうだ。

帰宅して、わが家用を開けてみた。
「東大寺免許 お水取 行法味噌」
あれ以来、ぎょうぼうとかぎょうりきという響きが気に入って何度も口にしている。
濁点は強いんだよね、なんとなく。

中に入っていた「行法味噌由来記」を読むとこうある。

二月堂でのお水取は、東大寺開山いらい千何百年の間、一度も途絶えたことのない秘法。
荒行に励む僧侶たちがこの味噌で「行力」を増されるといわれるそう。

この味噌の材料は、豆みそ、米みそ、大豆、牛蒡、胡麻、砂糖とある。
うまくないわけなかろう。

初めての奈良で、いいものを得た。
一、このままあたたかい御飯にかけて
一、お茶漬けに
一、こんにゃくやなすびの田楽に
一、きゅうりや冷ややっこにのせて
一、ふろふき大根に
一、パンにつけて
一、お酒のおつまみに

殊に毎朝食膳の少量は、食欲を増し一日の活力のもとにもなります。

とある。
食欲をこれ以上増す必要は個人的にはないのだが、大仏を見て、四天王を見て、鹿と目があって、二月堂に上がって、行法味噌を土産とす。
なんともいい流れに、この日何回めかの「来てよかったぁ」をつぶやいた。

さあ、そろそろ東大寺を出て、次に向かうのは?
(つづく)

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