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山梨まったなし②_やさしいナンパにホクホク

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日常の中から、エンタメを整理収納目線、暮らしをエンタメ目線でつづります。栗原のエッセイ、つまりクリッセイ。

高校生からのつきあいの友人との山梨旅を短期集中連載。秋の景色を堪能しながら、エンタメを楽しんだという話が前回。

山梨まったなし①_道標と星標日常の中から、エンタメを整理収納目線、暮らしをエンタメ目線でつづります。栗原のエッセイ、つまりクリッセイ。 友人との1泊2日の山梨旅の様子を短期集中連載。その①は、勝沼ぶどう郷駅からぶどうの丘ホールまでの秋模様のお話。 ...

石和温泉駅へ移動するための電車の時間まで約50分。歩いて駅に向かいつつ、朝からコーヒーを飲んでいなかった私のリクエストで、駅の近くにあるはずの「Katsunuma縁側茶房」へ向かった。

左に行けば勝沼ぶどう郷駅、縁側茶房へは小道をまっすぐ行くような案内看板が出ていた。
「こっちでいいんだよね?」と言いながら、少し下っていると、1台の車が私たちの横で停まった。
地元の方らしいお母さんが運転席の窓を開けて私たちに声をかける。

「駅に行くの?」
「あ、そうです」と私たち。
「乗っていきます?」
「あ、でも電車の時間まで少しあるので、縁側Cafeに行こうと思って……こっちであってますか?」
「あぁ、縁側Cafeはここをまっすぐ行って、突き当ったら右に曲がっていけばいいよ」
「ありがとうございます」

近いですか? とかも聞いたかしら。
とにかく、道は合っているということと、駅は割と近いのに、見知らぬ2人組を乗せて行ってくれそうだったことに、私たちは感動していた。
その車の主さんは、さらに「縁側Cafeまで乗せて行こうか?」まで言ってくれたけど、
「いやいやいや、そんな……。大丈夫です。ありがとうございます」
と丁寧に断わって、ホクホクしながら歩き出した。

するとその車は、私たちの横を過ぎてすぐの家の敷地に吸い込まれていった。

えーっ、自分の家を通り過ぎて駅やCafeに送ってくれようとしたの?
親切が過ぎるって……。
たしかにアップダウンはある道だけど、
たしかに1泊2日の荷物+すでに少しお土産を買ってバッグが重そうに見えたかもしれないけれど、それにしたって親切すぎる。ホクホクが止まらない。

そこから教えてもらった通りに歩いていくと、まあまあ下がったところに「Katsunuma縁側茶房」はあった。
大きな庭がある民家で、何やら先客もいる感じ。

近づいて最初に告げた。
「17:18の電車に乗るんですけど、間に合いますか? 無謀ですかね?」
時間は16:30を少し過ぎた頃だった。
「何を召し上がりますか?」
「あ、コーヒーを!」
「2人とも?」
「はい」
「じゃあすぐ淹れるね」

そういって奥さんは、お家の中(厨房?)に向かって、
「コーヒー2つ! 5時15分の電車に乗るんだって」
と急ぐ理由を伝えてオーダーを通してくれた。

縁側茶房には、デザートなど魅力的なメニューも並んでいたけれど、時間のことも宿に着いてからの食事のこともあるから、ここではあくまでもコーヒーをセレクト。
メニューの中には、ワイン飲み比べみたいなものもあった。

実を言えば、すでにぶどうの丘でちょっとだけワインは試飲していたので、
これもここではスルー出来たわけ。

縁側茶房の名の通り、長い縁側にそってテーブルが何卓か置かれている。
客は縁側に腰かけ、庭を眺めながらまったり出来るのだ。

日が暮れて、ランタンが灯されていい雰囲気。
何より、風が気持ちいい。
すぐにコーヒーが運ばれてきて、私はようやくその日初めてのカフェインにありつけた。
水がいいのだろう。コーヒーもコップの水もとても美味しい。

駅まではここからまあまあ登り坂になる。走ったりなんて到底出来ないので
時間に余裕をもって店をあとにすることにした。
お店の方も「そろそろ時間かな?」なんて言ってくれて、本当にフレンドリー。

私たちが帰ると、残るのはそのお宅のご家族だけになるみたいだ。
滞在時間はわずかだったものの、なんだかほっこりあたたかい気持ちになった。
駅で缶コーヒーで紛らわせて「これじゃない」感を抱かず、Cafeに足をのばした私たち、
グッジョブ!

勝沼の方々の親切に触れて、気分的にはほろ酔いで、本日のお宿に向かった。
(つづく)