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ヒビがいっても、欠けてしまっても。

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日常の中から、エンタメを整理収納目線、暮らしをエンタメ目線でつづります。栗原のエッセイ、つまりクリッセイ。

「カップ&ソーサーのカップだけが壊れてもソーサーが捨てられない」
これは整理収納の学びはじめ、捨てられない原因の際に取り上げられる例だ。

そうだ、私は整理収納アドバイザーだ。壊れたら捨てることができる……とも限らない。
実は結構な期間、夫のコーヒーカップが捨てられなかった。
数年前の年始に、気に入ってペアで買ったコーヒーカップで、
間違いなくほとんど毎日使ってきた。

夫のは空色、私のは黄色。どちらも少しくすんだ色で、使い続けるうちに貫入が入っていい味が出ていた。

ある時、夫がコーヒーカップを落とした。が、割れなかった。
食器カゴの中でほかのものとぶつかってコツンとなった。でも割れなかった。
コーヒーカップにはうっすらと縦にヒビが入ってきて、だましだまし使っていた。
もうしばらくすると、またもカップを洗っている途中に「あっ!」となり、フチが欠けた。
でもまだ割れはしなかった。

年末に新しいカップを買って、年明けからはその新しいものを使おうと話していたが、
なかなか一緒に買い物に出る機会がないまま、日々が経過してしまった。
毎朝淹れてくれるコーヒーは美味しく飲むことが出来ていたが、
くすんだ空色のカップをみるたびに、ヒビが深くなっているような気がして、
コツコツと叩くと間違いなく鈍い音がした。

そんな話をアドバイザー仲間にしたのは3月だったろうか。
「新しいの買ってあげてください」
おっしゃる通りなのだが、確実に毎日使うものなので、互いに納得したものを購入したいという強い思いがあった。

ネットで各地の窯のサイトなどを見ては、「こんな感じがいいよね」「これだとちょっと大きすぎるかも」とチェックはしていたものの、ポチッと購入ボタンは押せずにいた。
というのも、以前、湯呑をネットで購入したことがあったのだが、
デザインや色は良かったものの、あまりにも薄く繊細で、日常で使うにはとても扱いにくかった。そのため、あまり出番がないままになってしまったという苦い経験があるのだ。

出先でカップを探すこともあったが、私が買っていって気に入らなかったらそれこそもったいないなと思う。
だから、慌てて購入せず、納得したものが見つかるまではこれで凌ごうということになっていたのだ。
もちろん、毎日気にはなっていた。「漏れたりはしていないよね?」とチェックも欠かさなかった。

月日が流れ、先日、ようやく購入することが出来た。
大きなショッピングモールの雑貨店を何店舗か見て回る。
幸い、コーヒーカップに求めるデザイン、サイズ感、手触りなどは夫婦で共有出来ていたので「これじゃないね」「こういうことじゃないんだよね」がぶつかることはなかった。

「これは一応、今のところ候補ね」とキープにした店をあとにして、
ショッピングモールの端のキッチン雑貨ショップまで進んだ。
そこでようやくデザインもサイズも手触りも気に入るものが見つかり、色違いで購入することが出来た。

最初のヒビが入ったところからどのくらいの月日が経過したことだろう。
そうしてあたらしいコーヒーカップでのコーヒーライフがはじまった。

夫の欠けたコーヒーカップはすみやかに燃えないゴミの待機場所へ。
で、私が使ってきたコーヒーカップはどうしたかというと……。
今、ミルクティーが注がれた状態で、仕事机の上に置いてある。
わかってる、これを使うなら、これまで使っていたあのマグカップは押し出し方式でサヨナラするよね。まったく壊れていないけどね。
さあ、どうする? どうしよう。

これだからモノとの付き合いは難しいのだ。