日常の中から、エンタメを整理収納目線、暮らしをエンタメ目線でつづります。栗原のエッセイ、つまりクリッセイ。
夢のようなあの一夜からたった一年しか経過していないのかと驚くけれど、再び夢のような一夜を迎えた。
夢というか輝く現実、みたいな表現の方がその夜には似合う。
1枚で申し込んだBLUENOTE TOKYOのLIVEにも、友人と行こうと2枚で申し込んだLDH Kitchen THE TOKYO HANEDAでのLIVEにも落選し、愛が足りてないのだわとただただ反省していた。
そこへありがたい追加公演のお知らせ。今度はちゃんと当選して、襟を正してこの日を迎えた。
今日はこの件に関して、互いの熱量をよくよく知っている友人と一緒だ。
開演前に別のお店でビールを一杯飲む。
LIVEはオリジナルプレート+1ドリンク付きで当選しているから、おつまみなどは頼まず、ただただエネルギー注入というところだろうか。
観劇の前はアルコールを摂取しない。これがLIVEとの違いというのはマイルールだ。
事前チェックの通り、よき雰囲気の会場、その中のよき場所が私たちの席で、6名席で1テーブルのかたまりだ。
2人×2組は先に席に着かれていて、オリジナルプレートを前に乾杯するタイミングだった。
「あとで2回目の乾杯、ご一緒させてくださいね」
そんな風にご陽気に声をかけて、私たちはビールを飲みながらプレートを待った。
目の前に運ばれてきたのは想像よりはるかに美味しそうなワンプレート。
実は事前に写真でメニューを見ていたが、「ん?」なんかちょっと寂しい感じ? と気になっていた。
(失礼だが)ただ単に写真のクオリティが残念だったのかとも思う。
本日2杯目のビールで、2人×2組の皆さんと乾杯した。
基本的にファンクラブ会員がほとんどの席だし、年齢層も近そうだからいろいろなリミッターは外れている。
互いの居住地やLIVE参戦歴を話したりしながら開演までの約1時間弱を楽しく過ごした。
「何を歌ってくれたら嬉しいですか?」
すでにBLUE NOTEでのLIVEに参戦し、セットリストを知っている友人がニヤリとするのを横目に見て、今日初めてこのアーティストのLIVEを見るという方や、同じ年にファンクラブに入会していた方などに話を振った。
それぞれに思い入れがある曲があって、その理由がある。それを事細かにインタビューするわけではないけれど、
「それもいいよねー」「それ来たら泣いちゃうよねー」みたいなノリで開演がますます楽しみになるのだ。向かいで友人がまたニヤリとして、2人共大好きな曲の演奏がありそうなことをうっすら予告してくれた。
小瓶のビールを飲み終え、LIVEのオリジナルカクテルにパイナップルが入っていないかを確認してから追加注文した。
ブラジルの国民的カクテル“カイピリーニャ”をアレンジしたオリジナルカクテルだそうで、ベリーが何種類か入って甘さと酸味を感じる。
カクテルの名は「in the Rio mood」
リオデジャネイロ気分で……ってことだ。ちなみに、グレン・ミラーの曲ではなく、めちゃくちゃメロウ&セクシーな♪in the moodという曲が彼のアルバム収録曲の中にある。
LIVEが始まるのはもう間もなくだ。
私がオーダーしたそのカクテルを見て、テーブルの方が追加注文した。ノンアルコールタイプもあるので、追加注文しやすいのもさすがな感じ。LIVEのMCできっとこのカクテルの紹介もするだろうから、その時はグラスを掲げてアピールしよう!実はそんなことも思って、このテーブルのノリの良さに早くも少し酔っていた。
余談だが友人は甘いものが苦手な根っからの……な人なので、彼女は引き続きビールで。
でも「私だけカクテル頼んでない……」と、それをちょっと気にするところがまたいい。
そしてLIVEが始まった。「Bossa &Lovers Rock Night II」
久保田利伸さんが、ボサノヴァとラヴァーズロックをバンドを従えて心地よく歌う夜だ。
ちなみにラヴァーズロックとは、いわゆるレゲエのサブジャンルのこと。コロナ禍でコール&レスポンスが出来ない時期に、それでも音楽に心地よく身を委ねられる策はないか、そうだ! ボサノヴァとラヴァーズロックがあるじゃないか! でこの心地よいLIVEが実現し、今回は第二弾なのである。
それがどんなに心地よい夜であったかは、ここには細かく書かない。でもゆるく音に身を委ね、マスクを外してお酒を飲みつつ、程よくヒューヒュー言いながら音を楽しむのは格別だった。
例のカクテルは予想通りMC内で紹介があったので、久保田さんの目線にちょうど入りやすいテーブルの私たちはちょっとサクラのようにカクテルの入ったジャーグラスを「飲んでるよー」と掲げた。
手を挙げた場面がもう一回。それはこのLIVEに合わせてボサノヴァの生まれた地、ブラジルに行ったことがある人はいますか? の後のことだ。
ちなみに、羽田の会場に集ったこの回の久保田ラヴァーの中にはブラジルに行ったことがある人が何人かいた。さすが!
続いてラヴァーズロック、レゲエの国、ジャマイカに行ったことがある人は?
キタキタキター。肩を脱臼するほどの勢いでまっすぐ手を挙げた。こちらも何人かいて、同じライン上に手を挙げた方もいたので、どこの町に行ったのかという語りかけの対象外ではあったが、事情を知っている友人はしっかり目配せをくれた。
私は初めて行った海外がジャマイカ。そしてその理由は間違いなく今、目の前にいるアーティストに影響を受けてのことだった。四半世紀以上前のあの頃の自分に乾杯!
そうして心地よい時間はあっと言う間に過ぎた。ホールやLIVE会場でのコンサートに比べると半分にも満たない時間だが、一流のミュージシャンたちによる極上の夜に、心はしっかりと満たされた。
同じテーブルの方たちとステージをバックに写真を撮ってもらったりもして、またいつかどこかの会場で!と別れた。
羽田という場所がそうさせたのか、彼が持つピースフルなマインドがそうさせるのか、まあまあな歳月を重ねた私達自身がそうしたのか、
そのどれもが溶けあってまるで旅先で出会ったような時間と気分。
そうそう、開演前になんの曲が聴きたい? と話した時に出た曲も披露された。
そのイントロがかかった瞬間に「やったね!歌ってくれるじゃん!」そういう気持ちになったのは私だけじゃなかった。
私と友人が大好きな曲も歌ったし、なんとあの曲も!! とイントロで分かった瞬間に髪の毛をグシャッと興奮して掻きむしることもした。(あ、ちなみに♪Missingではありません)
いつも「私のためのセットリストじゃん!」と思う。
当然かもしれない。彼の曲はもう何十年もどの曲だってたいてい好みなのだから。
このセットリストで聴くのは2度目なのに友人は結構な勢いで感激して泣いていた。
私といえばなんだかずっと笑っていて口角があがっていたし、酔っていた(もちろん音楽に)。
ものごとに対峙するのではなく、寄り添うように生きていたい。そんなふうに改めて思えた羽田の夜だ。