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「家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった」に観る整理収納

ひつじのまなざし07
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ドラマの中には暮らしや整理収納のヒントがあふれている。
あのテレビドラマのシーンから整理収納のプロが分析・解説する!?
ちょっとニッチなドラマレビュー。

小さなころからテレビドラマが大好きです。
妄想癖がある私は画面を見ながら自由自在に思いを巡らせていました。
整理収納アドバイザーになってからは
そのシーンや内容は「整理収納」とリンクしても楽しめるようになりました。
今回私が取り上げるドラマは、河合優実さん主演の「家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった」です。
原作は岸田奈美さん。以前 note*1 でエッセイを拝見してからずっと気になっていた作家さんで、溢れるユーモアと優しさ、力強い生き方が素敵だなあと思っていました。
実はこのドラマは昨年度BSで既に放送されていて受賞歴もあるドラマなのですが、今回地上波で放送されてやったー! です。

河合優実さんは今年 1 月クールの連続ドラマ「不適切にもほどがある!」で阿部サダヲさんの娘役で知った女優さんで、一気にファンになりました。
百恵ちゃんを彷彿とさせる三白眼と何とも言えないセリフの間合いがツボです。
他にも不適切には……では河合優実さんの夫役だった錦戸亮さんが、主人公の亡くなった父親役で出演していたり、近所のコンビニの親切な店長さん役に現朝ドラで小橋役(あの髪がそら豆のようにぴょんとなった寅子の同僚)の名村辰さんが出演されていたりといろいろな見どころがたっぷりです。

高校生の岸本七実(河合優実)はダウン症の弟 草太(吉田葵)と母 ひとみ(坂井真紀)の 3 人暮らし。父 耕助(錦戸亮)は中学の時に急逝しているが、「東京に行っている」と思い込むことで3人で明るく生きてきた。
そんな時、母のひとみが病に倒れ、車いすの生活になってしまう。
入院とリハビリの中、生きる希望を失ってしまう母。進路を考える時期にダウン症の弟とマイペースな祖母との生活が始まった七実は独創的なユーモアと行動力で自分の道を見つけていく。
そしてそれはやがて家族にも変化をもたらしてゆくのだ。

笑顔へのボタン

ダウン症であることでひとみは草太の事では心配性になってしまいます。
草太が万引きしたのではないかと疑った時も(結局万引きではなかったのだけれど)
「お金もないのにコンビニには行ってはダメ」と話します。
そんな時に七実は逆にお金を持たせて買い物をさせてみてはと提案します。
「無理と思うことも信じてやらせてみたらできるはず」と。
そんな風に七実は「できない」を「できる」に変換できるボタンがあるみたいです。
いや「できる」までいかなくても「やってみる」のボタンはきっとありそう。
そしてそれは、きちんとやり方を教えて、見守って、一緒に喜ぶところまでがワンセットになっていることで、最後は笑顔で終われるのです。
七実に関しては絶大な信頼を置いているひとみ。 でも高校生とはいえまだ甘えたい時もあるはずで、頼りにされていることが分かる分、ひとみには心配かけまいと踏ん張る姿がいじらしくもあります。
特にひとみが倒れて後、初めて外出許可が出た場面では、張り切って素敵なお店へ連れてい
きたかった七実の行く手を様々な障害(段差、人込み、坂)が塞ぎます。
私のせいと謝るひとみに「2億パーセント大丈夫!」と言う七実ですが涙する母を前に「一緒に死のうか」と話します。でも七実も泣きながらこう言うのです。
「ちょっと時間ちょうだい、ママが生きたいって思えるようにしたいのや、私」。
大好きなドラマの「泣きながらご飯を食べたことがある人は生きていける」というセリフを思い出しました。
ひとみと七実は泣きながらパスタをほおばって、そして笑います。
もうダメかも……と思っても何かまだできる事を探していく。最後は笑顔になるために。
岸本家はボタンを押すのは七実で、それを家族皆のユーモアと思いやりで笑顔のゴールに繋
いでいるように思います。
そしてしっかり食べてる! これ大事です。

居心地の良い空間ってどんなん?

岸本家のリビングダイニングは長方形です。中央にサイドボードを置くことでリビングとダイニングに空間を分けて使っています。収納で空間を仕切るのは効率的ですし、高さが低いので圧迫感がありません。
全体的にモノが多いですし、壁にモノを貼ったり下げたりが多いのと、基本的に壁紙も含めて色味がカラフルなので一見まとまりなく感じますが、よく観てみると、ゾーニングはできているようです。
例えばリビングの一角が草太スペースになっています。そこは寝床にもなっているようですし、草太のリュックや身の回りのものや作品などもまとまっています。
そして草太だけは亡くなった父 耕助とコミュニケーションがとれるようなので(ひとみと七実は知らないかもしれません)、耕助の位牌のあるリビングに草太の場所があるというのもちょうどよい配置だと思います。
広い空間を使う場合はその人のコーナーを作ることで、1部屋持っていなくてもそこが居場所になりますし、モノもそこに集まってくるのであちこちに散らかりにくくなります。
忙しい岸本家なのでパソコンのディスプレイやダイニングの椅子などに大抵服がかかっていたりします。でも、私はあの黄色いソファに座ったら間違いなく秒で寛げる自信があります。
それは「心地いい」に決まっているから。心地いいは人間が作りだすものだと思います。美しく整った空間に必ずしもならなくても、「心地いい空間」はそこにいる人同士の関係性がとっても大事。 私も岸本家を見習って心地いい家族との関係を日々紡いでいきたいものです。
それにしても気になるのはまあまあな存在感のキャットタワー。
猫の姿は今のところ見られないところを見ると、「思い出の品」なのだろうか?
それとも猫も父親同様どこかへ行っているということなのか?

*1 note 岸田奈美/NamiKishida

文・みのわ香波
ひつじPlanning主催 整理収納アドバイザー。
ドラマを観る時は「ながら観」はせず、できれば一人でじっくり派。
登場人物の観察からの妄想がルーティン。
ドラマは「暮らしを切り取ったもの」、整理収納は「暮らしそのもの」
「映画に観る整理収納」「ドラマに観る整理収納」(ブログ専用ver)はひつじPlanningのちょっとずつお片付けでゆるっと掲載中。
家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった
放送:NHK 毎週火曜 よる10時~
原作:岸田奈美
出演:河合優実、坂井真紀、吉田葵、錦戸亮、美保純、福地桃子、奥野瑛太、根岸季衣、片桐はいり、臼田あさ美、岡野陽一 ほか