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さまよえる古道具屋の物語 / 柴田よしき

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アトリエM_こばやしいちこによるオリジナルブックレビュー。たくさん読んだ本の中から、読者におすすめの一冊をご紹介します。

さまよえる古道具屋の物語 / 柴田よしき

いつも通っている、よく知っているはずの道に、その古道具屋は突如現れる。こんなお店、あったかしら。新しいお店?でも、店も古びているし、周りにもなじんでいるし、私が気付かなかっただけで、ここにこんなお店あったかも……と思わせる店構え。ついつい入らずにはいられず、入ってしまうと、店主も風変り。男のようで、女のようで、30歳と言われても、70歳と言われても納得。笑っているようで怒っているようで、この店主と会った人が共通して思うのは、まるで、漫画の忍者ハットリくんのようだ、ということ。ぶっきらぼうで、ちょっと怖い古道具屋の店主。

別に買うつもりもないのに、ふらふらっと入ったら、驚くほど心地の良い椅子に座らせられて、うっとり。まるで身体が吸い付くよう。お金がない、こんなところで無駄なものを1円でも買ったらだめだ、とわかっていても、「あんたに必要なものはこれだろ?」と店主に言われて、ついつい財布を開いてしまう。いわれる金額も、なぜか、財布に入っていたお金ぴったりの金額だったりする。

お店が出現するのも、さまざまな場所。必要な人の前に、必要な時に、必要なモノを携えて、その古道具屋は出現する。
誰かにとってのガラクタが、他の誰かにとってはとても必要な物だったりする。また、その必要なものも、使い方によっては本人のためになったりならなかったり。要は本人次第。

印刷ミスとしか思えない本、お金を入れるところのない貯金箱、ポケットに穴の開いたエプロン、壊れたバケツ・・・様々な人が、様々な場所で、この古道具屋に出逢い、ガラクタとしか思えないものを買う(買わされる)。

このちょっと怖い古道具屋の店主が、乱暴な口調で、迷える人たちに教訓めいたものを与えてくれる、不思議な連作短編集、だと思っていた。途中まで。

なんだか風向きが怪しいぞ。古道具屋の店主が、なんだか気味が悪くなってくる。この店主にかかわったある人は、「この世のものではない」「悪魔のようなものだ」と、恐ろし気に言う。邪な心がある者に、あの店主はつけ込み、不幸の連鎖を起こすのだと。そんなつもりで読んでいなかった私は、心を揺さぶられっぱなし。最後は、「どうなる?どうなるの?」と、先を急ぐように読んだ。

そしてさらに、ちりばめられた伏線のようなエピソードの謎がとけ、すべてがつながる。ちょっと切ない物語だ。

もう何年も前のこと。職場の近くに、小さな小さなアンティークショップがあった。入っても、いらっしゃい、と、小さな声で声をかけてくれるだけで、全然商売っ気がないので、こちらは遠慮なく物色できた。人通りがあった道なのに、あまりお客さんが入らないのも、秘密めいていて良かった。でも、あるときふっと、消えるように、とは言わないけど、お店が無くなってしまった。もしかして、あの時の私に必要だったから、あのお店は私の前に出現したの?!

たぶん、単なる閉店だけど・・・だと思うけど。ちょっと、この本を読んで、あのお店を思い出した。

そこで買ったローズクオーツのペンダントは、わりと今でも身に着けている。

文・こばやしいちこ
小さな頃から本が好き
映画が好き
美味しいものが好き
おせっかいに人に勧めたがり
愛犬・さくら(黒のトイプードル)を溺愛しながら、
毎日なにかしら本を読んでいます。

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