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ブルーもしくはブルー / 山本文緒

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アトリエM_こばやしいちこによるオリジナルブックレビュー。たくさん読んだ本の中かにおら、読者すすめの一冊をご紹介します。

ブルーもしくはブルー / 山本文緒

あの時、ああしていれば、どうなっていただろう? 今の人生とはどう変わっていただろう? 誰もが一度ならず考えたことのあることだ。

あの時、彼と結婚していたら、していなかったら。河見と佐々木、2人の男性の間で迷う、なぁんて羨ましい悩みに悩まされ、迷って、佐々木を選んで結婚した佐々木蒼子。

蒼子は、旅先の福岡で、自分とそっくりの女性を見かけた。いや、最初に目に入ったのは、自分そっくりのその女性の隣に寄り添っている男性の方だ。彼は、昔、蒼子が付き合っていて、どちらを選ぶか死ぬほど迷って、選ばなかった方の男性、河見だったのだ。思わず追いかけてしまい、女性の方に気づかれてしまった蒼子は、その女性が、自分とそっくりだということに愕然とした。そっくりだというレベルではない。髪も、肌も、声も、「同じ」なのだ。愕然としたのは佐々木蒼子だけではない。河見と一緒にいた、そっくり蒼子にも、自分たちが「同じ」であることが瞬時にわかり、やはり愕然としたのだ。彼女は、数年前に佐々木蒼子が選ばなかった河見と結婚して、河見蒼子として、福岡で暮らしていたのだ。

どうやら、2人の男性の間で死ぬほど悩んだあの時、蒼子は、もう1人の蒼子を生み出してしまったようなのだ。

佐々木蒼子と河見蒼子。お互い、結婚相手にちょっと思うことがある。不満がある。あの時、あの彼を選んでいたら、もっと私、幸せだったのかも。あの選択は正しかったの? あなたは今、幸せなの? そんな思いを隠して、2人の蒼子は、入れ替わってみることにした。お互いの夫、生活を交換してみることにしたのだ。

最初は順調。何もかもが面白かった。もう1人の自分、という双子のような、分身のような存在を手に入れたのだ。やってみたいことはたくさんあった。しかし、いろいろなことが明らかになるにつれ、それぞれに問題が出てくる。お互いが、自分が本体だと主張し、分身のはずの2人が、いがみ合う。ファンタジー小説だということを忘れて、この2人の女のひりひりするやりとりに引き込まれてしまう。どちらかが消えるのが正しいのか?

誰を選べば幸せになれるのか? どんな人ならピタっと相性がいいのか、分かればいいのに……。結婚って、人生って難しい。

私がまだ、離婚したての時期、親戚が亡くなり、お葬式に出たことがあった。そこにはあまり接点のない親戚もけっこう来ていて、「誰?」みたいな人もチラホラいた。その中の1人の年配男性が、私が離婚したことを誰かに聞いたようで、
「なんだぁ? 離婚したんだってぇ? どうしたんだ? 理由はなんだぁ?」
と私に絡んできた。(お察しのとおり、アルコールが入っていたようです)

「(この人、誰だっけ?)はい、性格の不一致で……」
と答えた私に、
「なんだよ、性格が一致することなんてあるのかよ。ゴニョゴニョ……」
と、要は、そんなことで離婚するなんて、こらえ性がない的なことを言ってきた。

「はい! 性格がピタッと一致することなんて、ないって、もちろんワタクシもわかっております。ただ、たいして親しくもないのに、不躾に、無神経に、興味本位で離婚理由を聞いてくるような酔っ払いの方には、『性格の不一致で離婚しました』と答えるようにしておりますので!」

……と、心の中で怒鳴った。オトナですから。私も。親の立場もありますし。
実際は、薄笑いのような愛想笑いを浮かべてその場を後にしましたとさ。

文と写真・こばやしいちこ

小さな頃から本が好き
映画が好き
美味しいものが好き
おせっかいに人に勧めたがり
愛犬・さくら(黒のトイプードル)を溺愛しながら、
毎日なにかしら本を読んでいます。

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