日常の中から、エンタメを整理収納目線、暮らしをエンタメ目線でつづります。栗原のエッセイ、つまりクリッセイ。
良く晴れた週末の横浜の夜。
軽く食事をしようと眺めの良さそうな店に入店した。
デッキのテーブルには数組、店内にも数組の客が入っていて、それなりに混雑している様子だった。
デッキには空いているテーブルがひとつ。
お皿を下げれば空くテーブルがひとつあった。
ならば待たずにすぐ入れそうだと、その店に決めた。
空いている席を指して3名ですと店員さんに告げると、先客があるので順番にご案内しますので、中でお待ちくださいと言われた。
はーい、そうします。と思いつつ、気持ちのよい気温だったこともあり、デッキを希望した私たちは、その場に少しとどまっていた。
先客が空きテーブルに案内され、私たちはお皿を片付けた後のテーブルに案内されるようだ。
先に案内されたお客さんが、「テーブル切り離して使ってくれてもいいですよ」と気を効かせて店員さんに申し出てくれたが、
「それはお断りしています」と小柄で短い髪を二つに分けて結んでいる店員さんはピシャリと言った。
考えてみれば店員さんが正しい。
順番に案内すると言っているのだし、下げてから案内してくれるのだから、私たちも焦れていたわけではない。
でも、ちょっとそのピシャリの感じが冷たかった。
さらに店員さんは「中でお待ちください」と私たちに再度言う。
考えてみれば店員さんが正しい。
入口で待たれていては妙にプレッシャーだし、周りのお客様からの印象も良くない。
私たちは言われた通り、中の待合椅子で待つことにした。
軽く言い訳をすると、デッキ側から入店したので、待ち合い椅子が店の奥にある格好だったため、すぐにそちらに移動しなかったのだ。入口、わかりにくかったのだもの……。
しばらく待って、さきほどの席に案内された。
飲食店は大変だ。お皿を下げ、次の客を案内する前にやることは、コロナ禍以後、確実に一工程増えている。
さらにその店は週末のいい時間でありながら、ホール要員が少ないようだった。
美味しそうなパスタメニューを迷いつつ、楽しみつつオーダーを終え、しばらくすると
乾杯用のシードルとジンジャーエールが運ばれてきた。
先ほどの店員さんだ。
「瓶をこちらで開けてよろしいですか。よろしければ、蓋を先にお下げしますので」
感じ良くそんな風に声かけしてくれたので
「お願いします」と私たち。
そこでいつもの、おしゃべりが出る。
私「忙しそうですね。お店が広いから大変そう」
店「そうなんです」
少しおどけた表情で、店員さんが答えた。
私「今日は天気も良くなったし、週末だからすこく忙しいんじゃない?」
友「頑張って」
店「ありがとうございます。でもこの仕事好きなので」
私「素敵、すばらしいわ!」
言葉の記憶はやや曖昧だが、そんな感じで反応してくれた。
そっかそっか、好きなのか……いいことだ。
そんな風に言えるって、清々しいし、なんかこちらも嬉しい。
さっきの感じ悪い? のはもう忘れるね。
いや、考えてみれば、さほどというか、全然感じ悪くなかったんだよね。きっと、多分。
この後、料理が運ばれてきた時も、お皿を下げる時も
彼女はとても明るく、感じのよい対応でサービスを続けてくれた。
「あー、マジで今日、疲れたけど、いい仕事したわー!」
と彼女がバイト終了時の更衣室で言葉を発したかどうかはわからないが、
そうであったらいいなと思う。