理由あって週イチ義母宅 PR

本能にさからえない

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理由あって週イチ義母宅に通っている。
これは、主にその週イチに起こる、今や時空を自由に行き来する義母とその家族の、
ちょっとしたホントの話だ。

食欲があるということはなんとすばらしいことだろう。
そう目を細めるだけでも十分なのだが、
義母宅に週イチで通う生意気な私は、ただ目を細めてはおらず、
眉をひそめたりもする。

買い物から帰ってきても、義母はベッドに横になっている時間が長い。
室温がエアコンで程よく保たれているので、満腹で眠かったのだろうか。
新聞も最近は大きな見出ししか読めなくなった。

私と言えば、久しぶりにナスの煮びたしやら、つくねハンバーグやらおかずのストックを
黙々と作っていた。
16時近くになって、スーパーで買ってきたほんの小さなふんわりとした甘いお菓子と
コーヒーを淹れて休憩タイムにする。

義母に声をかけると元気に返事をして、テーブルの上からそのお菓子を手に取った。
ベッドに横になったまま。
「え、ちょっと! やだ、起きてくださいよ」
私がすかさず言うと、「はい!」とすごーくいい返事をする。

そのまま義母はお菓子の袋を切って開けようとした。
ベッドに横になったまま。
「ちょちょちょっ……。なんで寝たまましてるの。ちゃんと起き上がって、テーブルで食べてくれないと」
そう言うと、「うん!」とまたもや「当然そうよ」的テンションで返事をする。

なかなか起き上がらないので、少し語調が強くなる。
ちなみに義母は腰が痛いとか、腹筋が超絶弱っているとか、目が見えないとかではない。
「病人だって寝たままは食べないよ」
「そうだね!」返事はやけに素直で、素早い。

ようやく起き上がったと思ったら、そのままベッドの上でつづけて包みを開けようとするから、その先も何度が同じことを言って、ようやくテーブルに向かってもらった。

ちょっとバツが悪かったのか、心からの本音かはわからないが、
「これ、とっても美味しいね!」を連発する義母。
「そう?そうだね、美味しいね。よかったわ」と繰り返す私。
おやつ的にはすこぶる安い価格の部類なので、これでそんなに喜んでくれるなら、
別に言うことはない。

それから約2時間後。
夕飯を普通に食べ終え、毎週恒例、後片付けは義母に頼む。
洗いが甘いと困ってしまうようなものは、先に私が片付けておく。
それでも義母の洗い物パートを残しておくことは、たぶん、きっと、義母にとっていいことだと思っている。私にも。

帰り支度にすんなり移れるよう、いくつかの準備を行いつつ、義母の洗い物の進捗状況を気にする。
と、台所から、さわやかな香りが漂う。
今日、私がスーパーで買ってきたミカンの香りだ。
食事の時に一つ出そうかと思ったが、いろいろ「そんなのかんけーねー」だろうなと思い、
あえて食卓には出さず、台所でザルの上に開けて置いておいた。

写真を見て、このミカンはいったいいくつあるでしょう?
というテストをしたくなる。
袋から出した時、ミカンは10個あった。

爽やかな香りに誘われて台所に行き、ザルの上のミカンを数えてみたら、8個だった。
「ん?」
今、まさに口に放り込もうとしているミカンは、すでに2個目だった。

「立って食べないで、あっちの部屋に持って行って、座って食べなよ」
今度はすぐに返事をしない。
「ねえ、お義母さん、立ち食いしないで! お義母さんのために買ってきたんだから、食べていいんだよ。座って食べてちょうだいよ」

「すぐ食べたかったんだよ……」
少し弱弱しい(フリ)の声を出して、義母はそう答えた。
立ち食いする様と、その弱弱し気な声がまったく合っていなくて、
ンンンンーーーーっと思う。

この八つ当たりは夫にするしかなさそうだ。
ミカンが好きなのは親子で共通だから、別にそれはいいけど、
立ち食いってどーゆー教育よ! と。

いっそのこと来週はすべて立食にしてみるかな。
黒い妄想を浮かべながら、今日のお役目を終えた。

明日の朝、ミカンは果たしていくつ残っているか?
夫と賭けをしようにも、二人共0(ゼロ)予想をするものだから、賭けは成立しない。