日常の中から、エンタメを整理収納目線、暮らしをエンタメ目線でつづります。栗原のエッセイ、つまりクリッセイ。
ロゴから何から都会的でオシャレだということは当時、高校生の私が見ても明らかだった。都内の高校に通っていた私は、友人と放課後、表参道散策を計画した。
みたいな、生意気で大人ぶりたい年頃だった。
フランスモチーフが大好きだった友人と、隠れ家的な場所にある雑貨屋を巡ったりしながら、
ホテルのラウンジみたいで、いやそもそもホテルのラウンジなんて知らなかったけど、
制服の高校生でも丁寧かつ紳士的に席へ案内をしてくれたのがなんだか誇らしかった。
メニューを開くと、高校生のお小遣いではドキドキする値段のドリンクが並んでいた。
ケーキも頼むことが出来たっけ?
私たちは、アップルティーを注文した。
今でこそ大のコーヒー党だが、あの頃は友人の影響もあって、紅茶やハーブティーにハマっていた。
なんだかいちいち蒼いけど。
アップルティーが運ばれてきた。
銀のトレーに浅いティーカップ、フレンチプレスのポットとティーストレーナー、そして小さな小皿に乗った小さくカットされたリンゴ。
小声で二人で確認した。
「これは注いだ紅茶に浮かべればいいんだよね?」
「レモンティーのリンゴバージョンだよね?」
ドキドキ、キョロキョロしながら、周りを確認してもアップルティーの飲み方の正解はわからなかった。
このリンゴを食すべきか否かもわからず、なんとなく一口だけかじったような記憶がある。
大人の階段を登った気になって、その後、2階にあるスパイラルマーケットでオシャレ雑貨やアートをゆっくり見て、たしかポストカードか何かを買ったと記憶している。
正直なことを言えば、ポストカードくらいしか買えなかったはずだ。
そして実を言えば、この日の私たちはアップルティーの味より、1杯1,000円もするオレンジジュースを半分も飲み残してカフェを出た客がいたことに衝撃を受けて、そのことばかり鮮明に記憶したのだ。
1杯1,000円に驚き、横目で見たそのオレンジジュースのグラスが細くて少ないことに驚き、それを半分も残していた人がいたことに驚いた。なんなら少し怒っていた。
都会とは、何と恐ろしいところだと刻まれたと同時に、
そこに行けた私たちって、なんかセンスあるよね、なんて思っていたはずだ。
私たちはちゃんと最後の一滴までアップルティー飲んだしね、と。
スパイラルカフェは現在もある。
スパイラルホールでの上演前の待ち時間に数年ぶりにカフェに寄った。
行く前は、やっぱり少しドキドキする気がしていたけれど、さすがにドキドキしなかった。
ほんのちょっとのノスタルジーってやつだろうか。