クリッセイ PR

その演出、誰発信?

記事内に商品プロモーションを含む場合があります

日常の中から、エンタメを整理収納目線、暮らしをエンタメ目線でつづります。栗原のエッセイ、つまりクリッセイ。

今年のゴールデンウィークもひっそりと仕事をしている日々だが、唯一といえる行事が一つあった。
父の米寿の祝いだ。
親族11名(うち、姪っ子1名は部活のため不参加)が、地元のしゃぶしゃぶやさんに集まった。

末の娘である私が幹事だ。結果的にわが家から徒歩で行ける店を予約しただけのことだから、大した幹事ではない。
事前に店舗に予約に行った時に、「何かのお祝いですか?」とたずねられた。
父の米寿の祝いであると伝えた。
するとお店の方が、「黄色いちゃんちゃんこ、ご用意しますか?」という。
そんなものがあるのか……。
還暦は赤、卒寿は紫を身に着けるなんて聞いていたが、米寿もあるようだ。

少し考えて「いや、いいです。なくていいと思います」と答えた。
するとお店の方は上品な口調で、「当日でもお貸出し出来ますので、必要でしたらおっしゃってください」と言った。

このことを帰宅してから夫に話すと
「それは当然借りるでしょう」と言う。
記念撮影をするときに身に着けてもらわない手はないと言う。
そ、そうか……。その演出に踏み切れなかったわ、と思いつつ、素直に当日リクエストしようと決めた。

さて、当日である。
個室をお願いしていたので、ゆったりと気楽に宴をスタート。
社会人として忙しく働いている姪も夜勤前の貴重な時間に駆けつけてくれた。

開始早々、個室の担当さんに例のちゃんちゃんこのことを伝えると、
当然のように用意があった。集合写真は、お肉と野菜が運ばれたところで……という段取りとなった。

仕事柄、何か集まりがあると、場を回すことは少なくない。
でも親族の集まりで、鍋もセットされているテーブルは3卓に分かれているから、
あとは食事を楽しめばいいかとあまり気合は入れずにいた。
すると、父が乾杯の後に立ち上がって、スピーチを始めた。
今日の日を設け、集まってくれた皆への感謝と、「あと2年は頑張る」みたいなことの決意表明をした。

あれ、なんかちゃんと準備してきたわけ? と心の中で少し驚く。
しばらくすると、母が切り出した。
「じゃあ、歳が小さい順から、おじいちゃまに一言ずつメッセージを言ってください」
あれ、なんか仕切ってる? そんな台本は特になかったよね。

祖母からのムチャブリにもひるまず、孫たちは祖父へのおめでとうと元気で長生きしてください的メッセージを贈ってくれた。

一人ずつのメッセージに感謝をしながら、父が一言ずつ返すからこのくだりはなかなかの長尺だ。
途中、料理が運ばれてくると中断したりもするのだが、一息つくと
「はい、じゃあ次は〇〇くん」ってな具合で、母が促す。
あれ、やっぱり仕切ってるね?

途中で記念撮影タイムがやってきた。
父に黄色いちゃんちゃんこと頭巾が渡される。
父はなんの抵抗もなくそれを身に着け、白い扇子も持ってご満悦だ。
そして私たち兄弟は言う。父は被り物が似合うんだった。
頭巾がやけに似合っていた。

ここでようやく私からもプチ演出。
祝米寿の文字を大きく印刷したカードを用意していた。
それを手に手に集合写真をお店の人に撮ってもらった。
実はこのカード、これまで祝傘寿バージョンとして使用したことがあったのだ。
え? そのカードをわざわざ捨てずにとっておいたの? と整理収納アドバイザー的には驚かれそうだが、うん、そう、まあ比較的すぐに出せる場所にとっておいたのだ。

撮影が終わると、つづきの食事、そしてつづきのスピーチもしっかりやって、
最後は母の半分愚痴みたいなメッセージで締めた。

それにしてもうちの家族はこんなに演出好きだったっけ?
昼から飲んで、いい気分のまま、ゴールデンウィークのゴールデンなイベントが終了した。