日常の中から、エンタメを整理収納目線、暮らしをエンタメ目線でつづります。栗原のエッセイ、つまりクリッセイ。
名勝 渉成園-枳殻邸を散策した後、スマホ充電のためにカフェでしばし休憩し、
そこからワシワシ歩いて錦市場に向かった。地図で検索するとほぼ直線に徒歩25分くらい。
若干ふらふらと迷って余分な距離をワシワシ歩いた。
お気に入りの新しいスニーカーを履いてきて正解だった。キョロキョロしながら歩きつつ、手元のスマホの地図でパン屋さんを検索した。
というのも、前回、冬に来た時にパンをお土産に買って帰ったからだ。
京都はパンの消費量が日本一だというデータに影響されまくってのことなのだが、
お土産として購入しつつ、なんなら帰りの新幹線で小腹がすいたら食べようか……
そんなつもりだった。地図上にたくさんのパン屋さんがピックアップされた。
錦市場がもうすぐだ……というところまできて、10メートルくらい戻って訪れた店が
壁にキリンの絵が描かれていたお店「汎洛」さん。
店内に入ると、平台に10種類ほどのパンが並んでいた。午後2時も過ぎていたので、売り切れているパンも多かったのだろう。
冷蔵ケースにはサンドイッチ関連もあった。
品名を見て条件反射のように購入を決めるのは「いちじく」「くるみ」あたり。
めずらしい素材を使ったものも気になるし、カレーパンも好き。
あ、でもカレーパンは新幹線で食べるのは場合によってはあれか……。
などと、迷いながら、小声でブツブツ言ったりもしてみる。
お店には人生の先輩感あるお母さんがいて、特に声をかけられることもなく、
でも早く決めなさいよ的圧迫感もなく、ほおっておいてくれた。
選んだのは「溶岩いちじくパン」「クリームチーズ柚胡椒」「バターなんとか(シンプル系)」
お会計をすると「袋はいらないですね?」(京都弁だったと思うけど思い出せず)
「はい、いらないでーす」無駄に元気に愛想よく答えた私は、パンパンのリュックからエコバッグを取り出そうとレジ前でごそごそやった。
実はお昼に食べたお弁当の空箱(二段)が入ってパンパンだったのだ。
ちなみにこのお店は「汎洛」と書いてパンラクさんという名だそう。
ようやく取り出したエコバッグを拡げながら、なんとなく照れ隠しに
「ありました! これ持って東京まで帰ります!!」
と、聞かれてもないのに言った。
すると、特に感情を表に出していない感じだったお母さんがパッと顔をあげ、私の顔を見て
「えっ、東京から?」
「はい、仕事で日帰りで来たので、これから新幹線で帰ります」
午後から一人だったこともあり、すぐ会話に飢える私は、こうして聞かれてもないことを言って短い会話や反応にうれしくなるタイプだ。
溶岩窯なるものが店内にシンボリックにあったので、これをきっかけに
「窯の写真撮ってもいいですか?」と許可を撮り、サクッと1枚撮って店を出た。
「おおきに」と送り出してもらい、さっきより軽快に錦市場へ向けて歩き出した。
「汎洛」のパンは、しっとりと品があり、でも噛み応えがあって美味しかった。
食べ終わってから、あぁ、もう少しゆっくりしっかり噛んで味わうべきだったなぁと思いつつ、
クリームチーズ柚胡椒には、追い柚胡椒をしたくなった。
刺激を求めているのか、繊細な味がわかっていないのか、そんなことを思ってしまう私には、
あのお店のお母さんのような、余計なことは言わない感じの落ち着きが
まだまだ足りていないのかもしれない。