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「ペリカンカフェ」で答えの出ない悩みを持ち帰る

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日常の中から、エンタメを整理収納目線、暮らしをエンタメ目線でつづります。栗原のエッセイ、つまりクリッセイ。

気になっていたけれど、観そびれた舞台はたくさんある。
気になっていたけれど、行きそびれている店はたくさんある。

そんなたくさんの中の一つだった「ペリカンカフェ」に行くことができた。
「ペリカンカフェ」は浅草・田原町で昭和17年から続く老舗のパン屋さん、パンのペリカンの直営カフェ。
2017年には、ドキュメンタリー映画「74歳のペリカンはパンを売る。」が公開された。
食パンとロールパン、その2種類を変わらず作り続け、地元に愛され、たくさんのファンを持つパン屋さんだ。

知っているのに食べたことがなかった。
買いに行ったけれど、売り切れで食べられなかったことも何度かあった。

「明日はペリカンカフェに行くぞ!」
「帰りにペリカンの食パンを買って帰るぞ!」
そんなわくわくとエコバッグを持参していざ。

パンのペリカン店舗の前を通り過ぎて、少し進んだところにペリカンカフェはある。

午前中、運よくすぐにカフェに入れた。
メニューに悩む。

事前にホームページでメニューを見ていたものの、全く決められなかった。
ならば現地でと入店したが、全く決められない。
だって、どれも魅力的なのだもの。結果、定番中の定番、「炭焼きトーストセット」と「ハムカツサンド」をオーダー。
しばらくすると、見た目からも気分があがるトーストが目の前に運ばれてきた。

炭焼きトーストの上のバターを溶かしながら、半分だけジャムを塗る。
耳をかじった瞬間に、パンのいい香りが口の中にひろがった。
ゆっくり食べたい。味わって食べたい。そう思うのに、口はむしゃむしゃと勢いよく動く。
そしてコーヒーを一口。

驚いた。なんとおいしいコーヒーだろう。
なんとパンに合う味のコーヒーだろう。

続いて、ハムカツサンドを手に取った。
ペリカンのパンにはさまれているのは、「浅草ハム」の厚切り。
これに、パン粉をつけて揚げたものがハムカツなのだが、なんとそのパン粉もペリカンのパンなのだそうだ。
すべての分量、塩梅がちょうどよく、噛むほどに幸せな食べ応えが口の中で踊る。

炭焼きトーストに恐ろしいほどに合う味のコーヒーは、
ハムカツサンドにもぴったり合った。

オーダーをなかなか決められない時、店員さんが「店内の黒板に本日のメニューもあるので参考にされてください」と言った。
まったく押しつけがましくはなく、さらりと言ってくれたが、
それはオーダーに迷っている者には、さらなる迷宮への誘いだった。
店員さんはきっと知っていた。
「あなたはこっちも食べたくなーる」と呪文を唱えていたのかもしれない。

炭焼きトーストとハムカツサンドをシェアして食べた後、
迷っていたメニュー、カニクリームコロッケのナンチャラを追加注文した。
メニュー名を覚えていないほど、もうペリカンのパンに夢中だった。

しばらくして運ばれてきたその本日のメニューは、炭焼きトーストとも、ハムカツサンドとも違った形状の一品料理だった。
耳とパンの食感の違いを楽しみつつ、しっかりカニクリームコロッケの味を堪能した。

そしてしつこいが、コーヒーが美味しい。
冷めても美味しかった。

気になっているけれど、行きそびれていた店に行って、
食べたかったけれど、食べそびれた味を味わった。

そして今の悩みは、次にペリカンカフェに行った時はどうするかということ。
気になっていた2種類のチーズトーストを選びたいけれど、
あのハムカツサンドを食べずにいられようか。
そして、その日の本日のメニューだって絶対に食べたくなるに決まっている。
こんな幸せな答えの出ない悩みはそうない。