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ホントを見るか、ウソを見るか『HEISENBERG』

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誰かと一緒に観劇すると、共感が何倍にも膨らんだり、違った目線がプラスされます。
作品をフィーチャーしながら、ゲストと共にさまざまな目線でエンタメを楽しくご紹介します。

今回ご紹介する作品は、サイモン・スティーヴンス脚本の二人芝居『HEISENBERG』。
6名の整理収納アドバイザーの皆さまとご一緒しました。
観劇後のシェア会にご参加いただいたのは、
『日本初の片づけヘルパーが教える 親の健康を守る実家の片づけ方』(大和書房)の著者・永井美穂さん。(本コーナー最多登場)
本webマガジンの連載「ひつじのまなざし」でもおなじみのひつじPlanning 整理収納アドバイザーのみのわ香波さん。
そして、私(栗原)の整理収納の師匠でもある整理収納術研究家のすはらひろこさんです。

『HEISENBERG』は42歳の女性ジョージ―と75歳の男性アレックスが出会ってからの6週間を6つの場面で構成する芝居。
ジョージ―を小島聖さん、アレックスを平田満さん、演出は古川貴義さん。
中野のザ・ポケットという約180席の劇場で2週間全12公演で上演されている。

※以下、作品のネタバレを大いに含みます。

ロンドンのセント・パンクラス駅でニュージャージー出身のジョージ―は、肉屋のアレックスと出会う。まくしたてるようにしゃべるジョージ―にアレックスはとまどうも、二人はその後、距離を保ちながら、あるいは近づきながら同じ時を過ごす。
一夜を共にした次の朝、ジョージ―はアレックスにある頼み事をした。
それが目的だったのか、それはいつからだったのか、アレックスはどう対応するのか。
そして二人は……。

着替え、ハンガー、二人の合図
やっぱりしまうシーンが気になる

栗原 みなさん、こういう二人芝居は初めてなのではないですか? ご覧になっていかがでしたか?
すはら 場面が変わるごとに二人が着替えるところがまず気になっちゃいました。私の席からは小島さんがよく見えたので。
みのわ 私の席からは鏡で見えなかったです。でも平田さんの姿はよく見えました。
すはら 片づけて、芝居して、が繰り返されて、これって日常だよねと思いながら見てました。脱いだものをハンガーにかけてたりして、やっぱりつい「片づけ」している日常に目がいっちゃいますね。
栗原 ジョージ―もアレックスも自分のことは自分でやるっていう感じでしたよね。
永井 平田さんが着替えた後に彼女を確認していたよね。
すはら 合図出してた。小島さんも「うん」って頷いていたし。役者さんがそこにいるというより、隣のお姉さんがそこにいるみたいな感じで、あの場でああいう日常感を出せるってすごいなって思いました。
みのわ ベッドまでご自分たちで動かしていましたよね。ヨーグルトも本当に食べていたし。
栗原 劇中に出て来たミューラーというのはドイツの乳製品メーカーで、お米入りヨーグルトというのは実際にあるそうですよ。
すはら ヨーグルトで言えば、食べ終わったヨーグルト、スプーンを舐めてカバンにそのまま入れていたよね。あれは中に袋があったのかしら? 気になっちゃって(笑)。
永井 私も思った!
栗原 さすが皆さん、モノの行方や収納が気になりますよね。

どちらの視点でみるかで
見え方が違う

すはら そのほかに気になったのは、会話と会話の「間」ですね。不思議な間だなぁと思った。
永井 
あの「間」は、年齢もあるし、簡単には理解しあえてないからなんじゃないかなと私は感じた。解釈に時間がかかるような。
みのわ ながーい「間」が2回くらいありましたよね?
栗原 言おうか言うまいか、簡単には言えないような、迷ったりためらったりも含んだ「間」のように感じますよね。
すはら あれだけ立て続けにしゃべっていたジョージ―が、言葉を飲み込むような「間」を作ったときがあったように感じたりもしたかな。
みのわ 好きでもなんでもなければ躊躇なく言えちゃうんだけど、相手の反応が気になるからどう言おうかなって思い始めていたのかもしれないですね。
栗原 確かに独特の「間」でしたよね。

永井 この作品はどちらからの視点で見ているかにもよって、捉え方が違うんじゃない? 若い世代から見ているのか、ちょっと年齢がいった人たちが見ているのかもあるし。私は平田さん寄りの目線で見ちゃうよね、やっぱり。介護の現場でも、あと何回桜を見られるかなんて実際にある話だから。だからアレックスがあの歳で彼女に出会えてよかったよね、と思って観てました。
みのわ 歳も考え方も生き方もたぶん全然違ったけれど、最後にはこういう人が良かったんだと思えたのだろうから、基本的な価値観みたいなものが似ていたのかな。それともお互いがお互いにないものの中に「あ、いいな」と思うところを見つけてこの先の人生を一緒に生きたいと思えたんだろうなって。いいなぁと思いました。
すはら 私は両方の目線で見ていた気がするんだけど、最後の言葉で「一緒に」っていうキーワードが効いた。とにかく「一緒に……」って。それが刺さった。
みのわ 後半の方で、(アレックスが)自分が「どうなのか」を気にし過ぎだ。どうなのかより何をするかが大事だ……みたいなことを言っていて、「そうそう」って思いました。
栗原
 個性みたいなものは存在しない。個性っていうのは、一つ一つの積み重ねたものだというアレックスの言葉もいいですよね。ちょっと嬉しくなるというか。
すはら この人はこういう人よねってどうしても決めつけちゃいがち。
※片づけ関連でも「片づけられない人」と自分で決めつけている人は結構多いのです。

栗原
 ジョージ―は決めつけられてきた人なのかもしれないですよね。それで自分で自分にラベリングしちゃってきたのかもしれない「私って変わってるから……」って。そこへあんな哲学者のような肉屋さんがいたら気になりますよね。
みのわ それにしても生の平田満さん、格好良かったです。
すはら 紳士な感じが出てた。
永井 人生を背負ってきた感じがした。冴えない70代の男性が最後に輝けたってイメージがとても素敵に見えました。
栗原 私は実はちょっとアレックス寄りで見ちゃったというか。アレックスがときどき声を出して泣くというのがありましたけど、もし自分がずっと独り身であの年齢になったとしたら、あんな風に突如として泣く時がある、そういう人生だっかかもしれないとか、思っちゃったんですよね。急に襲い来る孤独みたいなものとか。

何がホントで何が嘘なのか?
ジョージ―に息子はいたの?

永井 劇場もいい感じだったね。私たちには贅沢だった。
みのわ 本当に贅沢だった。二人の暮らしをのぞき見しているような感じすらしました。
永井 客席に向かって台詞を言うみたいなのはなくて、本当にもうこっちにお尻向けているシーンもあって、だからこそ二人の世界をのぞき見しているようだった。
みのわ 食事のシーンもありましたけど、実際に一人でご飯食べてたりすると、隣のカップルの会話聞こえちゃったりすることありますけど、そんな距離感でした。

ふわふわのスフレパンケーキやクラシックなプリンも美味。<チーズ&パスタ パステル 中野店>

永井 何度も観たくなる作品だよね。次に観た時にまた違うんだろうなって感じ。
みのわ パンフレットとか読んでもう1回観たい。
永井 普通の日常に自分達が戻った時にふと思い出したりしそうだよね。
みのわ そうかも。

栗原 何がホントで何が嘘なのか、皆さんはどう思いましたか?
すはら ジョージ―に息子がいるということも嘘だったんじゃないかな。ニュージャージーでの会話の時になんとなく上の空みたい感じというか目線が泳いでた。
永井 息子が見つからなかったと報告した時、もっと探そうよって感じもしてなかったしね。
みのわ もしかしてそもそもいないの? とは思いました。ほんとに探しに行った風はなかったですよね。
永井 初めは息子がいるっていってお金をだまし取りたいだけだったのかもしれない。でも彼と一緒に行きたかったんだな。あのままロンドンにいたら二人は「一緒に」とはなれなかったのかもしれないよね。だからニュージャージーに一緒に行く必要があった。
すはら あの後、二人はどうするのか。ロンドンに戻るのか、ニュージャージーに留まるのか。
栗原 お三方ともジョージ―に息子はいない説なんですね。私は息子はいて、でもアレックスと出会えたことで、自分の存在価値みたいなものを息子に求めなくてもいいんだってなって彼女の第二章が始まるんじゃないかなんて思ったりしたんです。
ほんと、答えはわからない。不確かなんですけど。
すはら 私はやっぱり元々いないんじゃないかなと思ったのよね。結婚もしてなくて、彼女もずっと一人で生きてきたんじゃないかな。
みのわ 最初に言ってた話は嘘、ウソって言ってましたもんね。
永井 嘘から始まってだんだん本当のことが言えるようになってきたっていうのもあるよね。
みのわ そういう嘘の物語の中に付属しているみたいだった自分がやっと凧みたいに飛んでいかないでいられるようになった。そのまんまでいいよと言ってくれる人に会えてやっと安心して、これが私に合ってるんだって見つけた感じ、なのかな?
永井 正解はわからなくていいんだよね。
栗原 そうです。わからなくてもいいんです。そもそも後半の話が本当にホントかどうかだってわからないですからね。
間も表情も、どこが気になる、引っ掛かるかは人によって違いますね。
すはら 公演中止になってしまったもう一つの組み合わせで観たら、全く違うように見えたかもしれないのね。観たかったー。
栗原 配信もありますので、映像で観たらまた別の解釈が見えてくるかもしれません。もししばらくして何か気づいたことがあったらご一報ください(笑)。今日はありがとうございました。

今回エンタラクティブしてくださったのは……
すはらひろこ (Hiloco Suhara)さん 
整理収納術研究家
株式会社・アビタクエスト 代表取締役

生活に密着した「お片付け・模様替え」のエキスパートとして活動。
整理・収納・片付け術の専門家として執筆、講座開催、講演のほか、住まい・収納にかかわるデザイン、商品企画・開発、集合住宅のデザイン監修などの分野でも活躍している。
おうち素敵ラボ 片づく収納 整うインテリア
みのわ香波 (Kanami Minowa)さん
ひつじPlanning代表

整理収納アドバイザー資格取得後、個人宅の整理収納サポートを開始。現在はリフォーム時のモノの整理、収納計画、防災備蓄のご提案もしている。各種セミナーや2級認定講座を通して、自らの人生を変えた経験や現場経験を盛り込んだ大好きな整理収納理論の普及に努めている。
また、ライフワークとして写真整理ユニット「アルバム姉妹」としても活動中。
趣味はアート・建築・映画・ドラマ鑑賞、特技は箏。(生田流筝曲師範)
お片付けは後始末ではなく、始まりです_ひつじPlanning
永井 美穂(Miho Nagai)さん
介護福祉士の資格取得後、10年間介護事務所に勤務し、お年寄りの在宅介護に従事する。高齢者が在宅で安心して暮らせる部屋づくりを考えるなかで、整理収納アドバイザーの資格を取得。個人宅での訪問整理業務を行うほか、「介護者の気持ちがわかる整理の講師」としてもさまざまな業界で活躍。著書に「日本初の片づけヘルパーが教える 親の健康を守る実家の片づけ方」(大和書房/2019)がある。2020年より「介護環境整理アドバイザー」認定講師として介護における環境整備の必要性を広く伝えている。
片づけヘルパー 永井美穂オフィシャルサイト シニア・高齢者のためのゆっくりお片付け
コメントで感想をいただきました!

・【想像を掻き立てられるラスト】
舞台上での着替えも演技の一部になっていて新鮮。一回一回、ハンガーにちゃんと掛けてたのが印象的。ちっちゃい舞台だから細かいところまで見えて、俳優さんの凄さを感じましたし、想像を掻き立てられるラストでした。デタラメなのか、真実なのか、どっちとも取れるので、その後が気になってしまいました。個人的にはアレックスが毎日書いていた100文字日記にどんなことが書いていたのか読んでみたくなりました。(今村亜弥子さん)

・【2人に魅せられました】
ジョージーは、学校の事務という地味な日常で人付き合いもなく、孤独そうな老人に近づいては……を今までもやってたのかな? でも、アレックスは他の誰とも違って愛情が芽生えた。場面が進むごとに気持ちの変化が見えました。
2人であれだけ見せられる舞台、すばらしかったです。大袈裟でわざとらしい表現もなく、すんなり入ってきましたし、着替えて場面が変わる時のお二人のアイコンタクトが素敵でした。もう一つのチームとの違いも知りたかったです。(三ツ井さくらさん)

・【長台詞と会話のテンポに衝撃を受けました】
とても近くで観劇することができて、演者のお二人の表情や動き、空気感が伝わり引き込まれました。あの長台詞と会話のテンポに衝撃を受けました。
ストーリーというより、2人の関係性、距離感、そこにある言葉と想いが複雑すぎて、かなり脳内が大騒ぎしておりました。何度も?が浮かんだというのが正直な感想です。
まだまだ観劇初心者ですが、これから色々な舞台を観てみたいなと思わせていただけた作品でした。(まつうらちかこさん)

舞台『ハイゼンベルク』のレビューも書きました。舞台写真付きです。
内側で温度調節ができる『HEISENBERG(ハイゼンベルク)』
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