理由あって週イチ義母宅 PR

ミッションという名の

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理由あって週イチ義母宅に通っている。
これは、主にその週イチに起こる、今や時空を自由に行き来する義母とその家族の、
ちょっとしたホントの話だ。

大抵のことは買い物に行っているほんの2~30分の間に起こる。
汗だく&強風でわしゃわしゃになりながら戻ると、
さきほど洗濯し終えて干しておいたシーツが取り込まれている。
さすがにまだ乾いているはずはない。
そして、玄関の鍵は閉まっている。

ベッドの上に置かれたシーツは案の定生乾きのままだ。
義母の上着のすそには洗濯ばさみがついていた。

ふたたび庭へ出て、シーツを干す。
そして台所に戻ると、出かけにふかして潰して、お酢をちょいかけしておいたポテトサラダになるはずのじゃがいもが、自立型の水切りゴミ袋の中に捨ててあった。
ちゃんとラップもかけていたのに……。
橋田寿賀子のドラマや昔の大映ドラマなら、これは姑による嫁いびりの定番シーンってところだ。
もちろん、そうではない。
つぶされたじゃがいもは、自分が食べるおかずの手前の姿だということは思いもしなかっただけだ。

しかし、こんな蒸し暑い日はカーッとなる。
「それでも手が届かないところに置いておかなかった私がいけないよね、と反省しなくちゃいけないわけ?」
心の中で逆ギレして、ちょっとだけ義母に八つ当たりをする。
当然、義母は何にキレられているのかわからないので、しばらくすると私がしぼんで終了。

じゃがいもはまだあった。なんならさきほどのじゃがいもは古かったから、
改めて別のじゃがいもでポテトサラダを作ろう。そのためにたまごを茹でたのだし、きゅうりとマヨネーズも買ってきたのだから。

今は料理をしなくなった義母だが、私たちがいない時も台所は比較的清潔を保っているタイプだ。
手持ち無沙汰になると台所を片付けるのが条件反射なのかもしれない。
一貫性はあるようなないようなだけれど。

さ、そうなれば手持無沙汰解消作戦に切り替えるしかない。
鬼軍曹よろしく、次々とミッションを義母に渡すことにした。

半分にカットしたバナナを袋に入れる作業。
6カット分の袋を出して、少し口を空けておく。
「皮はむくの?」と無邪気に聞く義母に
「皮はむかない。今は食べないで!」と鬼軍曹。

それが終わると今度はゆで卵の殻をむく作業。
殻入れを用意して、途中でチェックも怠らず。
終わったような様子を目の端で確認しつつ
「終わったら報告願います!」
「今、終わりましたー」と義母。

間髪を入れず、今度は加熱して皮をむいたじゃがいもをつぶす作業。
マッシャーなんて便利なものはないから、木のへらを渡して
「今度は少し力が必要だよ。このじゃがいもをつぶして!」
鬼軍曹は「さっき捨てちゃったじゃがいもくらいにこまかくね」と小声で言う。

お酢を入れて、きゅうりを入れて、ゆで卵を入れて、マヨネーズを入れて。
目の前で一つずつ足しながらそれらしくなってきたところで
義母と一緒に味見をする。
「おいしいね」とは言わないのがムカッとくるが、とにかくミッション終了。

ふと思った。
昔、業務過多の編集部で上司から突然言われるミッション。
「明日から派遣の人を呼んであげたから、やってもらえる仕事の準備しておくように」
結果、お願いする仕事を準備するために残業するという矛盾。
振りベタの自分を自覚させられて、凹んだり、腹を立てたり。

そんな経験も踏まえて、今は気楽なフリーランスだ。
義母へのミッション出しは、これまでだって創意工夫で乗り切ってきた。

理由あって週イチ義母宅は、私が張り切ってたくさんの作り置きおかずを作る自己満足的ターンから、次のターンへ入ってきた。
もちろん、義母の調子と私の調子と気分次第で変動しながら続いていく。