理由あって週イチ義母宅 PR

さつまいも子のビデオメッセージ

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理由あって週イチ義母宅に通っている。
これは、主にその週イチに起こる、今や時空を自由に行き来する義母とその家族の、
ちょっとしたホントの話だ。

SNSでとても美味しそうな干しいもの投稿を見つけ、思わずコメントをした。
「さつまいも子の義母なら飛びつきそう」みたいなコメント。
実際、さつまいもはほぼ毎回、煮るなり、レンジで焼き芋風にするなり、何かしら作っているし、それが食べ残されることはないほど義母はさつまいも子なのだ。

数日して、投稿されたご本人からメッセージが届いた。お取り寄せしたお芋を私の義母に食べてもらいたいのでお裾分けするから取りに来られませんか?と。
嬉しいやら、恐縮やらだったのだが、生憎別件があったので、気持ちだけ頬張らせていただくことにした。

すると、ある人を仲介してお裾分けを届けていただけることになった。
嬉しいやら、恐縮やら、いや本当にありがたかった。
義母宅に行く日、出かけに間に合うように届けてくれるというタイミング大臣も感涙の親切ぶり。
美味しそうな丸干しタイプの紅はるかの干し芋を持参して義母宅へ向かった。

いつもより早めに着き、いつもよりボリュームのあるお弁当を昼に食した義母と私。
今日のおやつの丸干し芋を美味しくいただくために、カロリーを消費しようと、
買い物に連れ出した。
スーパーは目と鼻の先だが、最近の義母は往復するだけでかなり疲労するようになった。
ちょっぴり体重が増えたことも影響しているのかもしれない。
もちろん89歳ともなれば当然なのだが。

それでもなんとか戻ってきて、義母がうたた寝をしている間に、私は台所でチャチャッと。
そしていつもより少し遅いタイミングでおやつタイムにした。

今はもう入れ歯を入れることもなくなった義母だが、咀嚼力というか、飲み込み力はかなりのものだ。
丸干し芋も丸のまま食べかねないので、一口サイズにカットしてフォークでつつきながらいただいた。
干し芋だけれど、しっとり&ねっとりしていて、口の中からなくなるタイミングで紅はるかのやさしい甘さが口の中に広がる。
「素朴」を味にするとしたら、これのことだ!といっても過言ではない。

さあ、ここで私は、ディレクターよろしく、義母にカメラを向けることにした。
この美味しい今日のおやつを義母にとお裾分けしてくれた方への御礼のメッセージを動画で撮るのだ。
理由を説明すると、義母はすぐにOKした。

まず練習ね。
フォークにさした芋を持ってもらい、カメラに向かって話す。
お名前を間違えないように何度か繰り返し伝え、お礼の言葉もこんな感じでと伝えた。
1回目…お名前、上手く言えた。お礼、ちょっとつっかえる。
2回目…お名前、上手く言えた。お礼、上手く言えた。以上。

「うーん、なんかさ、せっかくならお義母さんの生の言葉欲しいよね。
お名前、お礼の後、なんか自由に言ってみてよ。」
私はエセ映像ディレクターのテンションで、義母にダメ出しをして、
いや、リクエストをして、再び動画を回す。

以下は、その動画の全文。
「〇〇〇〇さん、美味しいお芋をありがとう。……とっても美味しいお芋でね、この辺ではないよ、めったに」

「はい、カーット!! オッケーです!!!」
そんな気分だった。
「一旦チェックしまーす」
の気分で今撮った動画を見せると、義母は満更でもない様子でハハハと笑った。

教師生活ウン十年、名前を呼びかけるトーンがそれを物語っていた。
残りのお芋もあっという間になくなるだろう。
残念ながら、それがどういう経緯で義母宅に届いたのかはすぐに忘れてしまう。
「そんなの私は一度も食べていないよ」と言ったりするかもしれない。
でもきっと、美味しいお芋を食べて、お礼のメッセージを口にした時のなんだか幸せな気持ちはどこかの片隅に小さくあるはずだ。

いや、なくてもいい。
私がしっかり楽しい気持ちになれたことを覚えているから。