理由あって週イチ義母宅 PR

安の一文字

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理由あって週イチ義母宅に通っていた。
これは、今や時空を自由に行き来する義母とその家族の、ちょっとしたホントの話だ。

義母が施設へ入所してからあっという間に半月が経過した。
私は週イチの義母宅通いがなくなり、夫は朝と夜、義母宅への電話がなくなった。
この半月の間に施設からは何度か夫宛に連絡が入ったが、不穏な話ではなく、確認ベースのものとちょっとしたリクエスト程度だ。

6月末日、3カ月に一度の整形外科&内科への検診日に、久しぶりに義母と対面した。
車で施設へ迎えに行き、玄関で待つと義母はやわらかい笑顔でシルバーカーを押しながら出てきた。

夫が隣にいたせいもあるが「お宅はどちら様?」みたいな表情はない。ちょっとホッとした。
夫のことを「お父さん!」と呼ぶ。もうだいぶ前から息子が夫になっているみたいだ。
となると私はナンだ? まあそんなことはいい。

義母がどんな様子かを予想していた。恐らく少しスリムになっているはずだ。
自宅にいる時は、好きなものを好きな時間に好きなだけ食べていたし、バランスの良い食事とは程遠い日々だったからだ。
言い訳ではないが、特に医師から注意喚起されていないのであれば気にしなくていいという方針になっていた。
それより食べるモノが足りなくて不安定になるほうが良くないだろうというプロのアドバイスがあったのだ。

義母は車の乗り降りも、採血も、検尿も滞りなく済ますことが出来た。椅子からの立ち上がりもスムーズだ。これは予想通り体重がやや減り、筋力が少し戻ったからに違いない。
何より義母は終始いい表情だった。それは不安からの解消によるものだろう。

デイサービスから戻り、一軒家で一人で過ごしていた時間が思っていた以上に不安だったことの証明でもある。
仕事と環境とそもそもの本人の性格から、淋しいと口にすることがなかった昭和一桁生まれの性だったかもしれない。

病院で診察を待つ間の待合の椅子で、少しスリムになっていた義母のお腹がぽっこり膨らんでいることに気づいた。
ん?な、なんだ?
「ちょっと失礼〜」と言いながら、義母のポロシャツをチラとめくると、赤いおはながみで作られたちょっと潰れた飾り花が出てきた。

そういえば施設の方が昨夜は屋台ラーメンをしたと言っていた。具材のトッピングのセンスが良かったと褒められていたっけ。
飾り花と共に出てきたのが職員さんとのツーショット写真が付いたお手紙。
研修か何かで来られていた外国の方だろうか。日本語で義母宛のメッセージがしっかりした文字で記されていた。
元教師の義母ははじめましての人ともなんなく会話が出来るタイプだ。
その職員さんにもいかんなくその実力が発揮されたのだろう。

不安の不がなくなって、心と全と定が加わった。安心と安全と安定。何よりそんな義母の様子を見た夫の安堵の表情と言葉がここまでの月日と決断を表していた。
夫は「いい所を紹介してもらえてよかった」とその日から繰り返し口にしている。

♪安、安、安、とっても大好き〜ドラ○○○

ランチはいつもの通り和食ファミリーレストランの天丼をペロリと平らげ、食後にはミニ冷やししるこを食べた義母。あんこは最強さ。
いくつかの安を手に入れた義母を送り届け、私たちは安全運転で帰宅した。