拝啓、ステージの神様。 PR

これから先、もう『RENT』は観ない、のか。

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ステージには神様がいるらしい。 だったら客席からも呼びかけてみたい。編集&ライターの栗原晶子が、観劇の入口と感激の出口をレビューします。
※レビュー内の役者名、敬称略
※ネタバレ含みます

ミュージカル『RENT』。これまで何度も何度も観て来た作品。
海外招聘版も日本版も何度も何度も観て来た。

ニューヨークに行きたくなったよ『RENT』誰かと一緒に観劇すると、共感が何倍にも膨らんだり、違った目線がプラスされます。 作品をフィーチャーしながら、ゲストと共にさまざまな目線でエンタメを楽しくご紹介します。 今回ご紹介する作品はミュージカル『RENT』来日版。 ご一緒したのは、整理収納アドバイザー かたづけこびと 代表の堀中里香さん。...

でも、後悔しているのは、26年前に上演された『RENT』日本版の初演を観なかったこと。
その時のことを、以前の観劇blogでも書いていた。

これだけでなく、『RENT』の文字を観る度に、『RENT』のパンフレットを開く度に、山本耕史さんの舞台の情報を聞くたびに、その後悔はずっとあった。
結構しつこい性格なのだ。コンプリート癖があるせいもある。

そんな長年のしつこい思いが、こんな形で解消された。
『RENT』日米合作版、全編英語で上演される。
マーク・コーエンを演じるのは、26年前の『RENT』日本初演でマークを演じた山本耕史さん。いや、Koji Yamamoto。

このチャレンジについては、公演直前にさまざまなメディアに出演した山本さんが語っていた。どのメディアでも判をついたように同じ話をしていた(当たり前だけど)。
その昔、彼は『RENT』の曲はすべて英語で歌えると言っていた。今回は曲だけではない、台詞もすべて英語だ。

開幕2日目に、2階席から観る『RENT』。
それほどキャパのない劇場で「ちょっと音量バグッてますよー」みたいな熱に巻き込まれる状況と違って、東急シアターオーブは広い、大きい。
勢いだけに押されるのではない感覚は、自分自身の年齢のせいもある。
手拍子が起こっても、2階席からはパラパラになってしまうこともあって、感情的になりすぎなかったのは事実だ。
けれど、この『RENT』のコアを感じながら観ることが出来た。

海外招聘版は両サイドに字幕が出る。見なくてもいいんだよなぁと思いながらも、結局その電光掲示板に目がいってしまって、少し悔しい思いになる。
英語が出来ないってそういうことだよ、バカバカ! みたいな雑な思いになることもあった。

けれど、今回はそうならなかった。字幕を目で追うことがほとんどなかった。
恐らく理由は、
山本さん演じるマークをかなり追いかけていたから。
さすがにストーリーはすっかり、しっかり頭に入っているから。
そして、誰かに感情移入するのではなく、『RENT』を他人事にして観たから。

他人事とはずいぶんな言い方だ。
HIVや貧困、この作品の中に込められたさまざまなメッセージを無視したいわけではない。
けれど、最前線で受け止めるのではなく、次の世代の人たちがどう発して受け止めるのかをそれこそ2階席から見つめたい……そんな気持ちになっていた。

今作には、山本耕史さんのほかに、クリスタル・ケイさんが日本から出演している。
ミュージカル『ピピン』での評価も得ていた彼女が演じたのは、モーリーン。
のびのびと演じていて、もっとやりたい、もっとパフォーマンスしたい! というアーティストの自我みたいなものがぴったりとハマッていた。
個人的には、彼女のジョアン役も観てみたい。きっとそれも似合うと思うんだよなぁ。

そして改めて、ようやく観れた26年越しの山本さんが演じるマーク。
感想は、「知ってたよ!」だ。
映像でほんの一部を観たことがあるだけだし、LIVEで聞いた時はもちろん振りもマークの衣装も身に着けていなかったけれど、すでにほとんど脳内で上演させていたのだろう。
肩から上腕にかけてのボリュームだけが、現在の山本さん仕様になっていたような気もするけれど。

ここまで書いて考える。
私はもうこれから『RENT』を観ないのかなと。
サントラを聞きまくっていたこともあるし、ロックミュージカルも苦手意識を持ってはいないのに、もうこれから『RENT』は観ないのかもしれない。
観てみたいという人がいたら「うん、行っておいで!感想を聞かせてね!!」
そんな風に言うのかもしれない。

とか言いながら、気になる役者さんが出演すると知ったら、しれーっとまたチケットを取ってしまうかもしれないけれど。

公演プログラムは2000円。オリジナルグッズもいろいろあって、Tシャツとか、トートバッグのほかにアクリルキーチェーンやマスキングテープも。
拝啓、ステージの神様。
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