ドラマの中には暮らしや整理収納のヒントがあふれている。
あのテレビドラマのシーンから整理収納のプロが分析・解説する!?
ちょっとニッチなドラマレビュー。
小さなころからテレビドラマが大好きです。
妄想癖がある私は画面を見ながら自由自在に思いを巡らせていました。
整理収納アドバイザーになってからは
そのシーンや内容は「整理収納」とリンクしても楽しめるようになりました。
今回取り上げたドラマは多部未華子さん主演の「対岸の家事~これが、私の生きる道!~」です。
多部ちゃんのドラマと言えば「私の家政婦ナギサさん」(2020年放送)が思い浮かぶ方も多いのではないでしょうか。 その時は家事の苦手なキャリアウーマン役で、スーパー家政婦のナギサさん(大森南朋)との交流をコミカルに描いていました。
今回はその時とは真逆で家事の得意な専業主婦! 現在は第6話まで進んでいます。
村上詩穂(多部未華子)は2歳の娘と夫の3人家族。現代では珍しい?専業主婦だ。
隣人の長野礼子(江口のりこ)は二人の男の子と夫の4人家族。フルタイムで働く女性。
中谷達也(ディーン・フジオカ)は2年間の育休を取っている厚生労働省勤務のエリート官僚。育休復帰後は自分をロールモデルとして仕事に活かす予定にしている。
それぞれの価値観、生き方の違いから最初は違和感の大きかった3人だったが、「家事」や「子育て」という共通の悩みからだんだんとお互いを理解し、改めて自分自身の生き方を見つけてゆく。
詩穂の整理収納のスキル
詩穂は中学3年生の時に母親を病気で亡くしています。
その日から4年間、全く手伝わない父親の分も一人で家事を引き受けていました。
部活との両立が難しく退部したことや、高校生らしい時間を持てなかったことは、詩穂ちゃんにとって自分の境遇や父親への大きな失望になったようです。
そして高校卒業式の日に家を出て、それ以来実家には帰っていません。
家事を自分一人に押し付けた父親に対して、家出する前に詩穂ちゃんがしたことに私はちょっと驚いてしまいました。
父親のためにタッパーに作り置きをし、モノの場所を図解付きで細かく説明した紙を書いて残していったのです。
反抗期の年頃でありながら、文句ひとつ言わず、ここまで細やかに気遣いできる高校3年生だったんだなあと感心してしまいました。 いや、もはや文句を言っていれば、父親との関係も何かしら変化して、何も言わずにいきなり家出という行動にはならなかったのかもしれません。
詩穂の実家はほぼダイニングキッチンしか出てきませんが、調味料やキッチンツールなど料理のしやすそうなモノの配置となっています。 亡くなったお母さんがスッキリとわかりやすい収納をしていたおかげでしょうか、詩穂も割とスムーズに料理を作ることが出来たと思われます。
詩穂が家出の時に手にした通帳も「詩穂貯金」と記載されていて、「自分のための貯金を残してくれていたんだ」とすぐにわかるように用意されていました。そんなところからも、詩穂のお母さんは普段から使う時のことを考えたモノの持ち方や収納を実践されていた方にだと予想できます。そして整理してわかりやすくしておくことは、自分だけでなく家族の助けにもなるのだと改めて感じました。
そんな母のモノの持ち方から影響されたのか、何も見ずにモノの場所の図解が書けるほど定
位置を把握できていた詩穂。 かなりの整理収納のスキルを持っているのではないでしょう
か。
違和感を放っておかない
結婚や育児、仕事などは人生に大きな影響を与える選択です。
だからこそ、「失敗したくない」と思うのは当然のことです。
3人はそれぞれに自分のなりたい将来へ向けて真剣に考えて様々な選択をした結果、今に至
っているわけですが、それでも思ったようにいかないことばかりでつい「自分の選択は間違っていたのでは」と考えてしまいます。
そんな時のポイントは「違和感」なのかな~と感じました。
なんだかしっくりこない、このイライラの本当の原因は何なのだろう?
忙しく時間に追われていると、些細な「違和感」を放っておきがちです。
他の二人よりも多少心身ともに余裕のある詩穂は違和感を感じたらその正体を突き止めて向
き合います。そうすることで一番大切な自分の家族との暮らしを守ってゆくのです。
それだけでなく、二人の違和感に気づいた時にはその違和感をなかったことにせず解決法を
一緒に探ってゆきます。
そんな詩穂の姿に二人は自分にとって、家族にとってのより良い人生を考えるようになってゆくのです。
「違和感」は整理収納でも同じことが言えます。
暮らしに合っていないモノを持っていないか? なぜ料理にこんなに時間がかかるのか?な
ぜ家族は片づけてくれないのか? 多くの違和感の解決法は「自分が何を大切に思ってどうなりたいのか」が指針になります。 詩穂にはそれがはっきりしているので散らかった思考を整理できる強みになるのです。
違和感は人それぞれなのでそれを本当に理解することは難しいでしょう。
でも言葉にすることで知恵を寄せ合えばきっと何とか突破できる。
そんな小さな奇跡を詩穂と一緒に体験してゆけるドラマです。
今後も認知症やシングルマザーなど今の日本が抱える問題がテーマになってくるようです。
個人的には1~2話で多部ちゃんが叫ぶようなコミカルさがもう少し欲しいところですが、
テーマがどんどんシリアスになってるので仕方ないですかね。
私も詩穂たちと一緒に自問自答しながら突破法を考えてみたいと思います。