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オリンピックダイバーな私。屋久島一人旅へ。 (後編)

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地球が好きな写真家 伊藤華織が、旅の空で素敵な人生の出逢いを綴ります。

風か過ぎ去ったものの余波の残る屋久島で手練れのダイビングチームに飛び入り参加し、海に出た。酸素ボンベの残量が危なくなり、海面へ浮上することにしたのが前回。

オリンピックダイバーな私。屋久島一人旅へ。 (中編)地球が好きな写真家 伊藤華織が、旅の空で素敵な人生の出逢いを綴る連載旅エッセイ。 屋久島一人旅。の準備編につづき、いよいよ憧れの屋久島へ。天候不順の中、憧れの屋久島ダイビングに参加してはみたものの…?...

この判断が良かったのか悪かったのか、、、

先ず、ゆっくり浮上し海面へ上がる。

水深10mから海面は1気圧上がると言われており。浮上するにつれジャケット内の空気が膨張し、私の胸郭を圧迫する。。。。

それでも、ジャケットに浮き袋の様に空気が入っていれば沈む怖さはない。

そして、海面に出て仕舞えば、好きなだけ口から酸素が吸える!

それを求め浮上する。。。

そして、浮上し海面に出て直ぐ後悔する事となる。

海中では気づかなかったが、海面は台風後の影響でうねりが強い。

BCジャケットはパンパンに膨れ上がり更に胸郭を圧迫し浅い呼吸しかできない。さりとてジャケットの空気を抜く勇気もない。

そして、上陸する砂浜は遥か遠くに見える。

後悔は先に立たぬモノ。

兎に角、自力で泳いで辿り着かねばならない。

波は荒く高低差は3m位あるのでは??と思うほど、とにかく手足をバタバタさせて前に進もうと思うが、波に押し返される。

パニックになりながら"頑張れ""頑張れ!"と全力でバタバタするが前に進めず、砂浜は近づきもせず。それでも前に進まねばとバタバタバタバタ。呼吸は荒く苦しく過換気となり、手足はしびれ疲労も強くなってくる。

それでも漕がねば辿り着けぬ。。。

辛い、キツイ、ひゃ〜全然進まない。。。

どうしよう〜、苦しい、前に進まない。。。

。。。。。。

。。。。。。

。。。。。。

。。。もう無理だ。。。

休もう、、、、、、

と、もう、手足で、漕ぐのを止めた。

ポッカリと独り浮かぶ私。

上陸する砂浜は遥か遠いまま。

、、、、、、

、、、、、、

、、、、、、

まてよ。

波は、寄せて引いている。。。

私は、焦るがあまり、寄せても引いてもひたすら手足をバタバタ漕いでいたではないか。。。

良し、引くときは休んで、寄せるときに漕げば良いのか。

そうか。やってみようぞ〜!

もう、そこからは、荒波の中にぽつんと、

半ば自分を鼓舞するかのごとく大声で叫びながら、

波が引くと
"まて〜!まて〜!"
"休め〜! 休め〜!"
"呼吸整えて〜!!"

と、手足をひたすら休ませて疲労回復させる。

波が引き最高潮で寄せに転じるときには

"漕げ〜!! 進め〜!!"

と、大声で波に同調させ力一杯漕いだ、ら

すると、なんと、なんと、進むではありませんか⁉

とにかく、その繰り返し。

砂浜は少しずつ近づくが、それでも遠い。

砂浜を目の前に見て右手にこれまた3m位の高さの反り立つ岩壁があり、砂浜よりは近い。

そこで、すこしでも陸に接岸したく岩壁を目指す事とした。

寄せ波漕ぐ、引き波休むを繰り返しようやく岩壁へ辿り着く。。。

岩壁には荒波が打ち寄せては引く。打ち寄せた時に一気に上の方へしがみ付こうではないかという作戦を立て、また、心を整え念願の接岸!?

波に合わせて岩にしがみ付く。。。

と同時に私の体は浮力を無くし、背中に背負っている重いボンベの重力が漕ぎ疲れた手指にかかり、また引き潮の引きの力で、無惨にも指が掴まりきれず無惨にも海にずるずると落ちていく。

岩には沢山の硬い大きいフジツボが私の新品に近いウエットスーツにガリガリ食い込みながら傷を付けていく。

それでも何度目かでしがみ付くことができる。

陸に着いた安堵感で、ただひたすらじ〜っと呼吸を整えた。

ああ〜、

死ななかった。。。。あ〜このまましがみついていたい。。。と。

。。。。。

なんと、陸は素晴らしいのだろうか。
ウエットスーツはぼろぼろだけど、

私よ、良くやった。

感慨に耽っていると、、、

遠く砂浜では、楽しいダイビングを終えて、上がってきた人たちが見える。

そして、あのおっちゃんが、、、

『伊藤さ〜ん!! そこは違うよ〜〜!』

と、大きな声で宣う。

私、

『知ってま〜す!! 休んでるだけです!!』

と怒りを込めて大声で叫ぶ。

なんとも、おっちゃんよ〜〜

そんなこんなで、また海に浸かり岩壁沿いに砂浜へ向かう。

なんともよ〜

疲労困憊でマイクロバスに戻ると皆さんは意気揚々と、"マンタがいたね〜" "海亀と一緒に泳げたね〜"と、とても楽しそうに語らっている。

その日は、午前と午後の2本潜ることになっていた。

皆さんはお昼ご飯を食べていて引き続き楽しそうに午後からのダイビングに向けての話をしている。

私はというと疲労困憊。食欲も無く呆然自失。ただ、ただ、気持ち悪くいた。

しかし、

しかし、なのである。

この皆さんが楽しんでいる時に、午後から潜るのを辞めたいいという事を、言いたいのに。

言えない。

次も、私、駄目かも、死ぬかも。。。

と思いながら、

言えない。

言い出せないまま。次のポイントへマイクロバスは移動となる。。。

言い出せない。

声に出せない。

なんでだろう。

"心の中では潜りたくない!"

と叫んでいるのに。

言い出せない。。。

私はヘタレなのである。。。

結果、潜るか。死ぬかも。。。と思いながら。

今度は、海岸そばのところの波も高くないところにしてくれたようだ。

潜るポイントまで着いたところで。

一回目の潜行の時に頭を押し沈めてくれた人に。何故、私は潜れなかったのか聞く。

空気を入れて浮みたいに使うBCジャケットの空気を抜いてなかったからだと教えて頂く。

よし、潜ることはできる。
慌てず、バタバタ泳がす、呼吸はゆっくりに気をつければ良い。

潜るしかない。
何故か、断るより潜る選択の方が楽だった。

死ぬかもしれないけど。。。

次の場所は、岩場からスタンディングで、両股を、前後に開き、飛び降りるスタイルである。

もちろん皆さんはワクワク、スイスイ、ジャンプして潜行されて。

私は1番最後にしてもらい、私の順番がきた。

しかし、潜ろう、よし潜ろう。よし。

と思っても体が拒否して動かない。

呼吸を整えて、大丈夫。大丈夫。と言い聞かせるが、やはり、死ぬかもと思うとどうしても足が動かない。

おそらく、数分そんな問答をしていると、

また、先に潜って誘導していたおっちゃんが、

やや苛立ちながら
『伊藤さん、早く!』とけし掛けてくる。

私は『分かってます!! 今、潜ります!!』

と、私も半ばケンカ越し。

呼吸を整え、落ち着いて、落ち着いて。と落ち着かせていると、また再び、

おっちゃんが『早く!!』と

それを数回繰り返し。

"よ〜〜〜し!"半ばヤケクソ!

と飛ぶ。

今度は上手く潜ることができる。

2回目のポイントは1回目よりも浅く5〜10m位の水深で岸にも近い。

おっちゃんが、また再び私が一人で先に上がってもいいように、近くの上がるポイントを先に案内してくれた。

1度目は潜っていても、皆さんに着いていかねばと、おっちゃんのお尻ばかりみていたが、今回は浅く、海底も見えており海中の観察もできた。亀も見るとができた。

案の定、私のボンベの残量は皆さんよりあっという間に無くなり、独り先に上がることとなるが、余裕で一人で戻ることができた。

その後、時を経て考えることがあるが、何故、あの時2本目を断らなかったのだろうと、今でも不思議である。

しかし、あの時、2回目に潜って無かったらそれ以降は一生ダイビングはしなかっただろう。

あの、ヘタレだからこそ、2回目もヤケクソで潜ったからこそ。

その4年後、私はまた沖縄の素晴らしい海を潜ったのである。

※これを読んだ良い子の皆さまは、まねしないでください。
そして、この夏も海での事故がたくさん起こっております。海に入る時には十分にお気を付けください。
海、川で不慮の事態に遭遇された方々のご冥福をお祈りいたします。

文・写真・伊藤華織(Kaori Ito)
集中医療・救急医療の現場で看護師として25年間従事する。
生と死の迫る医療の現場で自身が感じた、生きることの 稀有さ、そこに宿る喜び、失うものへの愛情と感謝を被写体を通して伝えたいと、写真家・映像作家に転身。
2011年より病院の緩和ケア病棟でのポートレート撮影活動をスタート。2020年、コロナ禍による病院の面会制限強化に伴い、家族すら会えない個室で過ごされる患者の方に向けた映像配信「ハートフルビジョンプロジェクト」を企画。死への不安や、孤独などによる不眠が少しでも和らぐように、朗読映像を制作し配信活動を行う。

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