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八月納涼歌舞伎_サービスてんこ盛り!

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歌舞伎をほぼ毎月楽しんでいる50代男性。毎月観るために、座席はいつも三階席。
初心者ならではの目線で、印象に残った場面や役者さんについて書いてみます。

八月納涼歌舞伎はパロディーの応酬。

八月納涼歌舞伎_夏らしく本水が帰ってきた歌舞伎をほぼ毎月楽しんでいる50代男性による、三階席からの歌舞伎レビュー。初心者ならではの目線で、印象に残った場面や役者さんについて語ります。八月納涼歌舞伎から、第二部の「浮世風呂」と第三部の「東海道中膝栗家 弥次喜多流離譚(やじきたリターンズ)」をレビューします。...

「東海道中膝栗家 弥次喜多流離譚(やじきたリターンズ)」の続きをご紹介しましょう。

派手な本水のシーンを経て、幕間の後、「大詰」としてスタートするのが、
家族商店の店先の場面です。
家族商店、直訳してみましょう。はい、そうです。あのコンビニです。
湘南にある家族商店は、コロナ禍に配信された「図夢歌舞伎弥次喜多」で出てきた設定です。「図夢」とは、そのまま音読みしてみましょう。
そう、Zoomです。

図夢歌舞伎では喜多八たちが家族商店でアルバイトをしている設定からスタートしています。
また、市川染五郎さんが演じる伊月梵太郎と、市川團子さんが演じる五代政之助は、グレて族になっているというはちゃめちゃな設定です。湘南で族です。はい。

しかもこの日は、染五郎さんと團子さんは休演。
染五郎さんの役を市川猿弥さん、團子さんの役を中村隼人さんが演じます。
キャラクターや体格やもちろん年齢も大きく異なりますが、それを可能にしてしまうのが歌舞伎というわけでしょう。
ここまで、散々、猿之助さんに笑わされているのに加え、猿弥さんの喋り方や身のこなしがいちいち面白いものですから、笑い疲れます。

家族商店の店長役は、御年92歳の市川寿猿さん。
田舎の!? コンビニあるあるで、族が店前でたむろしていて売上に響くというのが悩みの種です。
そこへやってくるのが弥次喜多一行。オリビアとお夏にいいところを見せようと渋々割って入ると、以前、珍道中を共にした梵太郎と政之助と再会するというわけです。

実際の甥っ子(猿之助さんと團子さんの関係)や息子(幸四郎さんと染五郎さんの関係)で成立していましたが、代役となったことで
「おじさんにオジサンって言われたくない」なんて軽口が生きてくるのです。もう大笑いです。
また、本来の役では、染五郎さんが梵太郎とオリビアを、團子さんが政之助とお夏を一人二役演じているので、早変わりが見どころだったと思いますが、今回は役を分けて4人が入れ替わり立ち替わりで見せていました。

さらにここに、敵対しているレディースも登場。坂東新悟さん演じる白髪の総長シー子は
ビジュアルが格好良かった。
で、決着をどうつけるかということで、踊り競べをすることになるのです。
行司は店長の寿猿さんです。

この場面は、音楽も踊りも、あの「ウエストサイド物語」。
続いて新悟さんのソロはどんぶりを太鼓に見立てて、道成寺。
笑三郎さんと笑也さんははたきを藤に見立てて、藤娘。
筋書きの文字にすると数行の解説なのですが、この場面が楽しくて見応えもありました。

極め付きは、店長の寿猿さんが鳩の精になってゴンドラに乗って飛び立ちます。
御年92歳の市川寿猿さんが鳩の頭の被り物をしてゴンドラだなんて、まったく誰が考え付くのでしょう。まあ、猿之助さんですね。
「私はお前らの御祖父さん、曾御祖父さんも見ているぞ! どうか歌舞伎を盛り上げていってくれ!」みたいなことを語る寿猿さんに拍手大喝采です。
個人的にはこの場面がとても好きでした。

ラストは疫病による不景気で歌舞伎座の経営が苦しくなっているのを救うために開かれる
オークションの場面。
弥次郎兵衛が海賊から手に入れた首飾りが光って、毎度お馴染み天照大神が出てきて歌舞伎座が復活するという、ハチャメチャストーリーです。
ですが、合間合間に古典の名台詞の言い回しなども聞けて、歌舞伎ファンへのサービスもてんこ盛り。楽しくて、しっかりお腹いっぱいになりました。
最後は、猿之助さん、幸四郎さん、猿也さん、隼人さん4人の宙乗りで幕となりましたが、
代役となった猿弥さんと隼人さんに向けて
猿之助さんが「お前らよくやったよ!」みたいな声かけをしていて、またまた拍手喝采でした。

実は今回も三階席が取れなかったので、一階席で観ましたが、宙乗りの最後までを見届けられないのが少しだけ残念。まあ、贅沢を言ってはいけません。

CHECK!

舞台写真付きの詳しい歌舞伎レポートは、エンタメターミナルの記事「歌舞伎座「八月納涼歌舞伎」が開幕!公演レポート、舞台写真掲載」をご覧ください。

文・片岡巳左衛門
47歳ではじめて歌舞伎を観て、役者の生の声と華やかな衣装、舞踊の足拍子の音に魅せられる。
以来、たくさんの演目に触れたいとほぼ毎月、三階席からの歌舞伎鑑賞を続けている。
特に心躍るのは、猿之助丈の化け物や仁左衛門丈の悪役。