三階席から歌舞伎・愛 PR

八月納涼歌舞伎_リターンズだけに帰ってきた!

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歌舞伎をほぼ毎月楽しんでいる50代男性。毎月観るために、座席はいつも三階席。
初心者ならではの目線で、印象に残った場面や役者さんについて書いてみます。

今月は三度目の登場、度々失礼いたします。
八月納涼歌舞伎の楽しさは前回お伝えした通りです。

八月納涼歌舞伎_夏らしく本水が帰ってきた歌舞伎をほぼ毎月楽しんでいる50代男性による、三階席からの歌舞伎レビュー。初心者ならではの目線で、印象に残った場面や役者さんについて語ります。八月納涼歌舞伎から、第二部の「浮世風呂」と第三部の「東海道中膝栗家 弥次喜多流離譚(やじきたリターンズ)」をレビューします。...
八月納涼歌舞伎_サービスてんこ盛り!歌舞伎をほぼ毎月楽しんでいる50代男性による、三階席からの歌舞伎レビュー。初心者ならではの目線で、印象に残った場面や役者さんについて語ります。八月納涼歌舞伎から、第三部の「東海道中膝栗家 弥次喜多流離譚(やじきたリターンズ)」レビューの後編です。...

「東海道中膝栗家 弥次喜多流離譚(やじきたリターンズ)」では、市川染五郎さんと市川團子さんが出演する予定でしたが、私が観た日は休演のため代役での上演でした。
その代役で演じた皆さんが面白かったことを前回はたっぷりお伝えしました。

ですが、8月29日からお二人が復帰したという情報を得て、
千穐楽である本日、急遽チケットをとって観に行ってしまいました。
そんなわけで番外編的に、(今日は)二階席から歌舞伎・愛をお伝えさせていただきます。

この弥次喜多シリーズは、松本幸四郎さんの弥次郎兵衛と、市川猿之助さんの喜多八コンビに、市川染五郎さんの伊月梵太郎と、市川團子さんの五代政之助コンビという4人で旅をするなかで巻き起こる筋書きです。本当の親子と本当の叔父と甥の4人が揃うとしっくりきます。

特に染五郎さんと團子さんの2人は二役演じるのが見せ所。染五郎さんはオリビア、團子さんはお夏役で早替わりがあるのです。
前回観た時は、その二役は別々の役者が演じましたので、本来の演出で観られたのは嬉しかったです。弥次郎兵衛がオリビアに、喜多八がお夏に一目惚れという設定も、ニヤリとしてしまいます。

実は前回観た時に、喜多八演じる猿之助さんの台詞がなかなか出てこない? ん? と思うハプニングのようなアドリブみたいなやりとりがありました。
今日改めて観たら、あれは……やはりハプニングだったようです。
前回は幸四郎さんが「その言葉を待ってたんだよ」なんてうまく合いの手を入れていたので、ハプニングなのか演出なのかわからなかったんです。弥次喜多の息が合っている様子も見れてさすがプロだなと思いましたし、舞台は生ものなんだなと実感しました。
当たり前なのですが。

アドリブと言えば、弥次郎兵衛が「休んでいくか」という台詞に、喜多八が「そうだな、今月はいろいろあったもんな」という台詞もあって、客席は爆笑でした。
本当に、いろいろありましたよね。

前回も触れた踊り競べの場面で「ウエストサイド物語」のような振りで踊る様子は、とても面白いシーンでしたが、今回は若い二人が中心で踊るからか、面白いではなく、カッコイイ印象でした。
染五郎さんと團子さんによる提灯を片手に踊る二人踊りもありました。
幼くて可愛らしい印象だった二人が今はすっかり青年になって、二人とも背が高くなっていますので、特に團子さんは女形で膝を曲げて早足で歩くのは少しぎこちない雰囲気もありました。
そうしたことも含め、客席は終始若い二人を温かい目で見てる空気に包まれていました。

前回、最高だった御年92歳の市川寿猿さんの籠に乗っての宙乗りは、もちろん千穐楽でも健在。千穐楽特有の待ってました! 感もありましたし、「私はお前らの御祖父さん、曾御祖父さんも見ているぞ! 」みたいなあの台詞はやっぱり最高でしたね。

今日になって改めて気づいたこともありました。
寿猿さんの宙乗りがあるために、ワイヤーの一本は三階席の上まで移動しています。
最後の最後は弥次喜多と梵太郎、政之助の4人が宙乗りして終わるのですが、そのためにはワイヤーが一本足りません。

これをうまくクリアーする演出があったのです。後半に出てくる歌舞伎座を経営難から救うためのオークションシーンで、最初に取り上げるオークション品が「宙乗りセット」。
ここで上にあったワイヤーをビューンと下に戻すのです。
いやぁ、よく考えられていますよね。

ということで「弥次喜多流離譚(やじきたリターンズ)」は楽しい4人の宙乗りで幕となりました。
しかし、千穐楽ということもあったからでしょうか、拍手が鳴りやみません。
4人が花道から出てきて幕の前に立ってご挨拶してくれました。

幸四郎さんは「コロナによる影響もありましたが、規制なしで満席で上演を続けることが出来て本当に嬉しい。これからも何があっても公演を続けていきたい」と決意のような言葉を。
猿之助さんは弥次喜多の歴史に触れ、「戦前に始まったこの演目は、戦後は、役者が減って少ないなかで上演された。それでもなんとか上演を続けていくなかで、一人また二人と役者が戻ってきたという歴史があった。だからこそ公演を止めることなくこれからも何があってもやりつづけていきたい」
というような挨拶を届けてくれました。

今回は、若い二人の見せ所いっぱいの弥次喜多をやっぱり観たいという思いで、急遽歌舞伎座に行きましたが、いやぁ、行けてよかったです。
これからさらに場数を踏んで、歌舞伎役者としてどんどん成長されていくのを見続けていきたいです。

ベテランの流石の名演も、若手の成長著しい姿も楽しめる歌舞伎って、やはり奥深いなと実感しています。

CHECK!

舞台写真付きの詳しい歌舞伎レポートは、エンタメターミナルの記事「歌舞伎座「八月納涼歌舞伎」が開幕!公演レポート、舞台写真掲載」をご覧ください。

文・片岡巳左衛門
47歳ではじめて歌舞伎を観て、役者の生の声と華やかな衣装、舞踊の足拍子の音に魅せられる。
以来、たくさんの演目に触れたいとほぼ毎月、三階席からの歌舞伎鑑賞を続けている。
特に心躍るのは、猿之助丈の化け物や仁左衛門丈の悪役。