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一人ビールができるようになった理由

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日常の中から、エンタメを整理収納目線、暮らしをエンタメ目線でつづります。栗原のエッセイ、つまりクリッセイ。

取材終わりのちょっと早めの夕方。
そういえば食事のタイミングを逃していて、お腹がすいていたので、駅周辺で何か食べて帰ろうとうろうろした日があった。

こういう場合、パッと店が決まる時もあれば、何軒か入っているビル内の飲食フロアだったりした場合、なかなか決まらないということがある。
一人なのだから、「ちゃちゃっと食べられればいいや」と思っていたはずなのに、
結局、うろうろして、いざここ!と思って向かうと行列が出来ていたりする。
一人で、ふらっと入りたいので、並ぶくらいならその店はやめる。

その日、ようやく決まって入店すると、中途半端な時間だったからか、割と広めの席を案内してもらえた。
あぁ、ここにして良かったと思いながらメニューを見て、
今度はあまり悩まずにオーダーする。

パッタイとポテト、それと生ビール。
高い気温と仕事の後と、アジアンフード。こんな条件が3つも揃えば、そりゃあビールを飲まない手はない。
予想を裏切ることなく、美味しいビールをいただきながら、ぱくぱく食べてお腹を満たした。

ふと思う。いつからこういうこと、つまりは一人で飲食店に入ってビールも飲む……ということが出来るようになったのだろう?
そもそもファストフード以外の店に一人で入ることすら、あまり得意ではなかったような時代もあったはずだが……。

会社員時代、ドラマによくあるシーンみたいに、何かと言うと行きつけの店で飲んだり食べたりしてから帰宅する光景に憧れた。
しかし、大抵は仕事が忙しく、終電前に帰るだけで精一杯。
やっぱりあれはドラマの世界だよね、と鼻白んでいたものだ。

ファストフード店から、そば屋やラーメン屋も大丈夫になって、チェーン店なら問題なくなって、気がついたら「それとビール!」が出来るようになっていた。
出来なかった理由は何で、出来るようになった理由は何だろう?
そしてそれはいつからだったろう?

出来なかったのは、一人で食べるなんて寂しそうって思われるかな、みたいなアホな自意識過剰だった? うーん、どうだろう。
出来るようになったのは、飲まずにはいられないことが増えたから? うーん、どうだろう。
いや、羞恥心や自意識過剰な部分がなくなったから? うーん、どうだろう。

気になって、ちょっと夫に聞いてみた。
「仕事の帰りに一人でお店に入って食事プラスお酒を頼んだことある?」
そりゃあるだろうさと思って聞いたら、答えは「あるよ」だった。
ちなみに夫は特に酒好きというわけではない。

「あるよ」の後に少しして、「結婚前ね」と付け足していう。
「えっ、結婚後はないの?」「ないよ。第一、仕事が終わるのが遅いからね」

その答えを聞きながら少し後ずさった。
私はむしろ結婚後、それができるようになったからだ。
それに関しては理由が見つかった。
実家にいた頃は、最寄り駅に車を停めていたから、飲んで帰るという行為は、自動的にできなかったというわけだ。

出来なかった理由は何で、出来るようになった理由は何だろう?
そしてそれはいつからだったろう?

そういうのは、定期的に思い返さないと、余程のエピソードがない限り、忘れてしまうみたいだ。
はっきりしているのは、その日のビールはとても美味しかったということ。
パッタイはゼッタイだということ。