地球が好きな写真家 伊藤華織が、旅の空で素敵な人生の出逢いを綴ります。
泳ぎが苦手な私が憧れのダイビングライセンスを取得するまでが前回。
そんな訳で、休眠していた私のダイビング活動でしたが。
その4年後、はたと屋久島に一人旅したいと思い、どうせならば、自分のダイビング機材を持参し、屋久島の海で潜りたいと相成ました。
自分の中では、大自然を感じ、八百万の神。地球に思いを馳せると言ったことが流行っておりまして。
屋久島のあれやこれやを調べて、自然を大切にしたネイチャーガイドさん、エコツアーを探し、宮之浦岳登山や『も◯の◯姫』で有名となった白谷雲水峡、巨大な屋久杉がたくさん拝める屋久杉ランドなどに行く予定をたてる。
もちろん縄文杉を見に行くツアーは心の底の本心では行きたいと思っていたのだろうが。
私は自然を大切にするエコな人間である。であるから、『縄文杉は人がたくさん入り根を踏んでしまうことで弱るから行かない』と決めた。
なんだか、見たいものは見れば良いのに。。。
その時は人間が自然との共生を考えずに人間様が自然に敬意を払わずに。破壊していく様が嫌でたまらなかった。
てな、こだわりで自分であれこれ決めた一人旅。
その一大イベントとして、屋久島の海を感じようと、自然環境を大切にしたエコツアーを謳っているダイビングショップのツアーに予約し、まだ真新しい自分の機材を持参する事にした。
3泊4日の旅。屋久島は秋口。
自然を探訪しネイチャーツアーに参加するためのお泊まり用品の他、ダイビング機材を専用のキャリーケースに入れガラガラとひきながら屋久島入りを果たす。
季節は9月頃、晩夏といった感じであった。屋久島は1ヶ月に35日雨が降ると形容される程。
近海で台風が通過しており晴れ間もあまり無く雨が多かった。
ツアーは、それぞれに少人数で2人連れや、一人参加の方もおり、良い距離感で過ごす事ができた。自然を堪能するツアーなので、多少雨が降っている方が艶っぽく緑も美しかった。
そして、何も予定を入れていない日は雨の日で、正に、晴耕雨読というドミトリーに前日ツアーで一緒になった方を訪ね、呑み、他愛もない話しなどした。
そして、私にとってはメインの行事である“屋久島 de ダイビング”。屋久島入りしてから、ダイビングショップと連絡をとっていた。
台風が近くを通り、海のコンディションは厳しく、予約していたところは、台風が過ぎても中止する事を決定していた。
久しぶりの一大決心をして重たい思いをしてダイビング機材を運び込んできたのにである。
ふしぎなもので、何年もダイビングをしていなくてもさほど気にもしてなかったのに、ダイビングしてみようと思っているのにできないとなると何がなんでもしたくなる。。。
屋久島内のいくつかあるダイビングショップへ連絡してみたが、行うところはどこも無かった。
ダイビングする予定であった前夜、ガッカリしながら、宿の和室大広間で夕食を摂っていた。
その広間は畳敷の大宴会場のような場所で、各個人、グループごとにお膳で運ばれてくる。
その中でひときわ盛り上がっているグループがいて、皆、小麦色に焼け健康的で一人のゲストの周りに6〜8人くらいいるといったイメージだった。
私はガッカリしながら、一人瓶ビールのビールを注ぎながら夕食を食べていると。その集団は、なんと、なんと、明日、海に潜る(ダイビングする)話をしてるではあ〜りませんか⁉
えっ、えぇ〜
明日ダイビングできるですって〜⁉
と、
私は食事を終えた後、恐る恐る、静かにそのグループに近づき、優しそうな方に、
私「明日、海に潜られるんですか?」と
そのグループの人達は、何の躊躇いもなく悠々と
「潜るよ〜」もちろん素敵な笑顔。
私「屋久島で潜ろうと思い機材一式持ってきたんですが、天候不良でどこもやらないと言われてガッカリしていたんです。。。」と、
すると、「ここの宿のオーナーがダイビングショップをやっていてそこは明日やりますよ」と、
えぇ〜ぇ〜、灯台下暗しとはこんな事か。
「明日、私も潜りたいです☆」と遠慮がちに申しますと。
一緒に潜りましょう〜!と
「わたし、ど素人ですが大丈夫ですか?」と聞くと、
全然大丈夫だよ!海の中は荒れてないと思うと。。。
すぐに宿のオーナーに翌日のダイビングを申し込む。
そして、少し宴に参加していると、その中心にいる健康的に日焼けした、風格のある男性は、知る人ぞ知る、有名水中カメラマンで、撮影の為にきており、一緒に飲んでいる人たちは鹿児島県のプロダイバー達で、そのカメラマンと潜れる事を凄く楽しみにしている人たちだった。
私は念願の“屋久島 de ダイビング”ができる喜びで、早めに自室に帰り揚々と眠りに着いた。
翌日は台風が去った後で波は高いが晴天。
ホテルのオーナーでショップのオーナーでもあるおっちゃんが、私のサポートに入る。
オーナーは60代位の小麦色に焼けた、白髪混じりの伸びたパンチパーマ。まさに漁師のおっちゃんという感じである。
とはいえ、周りはプロダイバーで私は4年ぶりくらいの、完全初心者。まだ数回しか着用していない、新しめのウェットスーツと機材を装着しいざ出陣。
舟でポイントまで行き、舟のヘリに座りマスクとレギュレーターという口に咥えた空気の配管口を外れない様に手で押さえ、後転(後宙返り)のように海に潜る。
なんとかえぇ〜い!
ひっくり返り海上に浸かる。
しかし、浮いて潜れない。。。
あっら、潜り方忘れてしまった。。。
舟から下につたうロープに掴まり潜ろうとするものの潜れない、バタバタしていると、私の次に潜った方が、私の装着している空気が入るBCジャケットの空気を抜きつつ、私の頭を鷲掴み水中深く沈めてくれて潜れた。
(※この方は、キチンと耳抜きなども確認してくれてます)
もうこの時点でヤバめ。。。
皆さんは悠々、ノビノビと海を謳歌している。
私は、オーナーのおっちゃんを追いかけるので精一杯。
無駄にバタバタ体を動かし、ドキドキしていて頻呼吸。ボンベの圧縮空気の残の減りが半端なく早い。
皆さんは、水の抵抗も少ない潜りで、呼吸も穏やか。
私は、無駄にバタバタ泳ぎ、不安でドキドキしているので一人ボンベの残量が気になりまぁ〜頻呼吸。
周りの魚達を見てる余裕もなく私は、圧縮空気の残量計とにらめっこ。
それでも頭はクリアと言うか。この現象について考える。
ゆっくりと呼吸をしよう、バタバタと泳がない。落ち着け〜、落ち着け〜、おっちゃんを見失うなよ〜と。
と、、、
ボンベの残量を時折おっちゃんに手信号で合図し。コンタクトを取るが、
いよいよ少なくなってくる。
海の生物を見ている余裕も無かったのであろう。なにも覚えていない。。。
おっちゃんに、"60"とサインを送ると、
OK.OK.大丈夫と言うサイン。
そして無慈悲にも私のボンベの残量は、すぐに"50"、"40"、"30"と下がっていく。
周りのダイバー達は本当に楽しそうに悠々潜っている。それは覚えている。
おっちゃんに"30"と合図すると、大丈夫、大丈夫と余裕そうなジェスチャー
"20"大丈夫、大丈夫のジェスチャー。
"10"
おっちゃんが、私のゲージを見に来る。。。
おっちゃん、少し考える。
私に指を指し。
"オマエ、一人で帰れ"
ぬぬぬぬぬ〜
なんとおっしゃられたのかしら。。。
わたし、一人で帰れと⁉⁉⁉
しかし、皆さんはまだまだ余裕そうで。。。
ですよね
残量10ですよ
独りで
分かりましたよ。
オッチャンが指を指す方向へ独りで泳ぎ出す。
しかし、待てよ。海面から10mの深さで移動していて、ボンベの残量が0になったら、私、死んじゃう!
そして、独り、海の中で移動をしていてもしも迷子になったら⁉⁉
と、思い。
空気の入るBCジャケットに浮き袋様に空気を入れ、海面へ浮上することにする。。。
この判断が良かったのか悪かったのか、、、
(後編へつづく)
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