誰かと一緒に観劇すると、共感が何倍にも膨らんだり、違った目線がプラスされます。
作品をフィーチャーしながら、ゲストと共にさまざまな目線でエンタメを楽しくご紹介します。
今回ご紹介する作品はミュージカル『GREY』。
ご一緒したのは、整理収納アドバイザー講師で、職場環境の問題点をていねいに探り、改善のためのプランをご提案することで、人材と社会の健全な循環を目指す一般社団法人職場環境プランニング協会 代表理事の三ツ井さくらさんと理事の今村亜弥子さん。
お二人とは、これまでもさまざまな観劇をご一緒してきました。今村さんはconSept作品観劇歴は、『In This House~最後の夜、最初の朝~』『Fly By Night~君がいた』『いつか~one fine day』と4作連続でご一緒しています。
『GREY』は、板垣恭一さん脚本・作詞・演出、桑原まこさん作曲・音楽監督・演奏によるオリジナル作品。リアリティ番組をつくるテレビ局を舞台に、ここに携わる7人の男女の人生、それぞれのリアルについて自らに問う物語です
※以下、作品のネタバレを大いに含みます。
リアリティ番組「レジェンド・メーカー」に歌手志望の女性shiro(佐藤彩香)が抜擢された。学生時代の友人で、この番組の構成作家を努める小説家志望の西田藍生(矢田悠祐)の推薦だった。番組には出世欲の強い番組プロデューサーの久世橙(遠山裕介)や過去にSNSでのひどいバッシング経験もある担当局アナの室井茜(梅田彩佳)が関わりshiroに期待をかける。この番組の生みの親である仕掛け人の黒岩冬一郎(羽場裕一)と報道局員でバリバリのキャリアウーマン九条紫(高橋由美子)は元夫婦。shiroを事故で亡くした娘に重ね合わせて気にかけている。
人気者になる一方、藍生のためと無理をしがちなshiroを心配するのは、二人の学生時代からの仲間、羽生金銀(竹内將人)。物語はshiroが起こす悲しい事件を軸に進んでいく。
ベテランお二人の間が
受け止めたり考える時間になった
三ツ井 主演の矢田さん、席も前の方だったので、素敵なお顔もよく見えたし、ハスキーボイスが素敵だった。
今村 久世を演じた遠山さんの演技がツボに入っちゃった。踊りもキレがあったし。以前観た『Fly By Night~君がいた』にも出演されていたから気になったし、何より全体に重たい雰囲気が流れる内容だったけれど、彼がいてくれて和みました。本当はもっと大きな声で笑いたかったけど、堪えたわ。
栗原 もっとワハハと豪快に笑いたいよね。誰かが笑うと広がっていったりするけれど、マスクのせいで笑いが伝わりにくいというのもあるよね……。
三ツ井 shiro役の佐藤さん、歌が上手いしとっても舞台栄えするよね。いろいろなサイズの劇場で観たいなと思った。高橋由美子さん、私たちはアイドル時代のイメージがしっかり記憶に残っているけど、あんなに上手いと思っていなかった。本当に歌が上手いよね。
今村 羽場さんと高橋由美子さん、あのお二人のシーンは、すごく「ため」があっていろいろ考えられた。ミュージカルって音楽がつながってササーッと進んでいくと「あれ、今のって?」と思っているうちに場面が変わってしまったりして、慣れないとなかなか追いつけないこともあるけど、お二人のあの間が、私にはすごくいろいろ受け止めたり考える時間になって素晴らしかった。
三ツ井 梅田さんはまさにAKB時代に息子と一緒によくテレビで見ていた人。
栗原 彼女の役、茜さんは梅田さんが演じるととても説得力があるよね。
今村 竹内さんは声に透明感があって、役そのものという感じだった。
懸命さやまっすぐさを
疎ましく思ってしまう気持ちは
とてもリアル
栗原 SNSが味方にもなり、武器にもなる。なかなかヘビーだし、リアルでもある内容でしたが……。
三ツ井 shiroちゃんのような子、いるよね。だから藍生の気持ちもわかる。もちろん、彼のしたことは赦されることではないけれど、shiroちゃんの懸命さやまっすぐさを疎ましく思ってしまう気持ちはとてもリアルだった。
今村 藍生も自分の小説が順調だったらあんな態度はとらずにいられたんだろうに……。
三ツ井 でもさ、どの世界にもあるよね。自分が調子いいというか、相手が自分を超える存在ではないと思っているときは親切にしているのに、自分の立場が危うくなったり、思いのほかその人が伸びてくると余裕がなくなって……。なんか他人事ではないなという気がした。
今村 そこにSNSが加わってくるととても危険だよね。
三ツ井 視聴者もいい加減で、誰か叩く人が出来ると一気に書き込んだりする、それもリアルすぎて怖かった。
栗原 茜さんのエピソードもそれを表していたよね。いつ誹謗中傷がおさまったのかというと、突然飽きたみたいに終わったというのがホントにたちが悪い。
今村 書き込みした側は、罪悪感すら感じていなかったりするんだよね。
栗原 お二人の息子さん、娘さんはまさにSNSが身近にある世代だと思うけれど、そういう目線で見ると?
三ツ井 どうしてもSNSを鵜呑みにして「みんな言ってるよ」と言ったりするから、そういうことに関してはうちは主人が「みんなって誰のことだ、そこに書き込む人たちの意見が皆なのか!」と結構ガッツリいさめてます(笑)。
今村 無自覚に他人を傷つけてしまうことがあるSNSの怖さも描いているから、中高生とかにも観てもらいたい作品だなと思いました。
藍生は小説を書き続けている?
shiroはどこで歌ってる?
栗原 藍生のセリフに「物語の中の登場人物がその先どうなって行くのか。その未来を知りたいかどうかが物語だ」みたいなセリフがあるけれど、そこは観客の自由でもあると思うから、ちょっと考えてみません?
題して、彼らはその先どういう人生、暮らしになったかを勝手に想像しよう!の会(笑)。
今村 藍生くんは小説でやっと自分の書きたいものが見つかったわけでしょ。だからガツガツ書いて、それが当たって世に出ている感じだったらいいなぁ。
三ツ井 私はやってみたけどそう上手くはいかなくて、結局ものにはならない……。でも四の五の言い訳している自分じゃなく、ぶつかってみてやれたから悔いはないって感じで別のことをしているんじゃないかな。
栗原 全く違った意見で面白いね。shiroちゃんは?
三ツ井 shiroちゃんは普通に結婚して自分の子どもとかに童話をつくったり、歌を作って歌ってあげたりしていると思う。
栗原 なるほど、誰かのためになりたいというのが、歌手をめざしていた時は不特定多数を相手に考えていたけれど、具体的で身近な人のためにしてあげているような。
今村 すごい、面白い発想。まったく思い浮かばなかった。
三ツ井 幼稚園でボランティアで歌ってあげたり、サークルつくったりとかね。だってどんなに上手くてもなかなか成功するってないことだし。
栗原 そのほかの人は?
三ツ井 黒岩さんは、治療始めてそんなにすぐに再婚しちゃうんだぁ~って思ったけど(笑)。紫さんは、娘の死とは区切りはつけられたけど、たぶん相変わらず仕事に生きて、キャリアウーマンの道を進みそう。世が世なら選挙出ちゃったり。
栗原 選挙出るとか、選挙の裏暴くとかね。
今村 そうだね、あのまま仕事してまた報道の最前線に戻って、キャリアアップしてそう。
三ツ井 金銀(きらり)はよくわからないなぁ。ずーっとあんな感じのその日暮らしで食べていけたらいいかな、みたいな。で、アセクシャルだけど、ゆくゆくは気の合う男性と一緒に暮らしていそう。
今村 私は金銀には落ち着きと人間味をすごく感じたから、きっと彼なりの幸せをブレずに求めている気がするな。
栗原 金銀はもっと思春期とかに葛藤とかいろいろあって今に至ってる感じもするよね。
今村 そう考えると藍生くんの家庭環境、背景ってどんな感じだったのか見えないというか。もしかしたら金銀やshiroちゃんとは違ってとても恵まれているのかも。
三ツ井 ボンボンな感じもするよね。
栗原 でもshiroちゃんと金銀と仲良くなったわけだから、何か通じるものがあったんだよね。小説家って何かを背負っていたりするところから作品を生み出すイメージがあって、そういう意味では藍生は小説家をめざす境遇にはないんじゃないかな、なんて思ったりするんだよね。ライターだったらいい仕事するかも!?(笑)。
三ツ井 久世さんはニューヨークで大成功。ゴマすりとか、オーバーリアクションとか、向こうのほうがハマったりして。
今村 面倒くさいこと他人に押し付けるの得意だって言ってたしね。
栗原 茜さんは、局を辞めたというところで終わっているけれど、その後は?
三ツ井 アナウンサー経験も生かして、それこそフリーのライターとかやってそうな気がする。パワーはありそうだし。
栗原 あの作品を観た人たちが、彼らの未来をどんな風に想像するのか、いろいろな人の声を聞いてみたくなるね。今日はありがとうございました。そしてパンフレットご購入もありがとうございました!!
2021年 12月16日(木)〜26日(日)
俳優座劇場
脚本・作詞・演出/板垣恭一、作曲・音楽監督/桑原まこ
出演/矢田悠祐、高橋由美子、佐藤彩香、竹内將人、梅田彩佳、遠山裕介、羽場裕一
※パンフレット編集担当させていただきました。購入はコチラ