これは、主にその週イチに起こる、今や時空を自由に行き来する義母とその家族の、ちょっとしたホントの話だ。
2022年も義母宅はある。
「あけましておめでとう」と言っても、ピンとこない顔で出迎えられた。
でも、見栄えのいいおせち三段重と、好きな味付けのお雑煮は、もちろん抵抗なく食してくれた。
「なにか食べた?」
「ううん、食べてないよ」
「なに食べたの?」
「くだらないものだよ」
お正月だからおせちとお雑煮だということだけ、念押しした程度だ。
好物のエビは殻をむいて優先的に。
放っておくと手をつけない野菜やら何やらは小皿に取り分けて。これテッソク。そうやって元日の朝の食事を済ませた。
日本列島を寒波が襲っている。エアコンはつけていても古い家屋ゆえ足下が冷える。
いくつか用意していたミッションがすんなり終わってしまい、
手持無沙汰になったこともあって、突然、ラジオ体操をすることにした。
私がである。動画を流してスタートすると、
夫も立ち上がり、その場でラジオ体操第一。
すると、義母も椅子に座ったままラジオ体操第一を始めた。
曖昧な動きは全くなく、曲もリズムも完璧だった。
「すごい、さすが元体育教師、元体操部顧問!!」
狭い部屋で3人で真剣にラジオ体操第一をこなした。
午後になった。
寒いので毛布にくるまり横になることも多い義母。
合間に新聞の見出しを読んだり、年賀状の返信を書いたりするもすんなり終わってしまった。
手持無沙汰になったこともあって、ラジオ体操をすることにした。
私がである。動画を流してスタートすると、
夫は仕事に出かけたので、義母と二人でラジオ体操第二。
さすがに第二は覚えていまい。
すると、義母はまたも椅子に座ったままラジオ体操第二を始めた。
メロディを先んじて口ずさんでもいる。
曖昧な動きは全くなく、曲もリズムも完璧だった。
なんなら私がチラ見するほどだった。
「すごい、完璧。さすが元体育教師、元体操部顧問!!」
2人で真剣にラジオ体操第二をこなした。
「体が覚えている」というセリフはよく聞くけれど、89歳の体が正確に覚えていることに
感動すらしてしまう体験だった。
「これでおやつも堂々と食べれるね」
辻褄が合っているような、合っていないようなことを言ったのは私のほうだった。
ラジオ体操第一、第二。
週イチ義母宅のルーティンに加わりそうな予感がしている。