日常の中から、エンタメを整理収納目線、暮らしをエンタメ目線でつづります。
栗原のエッセイ、つまりクリッセイ。
数年ぶりに眼鏡を新調した。
コロナ禍でZoomをはじめ、モニター画面やスマホを見る時間が増え、
視力の低下が気になっていた。
といっても、私が眼鏡をかけるのは、主に観劇&映画鑑賞時と運転の時だけ。
極端に見えにくくなっているという自覚はなく、
どちらかといえば、なんとなく新しいデザインも欲しいし。
そんなところだった。
マスク生活が長くなり、ここしばらくはルンルンランランと眼鏡を店舗で試着するということも出来ずにいた。
誰かに「いいね」とか「こっちの方が似合うんじゃない?」なんて言われながら選びたかったので、それが叶う機会がようやく来て、いざ店舗へ。
雨降りの平日の夕方だったからだろうか、店は比較的空いていた。
初めの受付、検眼、お支払い、商品渡し時のフレームの調整とすべて担当が変わった。
それは別にいいのだ。どの担当さんも皆、丁寧だった。
問題はその丁寧にある。
お支払い時の担当さんは、すこぶる丁寧だった。なんとなくむずがゆい感じ。
執事萌えとかではないので、ときめくこともなく、さあ、お会計をとカードを財布から出した次の瞬間。
「カード両手で失礼いたします」
???
そして言葉通りその店員さんは両手で私からカードを受け取った。
「いや、全然失礼じゃないし。むしろしっかり丁寧だし」
と心の中で相当切れ味鋭いテンションでツッコミを入れた。
受け取った後も違和感しかない丁寧さで、それこそ
「カード両手で失礼いたしました」みたいなことを言われた気がする。
何か片方が使えず、「片手で失礼いたします」ならまだわかるけれど、
そうなると「手袋なしで素手にて失礼いたします」なのか、
「トレーでのやりとりじゃなくて、直接この手で取ってしまって失礼します」なのか?
もう訳がわからない。
そして、クレジット処理が終わるとカードをもちろん両手で返してくれた。
さすがに「両手でお返しします」とは言わなかった。
けれど、カードを受けとり、財布にしまった次の瞬間、
「レシートをおしまい下さい」
そう言ったのだ。レシートを私に渡しながら。
いや、しまうし。いや、しまわなくても勝手だし。
心の中でさらに鋭くツッコミを入れつつ、出来上がりの時間までの約30分をコーヒーを飲んで過ごそうと、すぐそばのカフェに移動した。
店を離れる私に向かって
「右足と左手を動かしてお歩きください」
とはもちろん言わなかったけれど、「丁寧」は度を超すと奇妙になる。
お渡し担当の眼鏡男子はいたって普通の対応で、最後に店を出る時は、店員皆で
「ありがとうございました」と送り出してくれた。
いや、くれたって、それはまあ、普通だけどね。
丁寧すぎてヘンになってしまう言葉遣いはよくある。
ヘンなマニュアルだなぁということも結構ある。
麻痺していくと、それが奇妙であることにも気づかなくなる。
なんとなく気を付けようと思いながら、新しい眼鏡を手にして、
気持ちは晴れやかだ。
ちなみに、検眼したところ、視力は落ちておらず、今使っている眼鏡よりほんのちょっとだけクリアーに見える度数で調整が完了した。
つまり、私の眼鏡は、1 in 1 outにはならず、プラス1になった。
それはどうなの? と思う人もいるだろうか。
でも、それでいい。眼鏡は気分や服装によって使い分けると決めている。
次の観劇には、このピンクのケースの新しい眼鏡を持って行くんだ。
眼鏡をかける時には、丁寧に取り扱うよ。
「眼鏡、両手で失礼します」と言いながらかけたりはしないけれど。