理由あって週イチ義母宅に通っている。
これは、主にその週イチに起こる、今や時空を自由に行き来する義母とその家族の、
ちょっとしたホントの話だ。
先月は、義母にとっての息子、すなわち私の夫の誕生日だった。
カレンダーにわかりやすく記入したものの、あまり気にしていないようだったが、
翌日が息子が来る日だったので、誕生日プレゼントを購入しようと、義母をスーパーに連れ出した。
この間までバレンタインコーナーだった棚が早くもホワイトデーコーナーになっている。
そこに立ち寄り、手ごろなサイズで手ごろな価格のチョコレートを選ぶことにする。
義母は自分の息子が結構なチョコ好きであることを知らない。
2つの詰め合わせで迷って、どちらがいいかを義母に決めてもらった。
「どっちがいいと思う?こっちのピンクの箱かな?それともこっちのブルーがいいかな?」
そうやって聞いてみると、義母はなかなか決められない。
「こっちだね。こっちかな。」
なぜそちらにしたいかという理由がくっつけられないようだった。
「どちらも好きそうだから、お義母さんの好みでいいよ。ピンとくるほうで」
まさか私にダメ出しをされると思っているの!?
いや、決められなくなるというのも、時の経過によるものなのだろう。
結果、ピンクの箱はチョコがバラの花になっていて少し女性っぽいので、
もう一方のブルーの箱に決めた。決めたというか、そこそこ誘導してしまったけれど。
帰宅してからそのチョコの箱にメモを書いてもらうことにした。
すでになんのために購入したかは、義母のあずかり知らぬことになっていた。
それでも根気よく説明する。
「〇〇様へ
おたんじょうびおめでとうございます。少しのものですがごししょくください。」
そのメモをチョコの箱に貼って、電話台に置いたのが2月のある金曜日のことだ。
翌々日の日曜日。義母宅に向かう夫に、着いたら電話台をチェックしてと伝え、LINEで速報を依頼した。
数時間後……。
それらしきものは見当たらないという。棚やら扉のついたものの中も見てもらうが
包装紙する見つからないという。
さあ、あのプレゼントのチョコレートはどこに行ったのだろうか。
旅をしているのだろうか。
それとも、義母の腹にめでたく収まったのだろうか。
私も夫もさほどショックでもなく、予想は二人とも後者で賭けにもならない。
でも過去にあった、旅するシリーズのように、驚く時期に驚く場所から出てくるかもしれない。
半月が経過した。
昨日はホワイトデー。夫が私にクッキーの詰め合わせとチョコをくれた。
そのチョコは、何を隠そう、
義母と私がスーパーで「どちらにしようか」と迷い、選ばなかったほうのピンクの箱だった。
もちろん、あの箱が引田天功ばりのイリュージョンでここに届いたわけではないけれど。