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「じゃあ、あんたが作ってみろよ」に観る整理収納

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ドラマの中には暮らしや整理収納のヒントがあふれている。
あのテレビドラマのシーンから整理収納のプロが分析・解説する!?
ちょっとニッチなドラマレビュー。

小さなころからテレビドラマが大好きです。
妄想癖がある私は画面を見ながら自由自在に思いを巡らせていました。
整理収納アドバイザーになってからはそのシーンや内容は「整理収納」とリンクしても楽しめるようになりました。

今回取り上げたドラマは竹内涼真さん 夏帆さん W主演の「じゃあ、あんたが作ってみろよ」です。
勝男(竹内涼真)と鮎美(夏帆)は大学時代から付き合っている恋人同士。同棲生活も長くなり、勝男は鮎美にプロポーズする。 ところが鮎美の答えはまさかの「無理」。
今までの人生をずっと完璧だと思っていた勝男は「なんで???」と混乱する。勝男はこれまで「料理は女がするもの」「好きな人の帰りを美味しいモノを作りながら待つのが女の喜び」と信じて疑わなかった。鮎美はそんな勝男の価値観に違和感を持ちながらもずっと受け入れてきていたのだが、それも限界を迎えていたのだ。 勝男は同僚や初めてできた女友達の影響から自ら料理をするようになったことをきっかけに、その価値観を変えてゆく。

一方鮎美は安定した人生のために男性から愛される女性を演じ続け、勝男にさえ本当の気持ちを言わずに暮らしていたが、もはや自分でも「本当の自分」がわからなくなっていた。ひょんなことから知り合った今まで周りにはいなかったタイプの友人たちからの影響もあり、だんだんと「本当の自分」と向き合ってゆく。果たして、勝男は鮎美を取り戻せるのか?鮎美は本当の自分を見つけてそれを好きな人に素直に見せられるようになるのか?

素直に言うことはいい事?

「顆粒出汁やめんつゆは手抜き」「レンチンのお弁当は手作りじゃない」「美味しいけど全体的に茶色い。彩りがね」……。次々と繰り出される、これは全て勝男のNGワードだ。
勝男は素直な性格だと思う。思ったことをそのまま、何の忖度もなく言ってしまうのだ。
言われた相手の気持ちを考えることなく口をついて出てしまっているのだろう。さらに、言われた人の表情も見ていないから、自分の言葉のとげに全く気付かず生きてきた。何を言っても「大好きで、信頼している鮎美が笑って聞いてくれているからこれが正解!オレは完璧!」と全く自分の非に気づくことなく今日まで来てしまったのだ。 世間からは「かなりズレた人」だけれど、幸せだったことだろう。
ところが、鮎美にプロポーズを断られ、出ていかれてから漸く、自分のしてきたことを振り返ることになる。
最初に勝男は会社の同僚に言われて筑前煮を作ってみる。出汁を1から作る事、野菜を飾り
切りにする事、何もかもが初めてで、勝男は四苦八苦し、大好きな筑前煮がどんなに手間がかかっているのかを知るのだ。そしてできた筑前煮は鮎美のそれとは遠く及ばない代物だった。
勝男はようやく、こんなに手間のかかる料理を「女だからやるのが当たり前、むしろオレのために喜んで作っている」などと考え、そして言葉にしてきた愚かさに気づき、涙するのだった。

素直に思っていることを言うことはとても大切なことだ。ただ、それを聞く人がどんな思い
で受け止めるのか、勝男にはその想像力が欠けていた。 自分の知らない、やったことのない事に対して受け入れる、理解しようとする姿勢がなかったのだ。
けれどそんな自分に気づき、勝男は言っていた「変わりたい!!」と。
とにかく素直な勝男は優しい同僚にも恵まれ、弱い自分もさらけ出して、周りの人を理解しようとどんどん行動し、新生勝男に成長している。
その成長っぷりはすさまじく、まるでティーンエイジャーのように吸収していくので、見ていて微笑ましく、応援したくなる。

伝えること、やってみることが大事

このドラマを観て私は思うのだ。
ああ、お片付けも一緒だな。
世の中の男性はまだまだ家を整えるのは女性の方が……と思っている節がある。
あくまで夫はアシスタントでメインは妻、的なスタンスを感じるのだ。
勿論、お互いがそれでよいバランスならば問題ないが、度々現場では主婦の嘆きを耳にするのだ。だから私は尋ねてみる。
「それ、お互い話してみましたか?」
同じ家事をしていても、楽しくやっているのか、いやだけれどやらなければならないからやっているのか、やらないのに相手の家事に口出ししていないか、感謝の気持ちはちゃんと言えているか、細かいようだが気持ちは口に出さないと伝わらないし、口に出すことで改めて自分の気持ちに気づくこともあるものだ。

もう一つ、このドラマで大切なことは勝男が実際に鮎美と同じように料理をやってみるとい
う過程だ。さらには勝男がどんどん料理にはまってきているという事実が嬉しい。
食べてくれる人を想い、手をかけて準備をし、「美味しい!」と喜んでくれることにいつの間にか勝男自身が喜びを感じ始めているようだ。それと同時に作りもしない人からの心無いジャッジに傷つくことも経験できたことで自ら反省することもできている。
だからどんな家事も「じゃあ、あんたが作ってみろよ」精神で 「やってみる」事が大事だ。
勝男と別れた後に新しい恋人を作って一歩を踏み出したかに見えた鮎美も勝男とのことは
自分にも原因があったのかもと気づき始めている。
相手に迎合していた自分の態度にも問題があること、 勇気を出して本当の気持ちを相手に伝える事の大切さに気付き始めているようだ。

さて、それにしても毎回出てくるお料理の丁寧さに、あんなに丁寧にお出汁取ったの何年
前? と思ってしまう私。 美味しそうなおでんも筑前煮もやっぱり出汁が命となると柄にもなくお出汁から作ってみようかななどと思いながら若い二人を見守っている。

文・みのわ香波
ひつじPlanning主催 整理収納アドバイザー。
ドラマを観る時は「ながら観」はせず、できれば一人でじっくり派。
登場人物の観察からの妄想がルーティン。
ドラマは「暮らしを切り取ったもの」、整理収納は「暮らしそのもの」
「映画に観る整理収納」「ドラマに観る整理収納」(ブログ専用ver)はひつじPlanningのちょっとずつお片付けでゆるっと掲載中。
じゃあ、あんたが作ってみろよ

放送:TBS 毎週火曜 よる10:00〜
原作:谷口菜津子「じゃあ、あんたが作ってみろよ」(ぶんか社「comicタント」連載)
脚本:安藤 奎(劇団アンパサンド主宰・岸田國士戯曲賞受賞)
   加藤法子、上野詩織
音楽:金子隆博
出演:夏帆、竹内涼真、中条あやみ、青木 柚、前原瑞樹、サーヤ(ラランド)、楽駆、
杏花、平原テツ、安藤輪子ほか