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ハワイアンダイニングの悲劇!?(後編)

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日常の中から、エンタメを整理収納目線、暮らしをエンタメ目線でつづります。栗原のエッセイ、つまりクリッセイ。

レンタカーを返却しにいったはずの夫から財布を失くしたという電話が入り、近所のハワイアンダイニングに飲食代を持ってきて欲しいという連絡が入ったのが前回。

ハワイアンダイニングの悲劇(前編)日常の中から、エンタメを整理収納目線、暮らしをエンタメ目線でつづります。栗原のエッセイ、つまりクリッセイ。夫から財布を失くしたというSOSの電話が鳴った。ラッキーな日のはずが、ついていない日になりそうだ。手持ちがないのでお金を持ってある場所へ届けて欲しいという。 ...

家から徒歩10分のところにあるハワイアンダイニングへ向かう道で、私は何度も考えていた。財布はレンタカーの中にポトリと落ちているのではないだろうか。
今日は理由あって夫が後部座席に座ることがあったので、その時に落としたのかもしれない。暗めの色の財布だから足元に落としたらあまり目立たないしな。

でも、だ。
とりあえず店を出るなら、財布が車の中にあるかもしれないから見に行くだろう。
当然そうするだろう。私ならそうする。
今日に限って財布の紛失はなかなかしんどい。しんどいことは重なるものだ。

西日と闘いながら店に向かった。
すると携帯電話が鳴る。
「 Ohanaへは来てもらえます? 食い逃げになっちゃうから」
私から質問する猶予はなく、夫は困った声でそう言った。
「今、向かってますよ。あと3分で着きますけど……」
イライラが声に出てしまった。
これで車の中に財布が落ちていたら、ムキーッてなるぞと思いながら店への歩みを進めた。

駐車場にレンタカーが停めてあった。
外からのぞき込むと、後部座席の下に夫のバッグが置かれている。
おいおい、なんでこれ、ここにあるんだ?
イライラと共に、なんとなく希望が見えた。
でもなぁ、出入口の近くに車は停めてあるし、確認していないわけないよなぁ。
また一瞬の間にそんなことをぐるぐると考えながら、ハワイアンダイニングの扉を開けた。

「アロハ~~!!」陽気な声とココナッツの香りが出迎えてくれた。
案内されそうになったので、待ち合わせだと伝えると、待ちくたびれた顔の夫がBOX席から立ち上がりこちらに近づいてくる。

伝票を受け取りながら「車の中は見た? バッグが置いてあったよ」
「だって一人だから、金払えないから食い逃げになっちゃうから」

今日だけで何度食い逃げという単語を聞いたことだろう。
会計をしながら、「これで財布見つかったらコーヒーごちそうしてもらうからねっ!」
店員さんに目くばせしながらそんな軽口を叩くと、店員さんは微笑ましそうな!? 顔でこちらを見た。事情を察してくれていたのかどうかわからないが、きっと察してくれたろうと思いながら店を出て、レンタカーに向かう。

「ほら、バッグ。もう全部中身だしてみな!」
整理収納アドバイザー的パワーワード、全部出し指令である。
夫は慌ててバッグを確認するも、「ない」と諦め顔で運転席に乗り込んだ。

その2秒後。
私がバッグを探ると財布はサイドの仕切りにしっかと入っていた。

良かった! と、ふざけんな!と、は、なんで? と、良かった! と、
だからさぁ……と、良かった! っと、ちょ、待てよ!! みたいな言葉と感情で
長財布で夫の腕をバシバシ叩いた私は、
これはパンケーキ案件だぞと告げた。そして、記事にするぞと重ねた。

どちらの了承も取って、二人で再びハワイアンダイニング La Ohanaの入口の扉を開けた。
「アロハ~~!!」陽気な声とココナッツの香りが出迎えてくれた。
(終わり)