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「老害の人」に観る整理収納

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ドラマの中には暮らしや整理収納のヒントがあふれている。
あのテレビドラマのシーンから整理収納のプロが分析・解説する!?
ちょっとニッチなドラマレビュー。

小さなころからテレビドラマが大好きです。
妄想癖がある私は画面を見ながら自由自在に思いを巡らせていました。
整理収納アドバイザーになってからはそのシーンや内容は「整理収納」とリンクしても楽しめるようになりました。
今回取り上げたドラマは伊東四朗さん主演の「老害の人」 です。

主人公の戸山福太郎(伊東四朗)は、妻を亡くし、長年経営してきた会社「雀躍堂」を娘婿に譲って引退を宣言する。 ところが、引退したはずなのに何かと会社に顔を出し、昔の自慢話や経営者としての心得を語りに来る。
本人に悪気はないけれど、周囲にとっては少々ありがた迷惑な存在に。おまけに娘家族との同居も始まり、雲行きはだんだん怪しくなっていく。
内館牧子さんの同名小説を原作に、2024年にNHK BSでドラマ化された作品。錚々たる
俳優陣の共演も見どころ。

笑ってばかりはいられない

福太郎の周りには、病気自慢のおじいさんや、「早く死にたい」が口癖の元気なおばあさんなど、思わず笑ってしまうような人たちが登場します。
でも、自分が「老害」と呼ばれる年齢に近づいてくると、笑ってばかりもいられません。「気をつけなきゃ」と自分を戒める気持ちにもなります。
福太郎も、辞めた会社にたびたび出かけては煙たがられるわけですが、思えば、自分が長い年月をかけて築き、大切にしてきたものだもの。難しいよね、と同情の気持ちも湧いてきます。
ましてや妻を亡くした福太郎にとって、会社は仕事や財産というだけでなく、自分の居場所であり、心の拠り所でもあったのでしょう。

手放した、その先のこと

整理収納の現場でも、似たようなことを感じる場面があります。
長年大切にしてきたもの。
家族のために選んだもの。
まだ十分に使えるもの。
そこには、ものそのものの価値だけでなく、思い出や愛着、積み重ねてきた時間があります。
だからこそ、手放すことを決めても、その先が気になってしまう。
誰かに譲ったものが大切に使われているか。自分が思い描いたように役立っているか。
でも、誰かに譲ると決めたなら、そこから先はもう相手のもの。
たとえ自分の望むように使われなくても、そのまま朽ちてしまったとしても、それはもう寿命と受け入れるしかないのかもしれません。
手放すというのは、ものを手元からなくすことだけではなく、その先を相手に委ねることでもあるります。
言葉にするのは簡単ですが、実際にはなかなか難しいことです。
一方、手放すことにもさまざまな形があります。
ドラマには、後継者のいない農場を自分の代で終わらせようとする経営者も登場します。
「惜しまれているうちが花」と考えるそんな思いに対して、若い世代からは、培ってきた技術や技能を次につなげるべきではないかという意見も出てきます。
続けることも、終わらせることも、誰かに託すことも。
どれが正しいというわけではなく、それぞれに事情と覚悟があるのだと思います。

これからの自分は、何を見る?

そして、もう一つ印象に残ったことがあります。
ドラマには、あまり上手とはいえない俳句を詠んだり、好きな絵を描いては人にプレゼントしたりする夫婦が登場します。
もらった側は少々困惑しているのだけれど、本人たちはいたって楽しそう。
自分の好きなことがある。
夢中になれることがある。
そして、そんな姿を笑って話せる友人や家族がいる。
ふと、「自分の視線がどこに向いているのかが大切なのではないか」と思いました。
これまで築いてきたものを見つめ続けるのか。それとも、これからの自分が楽しめるものに目を向けるのか。
もちろん、過去を大切にすることが悪いわけではありません。積み重ねてきた時間があるからこそ、今の自分があるのですから。
でも、年齢を重ねたとき、本当に大切なのは、手に入れたものや築いてきたものだけではないのでしょう。
これからの自分が何を楽しみ、誰と笑って過ごしていくか。
むしろ、そちらにこそ目を向けていたいと思うのです。
整理収納は、ものを選び、手放し、暮らしを整えること。
でも、その根底にあるのは、今の自分にとって何が大切なのかを見つめ直すことでもありま
す。
大切にしてきたものを手放すのは寂しい。
けれど、手放したからこそ見えてくる新しい楽しみも、きっとあるはず。
そんなことを、笑いながら、少し身につまされながら考えるドラマです。

伊東四朗さんのこと

最後に少しだけ。
実は私、伊東四朗さんの大ファンなのです。
ドラマの中では往年のギャグ「どうかひとつ!」が聞けたり、クスッと笑える嬉しい場面もあります。(前田吟さんのセリフに「タコの社長」なんて言葉が登場したりも!)
先日も舞台を拝見してきたばかり。
東京喜劇を長年、実直に守り続けてきたその生き方と芸には、いつも心を動かされます。
そんな伊東四朗さんが、来年6月15日90歳の誕生日をもって引退することを発表されまし
た。
長く続けてきたことに、自ら区切りをつける。
その引き際の美しさにも、心を打たれました。
一人のファンとして、その芸を長く楽しませていただけたことに感謝するばかりです。
寂しいけれど、最後までかっこいい。
やっぱり大好きな方です。

文・みのわ香波
ひつじPlanning主催 整理収納アドバイザー。
ドラマを観る時は「ながら観」はせず、できれば一人でじっくり派。
登場人物の観察からの妄想がルーティン。
ドラマは「暮らしを切り取ったもの」、整理収納は「暮らしそのもの」
「映画に観る整理収納」「ドラマに観る整理収納」(ブログ専用ver)はひつじPlanningのちょっとずつお片付けでゆるっと掲載中。
老害の人

放送:NHK 毎週土曜 10:00~ 再放送 毎週水曜(火曜深夜)0時35分~
原作:内館牧子「老害の人」
脚本:真辺克彦、小嶋健作、大島まり菜
音楽:安川午朗
出演:伊東四朗、夏川結衣、勝村政信、前田吟、日色ともゑ、小倉蒼蛙、白川和子、羽田美智子、望月歩、木竜麻生、田島令子、高橋惠子、三田佳子 ほか