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八月納涼歌舞伎_当たり役に出会う夏

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歌舞伎をほぼ毎月楽しんでいる60代男性。毎月観るために、座席はいつも三階席。
印象に残った場面や役者さんについて書いています。

今月は、二日に分けて観劇にいきました。
まずは初日の第三部です。なぜ初日にこだわったか、それは坂東玉三郎さんのお姿を早めに観たかったからです。
最近は、お目当ての方が、病気などで休演したときの切符を二度も買っている運のないことも多かったので、玉三郎さんのお姿をまずは見たいと考え初日を選びました。

第三部「一、舞鶴雪月花(ぶかくせつげっか)」

本作は十七世中村勘三郎さんの求めで作られた変化舞踊です。
今回は、中村勘九郎さん、中村七之助さん、中村勘太郎さん、中村長三郎さんが踊られました。<上の巻>の「さくら」を七之助さん、<下の巻>の「雪達磨」を勘九郎さんが舞いました。
特筆すべき<中の巻>「 松虫」で、松虫の親子を勘太郎さん、長三郎さんのご兄弟で演じたこと。十七世が創作し、十八世勘三郎さんと演じた演目を孫、ひ孫が演じるというのも歌舞伎の伝統を感じました。

第三部「二、雪」「三、残月」

いよいよ坂東玉三郎さんの登場です。地唄という江戸時代に上方で作られた三味線歌曲で玉三郎さんが一人で舞台で踊られます。
正直なことを言えば、派手な踊りもなく、解釈が難しいと感じました。
でも玉三郎さんが観られただけで大満足でした。

今月二度目は、お盆休みを利用して歌舞伎座に行きました。第二部の観劇です。

第二部「一、らくだ」

上方落語をもとにしたお話です。昨年11月に急逝された片岡亀蔵さんを偲んでの上演です。
「らくだ」というあだ名の遊び人の馬太郎が、ふぐの毒で死んでしまうところからお話は始まります。片岡亀蔵さんが当たり役として演じられていたのは、この死体となった馬太郎役でした。
今回は、遊び人仲間の半次を松本幸四郎さんが、紙屑買の久六を中村勘九郎さん、馬太郎を片岡市蔵さんが演じました。
馬太郎の葬儀をやるからと、酒やつまみをたかろうとする半次と、気が弱くそれに付き合わされる久六。その様子が面白く描かれます。
馬太郎は死体の動きをしたり、途中で支える人間がいない状態で踊ったりする様子がユニーク。久六が最後に酒に酔い、半次に強気な口調で話す場面は見ものでした。

第二部「二、鬼神のお松(きじんのおまつ)」

第二部は、「らくだ」を目当てにしていたのですが、終わってみたら、こちらの演目の方が印象深かったです。
その理由は、鬼神のお松の中村七之助さんが娘、稽古所の師匠、女盗賊と様々に姿を変え、いろんな姿を見せてくれたこと。
七之助さん演じるお松は、江戸時代後期に登場した「悪婆」という役柄です。

妖艶な美女でありながら、強請騙りや殺人も厭わないが、悪事を働くのも愛する男や家族のためという美学がある。
可愛らしい娘の姿で、亭主が失くした宝刀を探すため、侍を殺してしまうシーンから始まり、女盗賊の親玉として、何人もの男を統率しているところは、特に立ち回りもかっこいいです。
また、赤子をあやしているところは、愛情深い母親の様子を見せ、盗賊として捕まってしまった後には、愛する赤子を「自分の子ではない。」と言って、他人に預け引っ込む。
親子の別れの悲しみがとても心に響きました。

今作は62年ぶりの上演だそうですが、中村七之助さんの魅力を、ふんだんに観ることができた素晴らしい演目でした。これは当たり役と言えるのではないでしょうか。

役者にとっての「当たり役」は、歌舞伎ファンが作品を観てみたいと思うきっかけになります。同時に、「当たり役」と言われるのはそう簡単なことではないはず。それは一歌舞伎ファンの自分でも想像がつきます。
これからもたくさんの役者の当たり役に出会いたいなと感じた八月納涼歌舞伎でした。

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歌舞伎座「八月納涼歌舞伎」が開幕をご覧ください。

文・片岡巳左衛門
47歳ではじめて歌舞伎を観て、役者の生の声と華やかな衣装、舞踊の足拍子の音に魅せられる。以来、たくさんの演目に触れたいとほぼ毎月、三階席からの歌舞伎鑑賞を続けている。特に心躍るのは、仁左衛門丈の悪役と田中傳左衛門さんの鼓の音色。