ステージには神様がいるらしい。 だったら客席からも呼びかけてみたい。編集&ライターの栗原晶子が、観劇の入口と感激の出口をレビューします。
※レビュー内の役者名、敬称略の場合あり
※ネタバレ含みます
この日のエヴァン役はあの吉沢亮さん。
あの、と書いてしまうのは、昨年の映画「国宝」でさまざまな賞を獲得した彼だからなわけだけど、実は舞台もこれまでに出演されていて、2022年の『マーキュリー・ファー』や、別のキャストで観たけど2020年にはミュージカル『プロデューサーズ』にも出演されている。
2017年のトニー賞をにぎわした本作の日本初演、チケットはかなりの争奪戦だったという。
(観れた私は大ラッキー)
ママ、
「大丈夫」って言葉は、今の段階では彼には空しく聞こえるワードナンバーワンなのに違いない。
ジャレッドを演じるのは、須賀健太さん。エヴァンをからかってみたり、ちょっと悪ぶってみたりする感じも高校生らしい。映画版でもそうだがジャレッドも実のところそんなに社交的なタイプではないしね。
アラナを演じるのは、高野菜々さん。登場シーンのボリュームの関係であまりアラナが抱える繊細な部分の見せ場は多くはないけれど、彼女がエヴァンと交流したことも、彼の人生になかなかのインパクトを与えている。
舞台だから体や顔は客席に当たり前に向いているわけだが、相手の顔を正面から見ずにいる感じが、ネット上でやりとりにやけに
手紙は彼のポケットから見つかる。
コナーには親愛なると書くような存在の友がいたと、コナーの家族は勘違いをしてしまう。
コナーの母・シンシアを演じるのはマルシアさん。父親のラリーを演じるのは石井一孝さん。
突然息子を失った家族は、息子に大事な友人がいたと思い込み、喜び、エヴァンを大切に迎え入れた。コナーの妹・ゾーイを演じるのは松岡茉優さん。兄とは相いれない関係だった。
そしててゾーイはエヴァンが秘かに思いを寄せていた相手でもあった。こんな風に細かく設定をなぞりたくなってしまうのは、ミュージカルを観に行く当日に、2021年に公開された映画「ディア・エヴァン・ハンセン」を見て、予習していったせいもある。
また、この作品に登場する人物たちが、皆、それぞれに繊細で、痛みを抱えているからでもある
はがゆいけど、それこそがリアルで、だから希望も感じられる気がした。物語の前半、エヴァンがコナーを追悼する集会で、アラナの呼びかけでスタートするプロジェクト立ち上げに際しスピーチをするシーン。
吉沢さんの演技が際立った。
1階最後列で観ていたが、私にしてはめずらしく!? オペラグラスを離せなかった。
小刻みに震える声、手元。自分を奮い立たせる様子と、自分ではブレーキをかけることができない怖さ。
そして、その加速した感情がそのまま、SNSによって拡散されていく恐怖。
これに関しては、現代を生きる私たちが身をもって知っていることだけに、こうして観ている自分たちもアクセルをさらに踏み込んでいる一因のように思えて恐ろしさを感じた。
幕間にご一緒した方とそんなことを思わず口にするほどだった。二幕。嘘は当然ながら露呈していく。
もしこれが現実社会においてSNS上だけの事象だったら、そこから負の連鎖がつづいていく……なんていう展開にだってなり得るのだろう。
物語で良かった。とはいえ、ただただハッピーな結末というわけではない。
ちゃんとほろ苦い。
でも、この登場人物たちのその後の暮らしを想像したとき、きっと、皆がみな、寄り添うことにちょっとだけポジティブになっているだろうと思えた。
その距離は近ければいいわけでもないし、離れれば安心というわけでもない。
でも、それぞれの歩幅できっと誰かは誰かに寄り添えていくはず。
エヴァンが自分宛てゃなく、誰かに宛てて手紙を書いてくれていたらいいなと願いながら、
劇場を後にした。
2026年7月25日(土)~8月23日(日)
EXシアター有明
2026年8月29日(土)~9月6日(日)
御園座
2026年9月10日(木)~9月21日(月祝)
梅田芸術劇場メインホール
脚本/スティーヴン・レヴェンソン
作詞・作曲/ベンジ・パセック/ジャスティン・ポール
演出/小山ゆうな
出演/吉沢亮、堀内敬子、松岡茉優、広瀬友祐、須賀健太、高野菜々、マルシア、石井一孝ほか
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