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カフェオレ色の海の果て

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日常の中から、エンタメを整理収納目線、暮らしをエンタメ目線でつづります。栗原のエッセイ、つまりクリッセイ。

平日昼間の電車内。おそらく20代のおしゃれなカップルが乗っていた。
女性が座り、男性は立っていた。

……と、何かのタイミングでべシャーッという音がして目の前がカフェオレ色に染まった。どうやらコーヒーショップのカフェオレがこぼれてしまったみたいだ。
奇跡的に本人たちも含め周囲の人にかかったりすることはなくて、でも結構な量のカフェオレが電車の床にこぼれてしまった状況だった。

隣の人が、向かいの人が次々に「使ってください」とティッシュペーパーを差し出すと、彼らはせっせと床を拭き始めた。
なおもティッシュペーパーの差し入れは続く。私もリュックを漁り、ポケットティッシュを取り出し、彼女に渡した。
ゴミ入れに使って! とチャック付きのビニール袋を渡す人もいた。

だいぶ床が片付いてきたところで、電車が多くの人が降りる某夢の国最寄り駅に着く。
普通に見たら彼らはここで降りるのだろう。
その時、床は完璧にキレイという状況ではなかった。

男性が拭くのをやめた。
ま、まさかこの感じでキミたちは降りるのか?
と一瞬、宮崎駿の映画タイトルみたいなギモンを頭に浮かべていると、今度は彼女がしゃがんで、床をキレイに拭き残しがないように拭いた。

電車は某夢の国を過ぎた。
差し入れられたティッシュペーパーをほぼ使い切り、床はキレイになったところで二人は次の駅で電車を降りた。

ホームに降りた二人を目で追うと、反対ホームで電車を待つ姿が見えた。
やはりあの夢の国に行くんだね。

彼らがしたおそらく当たり前のことを目にして、なんだか少し嬉しいというか、ホッとした。
今夜は、バッグの中にポケットティッシュを補充しながらそんなことを思う人が、私以外にも何人かいるに違いない。