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人生の折り返しにとんぼ返り

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日常の中から、エンタメを整理収納目線、暮らしをエンタメ目線でつづります。栗原のエッセイ、つまりクリッセイ。

いつもは義母宅に行く曜日だが、今日はバースデイ休暇扱い。
そんなわけで、今日は免許証の更新に出かけた。
念入りに準備をして。理由はアノ証明写真の呪い参照。

お気に入りのシャツを着た。ピスタチオグリーンのシャツは着心地も発色も今、一番気に入っている。
グレーのポロシャツでベージュのリップで撮った免許証写真の仕上がりが、女囚感たっぷりだった過去もあるから、そこはもう、発色の良さ大切。

髪の毛もいつもより念入りにブローし、眉毛、マスカラ、チークも入れて、久々に口紅も塗ったし、
いろいろ間に合わなかった感もあるので頬の下にシャドウも入れた。
白マスクだと外した時に、「ゲッ、茶色のシャドウ落ちてる!」みたいになるかもしれないから、今日はカラーマスクにしておこうと念には念を。

免許センターまでは、電車で数分、そこからバスで数分。
さほど遠くはないが、最近はすっかり足を向けない方向にある。

免許センター前の停留所に到着したころで、ハッとなった。
「眼鏡をわすれてしまった……」

免許センターまで車で来る時は、当然かけていたわけだが、日ごろ、運転と観劇の時にかける以外はしていないので、電車で来た今日はうっかりしてしまった。
あきらかな失態。
ハガキに書かれた「手続きに必要な物」の項目も見たじゃあないか。
これはただの言いがかりだが、ハガキの項目は

①運転免許証(停止中の方は停止処分書) ②このハガキ
③手数料 ④眼鏡等(視力検査に不安のある方も含みます)
⑤高齢者講習終了証明書
⑥写真1枚(下記参照)

と書かれていた。ある、たしかに書かれている。④に。
でも②と④は見落としやすいよね。
うん、これは言いがかりじゃない。自分が何か項目立てて書くときは、スペースの都合はあってもなるべく左揃えにしようという教えだ。

免許センターの入口係員の方に聞いてみる。
「眼鏡を忘れてしまったんですが、更新は受けられないですよね……」
係の方は、「そうですねぇー」と言いながら、「念のため中の方に確認してください」と言った。

入口を入り、ものすごい勢いで人の列を捌いている係のおじさんに再び。
私「あのぉ、眼鏡を忘れてしまったんですけど、ないと更新できないですよね……」
係のおじさん「条件が眼鏡あり、なんでしょ」
私「はい、運転する時だけ眼鏡なんです」
係のおじさん「眼鏡ありなら、なければ視力検査に通らないでしょ」
私「そ、そうですね。出直します」

係のおじさんは冷たく言い放った。一瞬、そんなキツイ言い方しなくてもいいじゃない……
と思ったけれど、一日中、毎日のようにこういう類のアホな質問をされていたら
感情なくなるよなというのも、まあ理解できる。

何より、私自身がアホアホ、バカバカ! と思っているのだから。
あの念入りな写真対策は日を改めてということになる。
と、免許センター敷地内に、献血センターがある。
もう、アホすぎるから献血くらいして帰るか? などと頭によぎりながら、
私の代わりに今日は義母宅にいる夫に「アホしちゃったわ~」と電話をした。

電話を切って、再び献血センター入口に目をやると、
「受付中」の看板がちょうど外された。
はい、そうね、素直にさっさと帰りなさいということよね。

ちょっとお腹もすいていたけれど、駅にあるカフェはレジ前に行列を作っていた。
はい、そうね、素直にさっさと帰りなさいということよね。

行きはJRで来たけれど、気分を変えて帰りは違う路線で帰ろう。
駅の改札は二つの路線が並んでいる。
そうして電車に乗り込み、スマホに届いたメッセージをチェックしたり、SNSを見たりしていたら、その路線は私が戻りたい駅とは違う経路を走っていた。

普段乗り慣れない路線なのに、地元ローカル線だからと油断していた。
なんてこった。眼鏡をかけていないからというわけではなく、ただただ注意力が散漫だったのだ。
気づいた次の駅で降り、戻る電車を待つ。

10代後半から都内へ出かけることが多かった。
都内に行くときは、わざわざ出かけていく感覚が今でもどこかにある。
対して、県内は実はあまり行き慣れていない割りに、緊張感に欠ける。
これが事実だ。

地元ローカル線のアナウンス、上りは俳優の濱田龍臣さん、下りはシンガーソングライターの奥華子さんが担当されている。
アホアホ、バカバカ! と電車を待っていたところに、濱田さんの「まもなく……電車が参ります」のアナウンスが聞こえた。驚くほど癒された。声って大事~。

そうして、余計な時間をたっぷり使って、当初の予定は何も果たされないまま
ようやく帰宅した。
免許証更新はまた改めて。

ハガキをもう一度見たら、持ち込み写真で免許証作成希望も出来るんだね。
いや、持ち込めるように出来のいい写真があるわけでもないけれどさ。