理由あって週イチ義母宅 PR

こし餡の効果

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理由あって週イチ義母宅に通っている。
これは、主にその週イチに起こる、今や時空を自由に行き来する義母とその家族の、
ちょっとしたホントの話だ。

浅草で私の両親と「新春浅草歌舞伎」を観た。ロビーには売店が出ていた。
和装小物の店、おこし、もなかアイスも。
母は30分の幕間中にすかさず、おこしと人形焼きを購入していたらしい。
歌舞伎見物って言うのは、こういうのもお楽しみのうちなのだ。

新春4日とあって、仲見世から浅草寺にかけては大変な混雑だったので、私たちはそこを避けて公会堂に向かっていたこともあり、ロビーで買い物が出来たのは嬉しかったみたいだ。

人形焼は義母宛にということで手渡された。
何より喜ぶぞ。明日のおやつはこれで決まりだ! と、私も何より喜んだ。

翌日の週イチ義母宅。いつものようにランドリー経由スーパーでの洗濯と買い物を済ませて戻ると、義母はすっかり寝込んでいた。
私が「ただいま」と戻ると、「早かったね」とか「朝早くから大変だね」と声をかける。
今日だけでももう何度目かの朝を迎えているのだ。

「お義母さん、朝じゃないよ。時計見て!  昼間の3時だよ」と知らせる。
「ああそうか」と興味なさそうに答えるので、
お湯をわかしてお茶の時間にしようと提案する。

人形焼を母からだと言って渡すと、「あら、悪いねー。いいものいただいちゃって」と言いながら、手と目は人形焼にロックオン。
取り出してお皿に出すと、形には興味を示さず、すばらしき勢いで口に入れた。
「これ、おいしいよ!」
浅草寺の五重の塔の形の次は、雷門の大提灯の形の人形焼を手に取って口に入れた。

このままだと8個入りがあっという間になくなりそう。
そう思った私は、携帯電話から母に電話をかけた。
実は初めてではないが、久しぶりの試みだ。

「お義母さん、今からうちの母に電話かけるから。この人形焼をくれた私の母ね!」

いわゆるこれはお礼の強要か?
でも「ありがとう」は言うのも言われるのもいいものだから、強要でもよしとしよう。

「もしもし……」
よそ行きの高い声で、義母と母は普通に会話をした。
義母は母の顔を覚えてはいないだろうけど、私の母だということは直前に伝えたので、
その上で会話が成立していた。
私の母は母で、
「お元気ですか? 痛いところやどこか調子の悪いところはありませんか?」とたずねる。
義母は、「今はどこも悪くないんですよ」と答えた。

ヘルパーさんのノートにも、トイレに立つ時も腰を痛そうにしているのに、どこも悪くないというのは、やはり外向きのスイッチが入っているのだろう。

状況を多少なりとも知っている母は、
「それは何よりですね。私はダメなんですよ、腰が痛かったりすることがあって」と言う。
すると義母は
「あちこち痛くなったりするのはしょうがないですよ」と諭していた。

私はそのやりとりをニヤニヤ聞きながら、電話をかけて良かったなと思う。
「おいしいものをありがとうございました」
「お口にあったのでしたら良かったです」
そんなやりとりもして電話を切った。

次の瞬間3つ目の人形焼を食べ、終わるや否や4つめのビニール包みを剥がそうとしたのを見て、
「はい、残りはまたにしよう。夕飯食べられなくなっちゃうからね」
と、残りの人形焼は奥へ一旦引っ込めた。

つぶ餡派の私は、こし餡の人形焼がさほど魅力に感じないこともあり、1個で十分満足。

その後、「8個入りの人形焼を1個は私、3個は自分で食べました。残りは何個ですか?」 なんていう平和な算数ドリルをすると、
「腰が痛い」と横になりいい気分でお昼寝に入った義母。

こし餡と腰の痛みにはたぶん、なんの因果関係もない。