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さわやかなもちろん。

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日常の中から、エンタメを整理収納目線、暮らしをエンタメ目線でつづります。栗原のエッセイ、つまりクリッセイ。

気温があがった週末、取材帰りに途中下車をして、数年ぶりに学生時代の友人と再会した。
学生時代、そして社会人になってから幾度となく食事を共にしたその友人とファッションビルの中のレストランフロアで遅い昼食をとることに。

「パスタもいいね」、「カレーもいいね」とフロアをぐるりと一周してどちらの店にするか迷った後にその店に決めた理由は「明るいから」だった。
久しぶりに会って、久しぶりに食事するなら、そしてこんなに天気のいい日なのだから
明るい方がいいなと思った。
表現しづらいけれど、でも互いにそう思ったのだった。
結果、その選択のおかげで何やら嬉しいことがあった。
このお店のウェイターさんとのやりとりをご紹介しよう。

そのウェイターさんは、背が高く、小顔でモデルや俳優のお仕事していてもおかしくなさそうなシュッとしたやさしいお顔のイケメンさん。
友人曰く、山Pみたいと言っていた。

彼がメニューを置きに来てくれた時に、本日の〇〇、具体的にはパスタとケーキについて説明があった。
これは普通、というか、当たり前のこと。
違ったのはケーキの説明をした時に、申し訳なさそうに、
「ただし本日、こちらのくるみのケーキが終わってしまいまして……」と言ったことだ。
ケーキをオーダーする時、ようやく決めて頼んだら、ないと断られて少々がっかりして、また選び直すという経験をしたことはよくあるのではないだろうか。
先に伝えてくれるのは親切だなとただただ好印象だった。

それから友人と私ははホリデイブランチのメニューを見ながら、二人で随分長いこと迷った。
「あれもいいね、こっちも捨てがたいよね」と悩むのもまた楽しで、まるで学生のような気分。(思うのは自由さ)
結果、二人でまったく同じメニューをセットでオーダーした。
違ったのはドリンクだけ。

「ケーキセットで、パスタは〇〇、ケーキはシフォンケーキにバニラアイス付きで」
すこぶる平和なオーダーをして、「ドリンクは……」

友「コーヒー、ええっと、アイスコーヒーにできますか?」
ウ「もちろんできます!」
友「じゃあ私はアイスコーヒーで」
私「もちろんできますってなんていいフレーズだろう。あ、私はホットコーヒーで」

思わず無意識的に口からこぼれてしまった。
そもそもアイスコーヒーに出来るか確認する友人が、久々のオーダー感があって奥ゆかしすぎるのだが、ウェイターさんが
「はい」とか「できます」とか「大丈夫です」みたいな素っ気ない返事じゃなくて
「もちろんできます」と答えた感じがやさしくてさわやかだったのだ。

無意識的に出てしまった私の言葉を聞いて、友人は「変わらないね、〇〇ちゃんって感じ」と笑った。
おばちゃんみがさらに増幅しているとは言わずにいてくれたようだ。

すでに売り切れているケーキを最初に断りを入れてくれたことも含めて、
とにもかくにも感じのいいウェイターさん。
そもそもお店の教育がしっかりしているのかもしれないし、
以前、お客さんにブチブチ嫌味を言われた経験があるのかもしれない。
そんな背景を勝手に想像しては、それにしても感じがいいと目を細めた。

それから先は食事と近況報告とケーキを楽しみながら、時間を過ごした。
コーヒーは残念ながら煮詰まっていた感があったけれど、
それにイラッとしなかったのは、お店の物理的な明るさと開放感と、
あのウェイターさんの感じの良さが大きく影響していた。

楽しい時間はあっという間に過ぎ、会計を終えると友人は洗面所へ。
私はお店の脇のエレベーターホールで友人を待った。

少しすると、さきほどの感じのいいウェイターさんがエレベーターホールへやってきて、「お客様」と私に声をかけた。
頭に?を浮かべる私にウェイターさんが差し出したのは、開封済のポケットティッシュ。

それは、ジェノベーゼのパスタを跳ねないように慎重に食べていたのにもかかわらず、
ソースが跳ねて緑の小さい染みをつけた私に、友人がサクッと出してくれたポケットティッシュ……の残りだった。
これを忘れ物扱いしてくれるわけ?
とまどいつつ、わざわざ届けてくれたウェイターさんにお礼を言って、
そのポケットティシュは友人の手に。
ちなみに、それ、ティッシュケースに入っていたとかいうわけではない。

さわやか、丁寧、気が利く、親切。
こんな4拍子揃った対応にひたすらいい気分になりながら、
数年ぶりの友人との再会の時間は過ぎた。